晴れ過ぎた空の中で、私はもがいてるのだ。
空に落ちるような感覚を感じながら、それでもこの場から退くという考えは無かった、すくなくとも。月は墨を溢したように真っ黒な空で泣いている、沢山の船に溺れながら。そして私は(夜の暗闇の中、泣いている)。
あなたが忘れ去ってしまった夜空を、私は眺めている。気まぐれで眺めることはあっても、以前のようにぼんやりと眺めるのではない。そこに誰かを思い浮かべるように、そこに誰かを縫い付けるように、目を、光らせ。だからてるてる坊主を引っくり返して、私は雨を呼んだ。私が呼んだ雨雲は夜を攫って、流してしまった、けれど。彼の空を見る目は、変わらなかった。一体何を見ていて、何を、見たいの、か。
そして、知ることはないのでしょう。今もあなたの頭上、高く。届かないほどに高く、遠くに流れた宇宙は、天の川に溺れて(もがいている、と)。ねぇ、救いたかったのでしょう。
月が遠くで泣いている。そして私は(夜の暗闇の中、泣いている)。
過ちは背負わされた逆十字のように消すことのできない罪と罰で。救いたいともがく私の祈りは朝を招いて、何度、光に犯されたことでしょう(夜に咲く花に魅入られた私が、日を拝めるはずも、なく)。
葵の芽ぶいた吐息はもう白く、このまま居れば私は凍えて死んでしまうのだろう。かげろうはゆらゆらと誘うように揺れていて、襖を斬ってしまえば、灯はつめたく落ちた。もう私は戻ることなどできはしないのだ。けれど、
月が遠くで泣いている。私は乾涸びていく手を伸ばし、掬おうと何度も夜空に手を伸ばす。
月が遠くで呼んでる。光に負けても、此処に居ると。
月が遠くで呼んでいる。私を抱いてと、ちぎれながら。
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忘れ月(ワスレヅキ)
あえて、じゃんるは、いわないよ(何