せかいのうらがわ

君と巡り合えた事を人はキセキと呼ぶのだろう
それでも僕らのこの恋は「運命」と呼ばせてくれよ

けもの道

2007-04-21 16:22:23 | お題

これは呪いだ。

呪詛のようにまとわりつく言葉、口調、ちらつく壊れた笑み。これは呪いだ、私はあの男に呪いをかけられたのだ、きっと。でなければこんなに恐ろしい思いなどするはずがない。背筋を舐めるような恐怖が這いつくばる。心臓は今にも破裂しそうに不順な脈を続けているわけもないし、こんなに世界が、赤いわけがないのだ。
何かから逃げるように走る。いや、逃げるように、なんかじゃない。実際に逃げているんだ、あの男から、呪いから、恐怖から。脳裏には飛び散った赤が離れない。
その逃げ切った先に辿り着けば眠れるのだろう例え見るのが悪夢だとしてもこの纏わりつく呪いから逃げられるのならそれ以上の安堵は得られないのだ。舌を這ったあの感覚が離れない。いますぐにでも舌を切り落として吐いてしまいたい。
脳裏を這った声色に背筋が凍る。今にも発狂してしまいそうだ、「なァ、俺のモノになれよ」、これは悪い夢だ。こんな嘘はありえない、そして彼が死ぬなんてこともありえないのだ。だからこれは、全て、そう、浮かぶ満月をも、牙を立てれば、間抜けな音を立てて飛んでいくのだ、風船のように。目覚めればあの男が死んでいればいい。

冷風が葉を巻き込みながら身を切るようにして駆け抜けていく。切れているのは素足の方だ、それでも今はかまわない。むせるような気持ち悪さを感じながら、道も無い山を、けもの道を走る。迷っているのかもしれない、それでももうかまわない。
昔攘夷戦争があったここは何十、いや、何億の死体がまだ埋まっているのだろう、そう考えていると何かに躓いた。ふとみれば白い何か、甲高い悲鳴を上げて縋るように上へと逃げる。背をなめずりまわすように恐怖が駆け抜けていく。息が苦しくて、窒息してしまいそうだ。
体がついて来ずに息が浅くなって言っても、逃げろ、本能がそう告げてくる。見えない空ではきっと星が私のような思いをしながら黒い吹き溜まりの中でもがいているのだ。足が何度も縺れる。記憶も絡まっていく。

目の前に赤い吹き溜まりが広がる。溺れているかのような彼。そうしたのはあの男だ、そうしてあの男は。

剣先が掠った頬が痛んだ。泣いているのではなかった。雨だ。足が滑って泥の中に顔を突っ込んでしまった。痛い。心もさることながら、頬の傷は、意外にも痛い。焼け付くような胸の痛み。狂ってしまいそうだ。顔の横で花が咲いている。それに手を伸ばして、握りつぶす。これが毒花だったとしてもかまわない、攘夷達の墓で彼のように尽きれるなら本望だ。そうでなければ誰か、私の心臓を射抜いて欲しい、刃で。

あんな嘘を吐いたあの男なんて死んでしまえばいい。(これは呪いだ)(なァ、)
気持ちの良さそうな月など牙で壊されてしまえばいい。(これは呪いだ)(俺を、)
彼を奪ったあの男なんて、(これは、呪いでなければならない)


(愛せよ。)


―――
(Love.)
愛せるまでは壊れろと私に囁く、あの声で。


あの男っていうのは間違い無く高杉(作者が間違うか普通
COCCOの「けもの道」。途中に叫びが入ってるのでv(待


彼っていうのは桂だと思います(だと思います?!