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マイナーな話題を扱うことが多いかもしれません。

上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その17)

2009-12-27 18:18:32 | 八ッ場ダム騒動
いつまで続くんだと自分自身に問い詰めたくなる、上毛新聞で 2009年9月23日から22回に渡って掲載された『八ッ場の57年』という連載記事への突っ込み、という謎更新。
今回は、建設予定地の住民達に支払う用地買収価格などの補償基準決定後の事業計画変更にまつわる騒動(2003年11月~2004年9月28日)。
・事業費倍増の計画変更:国交省「縮減に努力」(2009年10月10日 raijin.com)

つーことで、2009年10月10日分上毛新聞『八ッ場の57年 苦悩の軌跡 17』を前文引用してみた。
ただし、一部表記を変更+強調を入れておく。

---- 以下引用 ----

事業費倍増の計画変更
国交省「縮減に努力」

2009年10月10日 上毛新聞


八ッ場ダム建設で、長野原町の水没5地区と国土交通省が用地買収価格などの補償基準に調印し、同省と吾妻町(現東吾妻町)3地区の補償交渉も大詰めを迎える中、2003年11月、総事業費を当初の2110億円から2.18倍の4600億円に引き上げることなどを盛り込んだ基本計画の変更案が浮上した。
同省は関東地上整備局事業評価監視委員会の了承を得て、関係都県の知事に意見を求めた。

これに対し、当時の小寺弘之知事(69)は「様々な事情、要因があるにしても大幅な増加に驚いている」とコメント。
件は負担金が78億円ほど増えるため「県民の理解を得るのは難しい状況」として、事業費圧縮や一部地方負担金の国負担化など4項目の要請書を国に提出した。

変更案の事業費増加分のうち、45%は水没関係者の補償や生活再建対策の変更が占めた。
このほか物価変動と消費税導入が30%、地質などによる設計や施工の変更が19%-など。
国交省は基本計画の現地調査を行った結果、補償対象が増加したり、補償交渉で代替地造成場所を変更したことで護岸工事などが増えたと説明した。

また、今回の変更で始めて、吾妻警告の景観維持に向けて流水の正常な機能の維持が建設目的に追加された。
国道145号線が吾妻川を渡るルートに変わり、散在していた代替地も5地区12箇所にまとめられた。

この問題を取り上げた上毛新聞の記事によると、地元住民の反応は、代替地の工事を早く進め、生活再建の実行を求める声が多かった。
当時、代替地分譲基準連合交渉委員会事務局長だった高山 欣也町長(66)は「負担が増えることなので、各都県が認めてくれるか心配」と不安を口にしている。

水資源機構の戸倉ダム(片品村)の場合、人口の伸び悩みで水需要が予想を下回ったとして、利水者の下流都県が次々と撤退。
中止に追い込まれた。
しかし、八ッ場ダムに関して下流の関係5都県は、将来の水確保や治水のために必要と判断、変更案を容認した。

2004年5月11日、県の要請に国交省が回答した。
コスト削減について「少なくとも4600億円を下回る努力をする」とし、関係と県による事業管理の検証機関やダム技術の専門家委員会の設置、新しい入札契約方式の積極的な導入などを具体的に示した。

県は2日後の13日、吾妻川の流水を確保するためにダムから水を流す意地流量の活用方策について3点を再要請。
数日中に届いた同省の回答が「前向きだった」とし、県議会5月定例会に基本計画の変更に同意する議案を提出した。

同議案が県議会で可決されると、小寺知事は6月18日、「地元の生活再建対策に万全を期す」など四つの意見を付記し、基本計画の変更に同意する意見を国交省に提出。
9月28日、2回目の変更となる基本計画が告示された。
事業費の大幅な増加が決定したが、これに伴いダム建設に反対する市民団体の活動も活発化していった。


基本計画

国が特定多目的だ無法の多目的ダムを建設するには、基本計画の作成が義務付けられており、同計画の作成、変更、廃止には関係都道府県知事らの意見聴取が必要となる。
八ッ場ダムに関しては、2001年9月、04年9月、08年9月の計3回、基本計画の変更が告示されている。
---- 引用以上 ----

建設中止となった戸倉ダムの近況については以下を参照(手抜き)
・6年前に消えた「戸倉ダム」の現地報告 (2009年11月1日 保坂 展人のどこどこ日記)

2004年5月に「県議会5月定例会に~」とあるのは、群馬県知事こと小寺 弘之氏(当時)が群馬県議会に提出した『八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更について(議案番号104)』という議案のこと。
・平成16年5月定例会 知事提出議案(pref.gunma.jp)

その議案が群馬県議会に提出されたのは、2004年5月27日の定例会でのこと。
・群馬県議会 会議録検索システム(pref.gunma.jp)

↑から、件の議案について小寺氏の発言を引用する。

---- 以下引用 ----
(中略)
第104号議案は、八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更についてであります。
八ッ場ダム建設は、首都圏における治水・利水の必要性から国家的な政策として国が進めている事業であり、水源県群馬としては、地元住民を初め大きな犠牲がある中で、首都圏のため、日本のためにいろいろな協力をしながら進めてきたところであります。
この度、事業費の増額など基本計画の変更について意見を求められたものでありますが、群馬県としては、事業費の内容について国に詳細な説明を求めるとともに、事業費のさらなる圧縮や地方負担の軽減、適切な情報提供等を国に要請してまいりました。
そして、この度、国からの回答と協力要請があり、また、下流都県がすべて同意する等の状況を踏まえ、慎重に判断した結果、地元の生活再建対策に万全を期すること、さらなるコスト縮減を図ること、自然環境保全等環境保全対策に万全を期すことなどの意見を付して同意することとしたいと考えております。
(以下略)
---- 引用以上 ----

・・・八ッ場ダム建設は本当に日本のためになるんだろうか?
ま、無知蒙昧な俺には想像もつかないところで役に立つのかもしれんが(謎笑)。

これに対し、2004年6月2日の定例会では、伊藤 祐司氏からこの議案に対する質問が飛んできた。
以下、2004年6月2日分定例会議事録から、伊藤氏の件の議案に関する発言を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
次に、八ッ場ダム建設について2点伺います。
 今議会の議案に八ッ場ダムの建設に関する基本計画の変更が提出されました。
知事は提案理由の説明で、事業費のさらなる圧縮などを国に要請し、国から回答があったので、4つの意見を付けて同意したいと述べました。
 ところが、5月17日に衆議院議員会館で持たれた議員や市民団体との意見交換会で、国土交通省は、総事業費について、「できるだけコスト縮減に努めるということであって、目標を示したものではない」と回答しています。
国民の税金を使う事業です。できるだけコストを縮減することなど当たり前のことです。
それを「本来、五千数百億円かかるところを4600億円で済ませた」と威張ってみせ、「コスト縮減には努めるが、目標は示さない」と言い切る国交省。
群馬県はこんな尊大な説明に納得して莫大な負担増を了承したのでしょうか。
あまりにも人が良過ぎるのではありませんか。
 議案には、「地元の生活再建対策に万全を期すこと」との意見が付されていますが、現地が地滑りの多発地帯であり、ダム湖の誕生によって生活再建地帯で重大な地滑りが起こる可能性が懸念されていながら、国交省は限定した箇所にしか対策を行っていないことは、私が前議会の予算委員会で指摘したとおりです。
現地ずり上がり方式の生活再建に責任の一端を担うとするならば、意見を述べるだけでなく、県が主体性を持って、まずは安全性の確認や検討をするべきです。
しかし、県がこの間行ってきたのは、主に事業費縮減という方向からの検討です
。国の地滑り対策へのサボタージュもコスト縮減というファクターが影響しているという指摘さえある中で、やるべき順番が逆であります。

(中略:大滝ダムの話がメイン)

そこで、1点目の質問です。
知事は、2月議会の予算委員会答弁で、国交省の地滑り対策等について、「県は地元としてそういった調査の方法について適切であるかどうか、その結果がどうであるのかチェックし、住民の安全、地域の安全を守っていく」と述べました。
今回の事業費変更の承認に当たっては、地滑り対策についてどのような検討やチェックがされたのか、明らかにしていただきたいと思います。
 2点目は、この間我が党が一貫して主張してきたことでありますが、八ッ場ダムは、利水という点でも、治水という点でも、もはや必要がなくなっているという問題です。
知事はこの問題については、本県というより首都圏にとって大きな役割を果たすダムだとのスタンスでありますが、だとするなら、この際、改めて群馬県にとって八ッ場ダムが必要なのかどうなのか検討するべきではないでしょうか。
知事は、24日の記者会見で、「今回の事業費見直しに当たっては、原点に立ち返って群馬県として真剣に考えた」と述べていますが、群馬県にとって必要ないのなら、県としては計画から撤退することは可能だと考えますが、いかがでしょうか。
(以下略)
---- 引用以上 ----

これに対して、小寺氏はなんとも不思議な返答をしていた。
以下、2004年6月2日分定例会議事録から、伊藤氏の質問に対する小寺氏の返答を(略

---- 以下引用 ----
(中略)
八ッ場のことについてお答えいたします。
 地滑りというのは非常に重要なことでありまして、ダムをつくることによってそれがどうなるかというのは重要な問題であります。
ただ、これはちょっと技術的な問題なので担当理事から後ほど補足して答弁をしてもらいますけれども、地滑り対策あるいはその調査というものは、やはりこの事業は事業主体は国なのでありまして、事業主体が県であるというのとはやっぱり違うわけで、まずそういう説明責任とか対策というのは、これは国家がやらなければいけないという、まずそこを踏まえてから、そして、県としてはそれが適切に行われているかどうかというのをチェックする立場にあるということであります。
(以下略)
---- 引用以上 ----

群馬県としては八ッ場ダムが必要かどうかを検討する気はない、という返答かいな(失笑)。
これじゃ、八ッ場ダムについて中央政府の方針に振り回されるのもむべなるかな。
八ッ場ダム建設計画から 50年も経ってこの態度とは・・・。
一体何なんだ。



おまけ:
第1回目~第16回目については以下を参照(手抜き)。
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その16)(2009年12月26日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その15)(2009年12月24日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その14)(2009年12月19日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その13)(2009年12月17日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その12)(2009年12月12日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その11)(2009年12月7日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その10)(2009年11月29日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その9)(2009年11月27日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その8)(2009年11月25日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その7)(2009年11月20日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その6)(2009年11月18日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その5)(2009年11月15日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その4)(2009年11月11日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その3)(2009年11月10日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その2)(2009年11月7日 flagburner's blog(仮))
・上毛新聞の八ッ場ダムに関する連載記事に思ったこと(その1)(2009年11月5日 flagburner's blog(仮))


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