
最近X-pro2にニコンの一眼レフ用オールドレンズを付けて写真を撮っている。

現代の富士フイルムのXFレンズと比べると、色の出方や線の表現が全く異なり、大変面白い。
オールドレンズの面白さはただのロマンに留まらず、そのレンズならではの写真が撮れる実用性に有ると思う。
ニコンのオールドレンズは堪能したので、ライカのオールドレンズもX-pro2で使ってみたくなる。フィルムのライカM3で使っていたズミクロン50mm f2やスーパーアンギュロン21mm f3.4は、ニコンのオールドレンズと全く違う写りをしていた。
ズミクロンは絞ると現代レンズのようなキレの有る解像感。しかし絞り解放付近では、とても柔らかい描写だった。どちらも突出して現代レンズには無い表現が出来る。
スーパーアンギュロンは歪みの無い超広角。とにかく真っ直ぐ写る。同じように写せるレンズは、現代ミラーレス、一眼レフ用レンズには恐らく存在しない。周辺光量落ちや、解像感の低さも味となる魔法のようなレンズ。
スーパーアンギュロンはデジタルライカM10以外では通常利用が出来ない。
X-pro2に付けて標準50mm画角を得るには、35mmが必要になる。F2.8のズマロン、F2のズミクロン、F1.4のズミルックスと選択肢がある中で、やはりF1.4が良いなと思う。ズミルックス一択だ。しかしながら高い。。整備済みの美品、またはフード・フィルター付き並品だと32〜35万くらい。フード無し並品で25〜29万くらいである。
長らくどうしようか悩んだけども、一つの答えが出そうである。そう、コシナのフォクトレンダー、ノクトン35mm f1.4である。
このくだりを読んで、はぁ、、そう行くかと。肩を落とした方、よく分かる。僕もフォクトレンダーは全く視界に入ってなかった。
ノクトンはズミルックスやズミクロンを模した6〜7万円で手に入る日本製レンズ。日本製レンズなのに、全く眼中に無かったのを鑑みると、いかに50年近く前のドイツ製レンズ、もといライカの名の付いたカナダ製レンズのロマンの大きさを感じる。
さっきの実用性の話に戻って、改めてノクトン35mmf1.4の作例をネットで見ると、悪くない。むしろ良いじゃないかと思う次第である。
玄人さんの批評を読むと、レンズ設計は8枚玉のズミクロン35mmf2に近いそうだ。写りはオールドレンズらしい感じ。ズミルックスの使いにくい点を現代の解釈で整えた感じとある。
悪くない。
コシナという会社はどうか。
ネットで見ると、質実剛健の一言に尽きる。浮ついた感じは皆無の昔ながらのモノ作り企業だ。
1959年創業。写真用レンズの加工、組み立ての下請けからスタートして、技術と実績を積み上げ、OEM製造が出来るまでに進展する。
1999年に自社ブランドフォクトレンダーの立ち上げ。2004年からはドイツのカールツァイスと提携、ツァイス名義の一眼レフ、レンジファインダー用レンズの製造・販売。
恥ずかしい話、なぜフォクトレンダーが眼中に入らなかったのか。僕は値段にあるのではないかと感じる。7.5万円、決して安くは無いが、趣味性の高い写真用レンズとして、比較対象が主にライカのレンズとして、かなり安い。
現代ライカの35mmf1.4 ズミルックスは50万はくだらない。オールドレンズの中古価格は上に書いた通り。25万以下ではほぼ買えない。
かつてライカを追いかけた現代のニコンやキヤノンを筆頭に、日本のカメラ・レンズメーカーは、レンジファインダーのレンズは作っていない。
だから国内に比較対象がいない、いきなり本家ライカとなる。
変な見方かもしれないが、マスターマインドという洋服のブランドが有る。
いわゆる97年生まれの裏原系のストリートブランドである。彼らが洋服の本場、ヨーロッパで展示会をやった。日本製ながら作り込んだ数千円とかのTシャツ、キャップ。しかしラグジュアリーブランドも買い付けるバイヤーの目には止まらなかった。バイヤーの1人が言った。あなた達のブランドは日本製と言いながら、なぜそんな安っぽい商品、安い上代なのか?それの何がいいんだ?
デザイナーははっとして、日本に帰り、ブランドの大転換を図った。最高級の素材、技術を使いラグジュアリーブランド並みの上代を付けた。良い商品だとバイヤーに示す為、惜しみなく原価に資金を注ぎこんだ。Tシャツで数万円。アウターで数十万円。そしてヨーロッパのバイヤーに認められるブランドとなった。
書いてて、全然良い対比になってなくて笑った。
ただ一つ参考になるかなと思うのは、商品と値段のバランスである。良い商品やデザインなら、値段は高くて当たり前。という点。
じゃあノクトンが20万円なら、ズミルックスと甲乙付け難くて眠れなくなるのかと言われたら、、結局、ノクトンやズミルックスは高くて買えないって思う自分が矛盾しているという結果に、、笑
でも、50年代からカメラの進化に寄り添う用にメーカーとして携わってきたコシナが、日本製のレンジファインダー用レンズを作っているのって、それ自体がロマンとも思えてくる。
誰も競争相手がいない中で、あえてレンジファインダーというカメラを手に取りやすい価格で日本製レンズを展開している意味をもうちょっと深読みすると、、悪くないなと思う次第である。