前々回の九州漢祭り2010 終了後
九州を離脱し、関東への帰路の飛行機内にて
イシダは語る.
おぉ・・・過去二千年、男も女も子供もバーチャロンに感謝し死んできた.
オラトリオ・タングラムは、アーケード部門で世界に冠たるものだ.
無数の英雄を輩出してこなかったか?
セガの斧の下に裸の首をさらしてこなかったか?
まるでピクニックにでも出かけるように、歌いながら西スポに降りていかなかったか?
どうだ、お前達?
周囲の席のチャロナー達は声を揃えて一斉に答える.
「「その通りです、イシダさん.」」
イシダ、なんだ・・?
「「その通りです、イシダ様!」」
「ムフぉその通りですイシダ様!」
「ギャッ!イシダ様!」
チャロナーは何をやってきた、お前達?
「「セガの斧の下に裸の首をさらしてきました、イシダ様.」」
そして?
「「歌いながら西スポへ降りていきました、イシダ様.」」
まるで?
「「ピクニックにでも出かけるようにです、イシダ様.」」
おぉ・・・
なるほどこの中にも将来の英雄英霊がいるかもしれんな、とイシダは続ける.
・・・もちろん、そんな事は多いに疑わしい、このイシダをおいて他には.
お前達は、俺が不幸にして知り合うはめになった無知蒙昧な者の中でも、
最も怠惰、愚鈍、貧弱なチャロナーたちだ。
だが、この世は色々な人間の存在から成り立っている.
お前達がこの地上に蔓延るのを神がお許しになっているのも何か目的があっての事だろう.
神は九州に脳筋400%のエスポワール、厨房のドアを開く者エルム、
厨の中の厨ビタ厨、フンコロガシ小湊、
そして吉祥寺から山のような罪を背負ってきた二号店をお遣わしになった.
これには神の目的があるはずだ.
そして、これを忘れるな、お前達.
イシダがわざわざ一芝居うち、覆面までして1回戦負けしたのは
お前達がツインスティックの手垢に汚れた手を差し出して駆けずりまわるためにではない.
俺は、お前達を救うためだけに負けたのだ.
貴様等はTSを握れるだけで十分と思わねばならん.
聞いているのか、お前達?
「「聞いています、イシダさん.」」
イシダ、なァんだ?
「「聞いています、イシダ様!」」
「ムフぉイシダ様!」
「ギャッ!イシダ様!」
何だけで十分なんだ?
「「レバーを握れるだけで、です、イシダ様.」」
・・よろしい.
イシダは微笑みを浮かべて座席に深くもたれる.
下はプーギーオムツ一丁という、ただならぬ仕上がりであった.
おぉ・・・だがもう情けをかけるのはやめだ.
お前達を見ていると俺の優しさが間違っていたのかもしれない、と思えてきたのだ.
俺は次からエスポ杯、そして九州大会も全て徹底して勝利する.
イシダは何をするのかな、お前達?
「「徹底して勝利です、イシダ様.」」
そうだ勝利する.
スペースドックの宇宙船の上品、優雅、美について
何かを知りたいと思う俺には、ただ上昇する以外の道はない.
マーズを愛するという事は、この世界で孤独であるという事だ.
イシダにはどんな道しかないのかな、お前達?
「「上昇する道です、イシダ様.」」
そう上昇する.
俺は2段ジャンプし続けると言っても過言ではない.
いいか、お前達.
特にエルムと2号店.
貴様等の優勝、準優勝、まずはめでたいことだと言っておこう.
だが次の大会からはイシダが全てだ.イシダ尽くしだ.
イシダ無しの社長のシュタインは、やせ細ったヨチヨチ歩きのVOXリーにすぎない.
イシダ無しでは、誰も横断歩道を歩けない.
イシダ無しでは、バイクに車輪が無い.
イシダ無しでは、いかにオオイシとジェスターでもフュージョンできない.
イシダ無しでは、バーチャロンそのものが無い.
2号店が後ろの席でボソリと囁く.
「(じゃあSTに負けなくてもなァ…あれだけ仕込んどいて)」
!!おぃ!今ッ誰か何か言ったか!?
イシダが大声を出す.
何人かの乗客やスチュワーデスが訝しげに視線を向ける.
「2号です!!イシダ様.」
「ムフぉ2号さんです!!」
「ギャッ!2号さんギャッ!」
あぁ・・!そやつは片翼で飛んでいるぞ.
2号店!
「はい!」
はい、なんだ?
「はい、イシダ様.」
今何を言った、2号店.
「イシダ様がSTに負けてまで俺達に徳を与えて勝たせてくれたことを、
跪いてワタリ様に感謝しなくちゃ って言ってました!」
・・・そうだろうとも、2号店.
罪深い吉祥寺からやってきた、やる夫にしては悪くない.
お前の鼻から嘘がミミズのように湧き出ているのが見えるぞ.
イシダには何が見えるのかな、お前達?
「「嘘です、イシダ様.」」
「ムフぉ嘘です」
「ギャッ!嘘です!」
それがどうしているのかな、お前達?
「「湧き出ています、イシダ様.」」
どこからだ、お前達?
「「2号の鼻からです、イシダ様.」」
まるで?
「「ミミズのようにです、イシダ様.」」
・・いいか、俺がテムジンだ.
イシダはゆっくりと穿いているものをヒザまで下ろし始める.
微笑みを浮かべて周囲を見回す.
チャロナー達は凍りついている.
お前達はどう思う・・?
これは、今ここで出すべきかな?
「いいえ、イシダ様、」とチャロナー達は言う.
「そこはトイレではありません.」
顔面蒼白になった2号店が大きな声で言う.
「そんなものを出されたら、家に帰れません!」
エスポワールが続く.
「長男も産まれこれからという時に今尚テロに身を投じる必要があろうか?いや無い」
おぉ・・・エスポワール、お前はバーチャロンを知っている.
だが今この瞬間しかできない事もある.
AN●で俺のAN●Lが大爆発するぞ.
「(ムフぉ全然うまくねぇよ…!)」
!!おぃッ!!今ッ誰か何か言ったか!?
イシダがのび上がり、見渡しながら大声を出す.
「2号です!!イシダ様.」
「ムフぉ2号さんです!!」
「ギャッ!2号さんギャッ!」
「2号てめえ状況理解ってんのか!?」
「いや今の俺じゃねぇって!ふざけんなよ!」
おぉ・・確かに今のは2号店ではない.
では誰だ.
チャロナー達全員が緊張したまま、
自分ではない、お前だろう、といわんばかりにきょろきょろと辺りを見回す.
イシダは深く息を吸い、吐き出しながら呟く.
お前だ・・・エルム.
「えっいやムフぉ…」
つずく