たびにでるたび

***旅に出るたび **胸につもる何かを *ほんの少し、眠る前に

誰かが私に何かをもたらす

2020-12-05 00:50:00 | Weblog

それはごく時々起こることだ。

ある人が突然、それまでの会話の流れを忘れたように、私にある書籍について話し始めた。

私はその人が何の話を始めたのか、なぜその話題を選んだのか考えることに必死で、肝心の内容が頭に入ってこないし、どんな風にその話が始まったのかもわからない。

ただ、アートやカルチャーに関するところがあり、その本を私が読んだらいい、好きかもしれない、とその人は言った。

私は何一つとして頭に入らなかったけれど、どうにか本の正式なタイトルを聞き出した。

そこで別の誰かが別の何かを話し出して、本の話は始まったときと同じくらい唐突に終わった。

相手は私をさほどよく知らないし、私も同じで、お互いの名前と関係性と、挨拶程度に話した休日の過ごし方を知っている程度。

それでも私とその人には、何かしらの共通点があることはわかる。

次の髪型を決めるときにどんな基準で判断するかといったことや、自分の好きな音楽について考えるときにどんな気持ちになるかといったこと。

ささやかで人の目には見えない、その上、人と共有することのあまりない部分において、私とその人には共通点がある。

実際の髪型やら好きな音楽やら表立った部分は同じではないから、人の目には共通しては見えないだろう。

その人はきっと、私が感じたように、2人の間に横たわる何かを感じたのだと思う。

私はその本を読むだろう。



あなたのおかげ

2020-08-19 00:13:00 | Weblog
あなたとの暮らしが幸せだったから

あの日々があったから

私はまた誰かと

生活を共にしようと思うことができて

今こうして大事な人の隣に居られる

この暮らしを選ぶことができたのは

あなたのおかげ

あなたと過ごした時間のおかげ

あの頃

私と一緒に生きてくれてありがとうね

人生が離ればなれになっても

それは変わらずに本当のこと





他人事

2020-07-18 09:38:00 | Weblog

自分以外の人のことでイライラするのは

自分に集中できていない証だ

自分の人生にはまだやるべきことが

ごまんとあるというのに

うまい取り掛かり方がわからないのを口実に

自分から目を逸らして

他人に心を使っている振りをする

よそ見をするなよ

あんたのことだよ





ひとりとふたり

2020-07-05 21:54:00 | Weblog
ほんの数日、ひとりになる時間ができた

というよりは

ひとりになる時間を作るようにした。

家族がいるとなかなか

完全にひとりという1日は

そう簡単には訪れない。

好きなものを好きな時間に食べ、

好きなことだけをして

好きな時間に寝て

好きな時間に起きる。

ネックは話し相手がいないことだけ

と思っていたのだけれど

時間が過ぎるのを忘れてしまったり

際限なく目を酷使して頭痛がしたり

食べることを忘れてしまったりと

ひとりではまるで

生活がきちんとできないことを

再認識することになった。

もちろん、

戸締りも火の元の確認もゴミ出しも

社会的に必要なことはやっていて

でも問題はそこじゃない。

ぼんやりしているとつい

深夜まで、体調が悪くなるまで

本を読み続けたり

眠らなかったり

食べなかったり

ヒトとして必要なことを忘れがちだ。

誰かが自分の生活の中にいると

そういうことを

忘れられずにいられるのがいい。

ねぇ、と呼びかけられる話し相手も

眠る時や寒い時に抱きしめ合える相手も

やっぱりいるといい。






手を引いてくれる

2020-03-09 01:57:00 | Weblog

ヒトに頼み事をするのが苦手な私に

あなたはいつも

私が頼みやすいようにしてくれる

頼んでいることすら

忘れてしまうくらいに

あなたが受け止めてくれる

頼んでいいんだよ、

とはあなたは言わない

言う前に

言うより早く

私が頼むべきことを

私より先に見つけて

手のひらにのせて

私に見せてくれる

ここにあるよ、

と あなたが教えてくれて

手を引いてくれる



スイッチを入れる

2019-12-30 20:38:29 | Weblog

 

限られた人生の時間の中で

あと何がどれだけできるか

いつも考えている

やりたいことは

決まっているのに

時間がない気がしてばかりでうんざりする

スイッチを入れるのは自分なのに

気持ちばかりが急いて

脚が前に進んでいないのが

もどかしくて

胃がキリキリとする

脚を動かせば

前に進めることは知っているのに

 

 


会いたい、欲しい

2019-11-17 01:27:27 | Weblog
会いたい人や

欲しいもの

と言われても

咄嗟に思いつかないし

考えてみても出てこない

誰にも会いたくないとか

何も欲しくないとか

そういうことではないのだけれど

私は私で

私の中に全てを持っていて

それ以外はいらないし

だからといって何も

受け入れる気がないわけでもない

本当にひとつだけ

何かを

人生が決まる何かを

得るのだとしたら

心は変わらないから

あとは本当に欲しい気持ちが

熟すのを待つだけ

という気がしている




記録

2019-08-17 09:14:20 | Weblog

それはただの記録で

感傷的な日記でも手紙でもないのだけれど

淡々と記された事実が

あの頃を

あの日々を

あの人を

あの人の思いを

あの人といた自分を

過去のものとして

私に突きつける


恋い慕う気持ちは既になく

戻りたいという感情もなく

再び同じように思い合いたいのでもなく

ただ

あったものが無くなるという事実が

悲しく臆病を呼び起こして

冷たい涙がこぼれる

ただの紙切れに載る

記録を前にして




記憶にある限り

2019-04-13 01:12:42 | Weblog

少しでも嫌なことがあると

あの人と過ごした日々を思い出す

少なくとも

嫌なことなんて少しもなかった 記憶にある限り

忘れてしまうんだろうか 忘れたいことは

ただ私が良くない状態だった日々は

おぼろげにしか思い出せなくて

陽だまりのなめらかな毛並みの猫みたいな

穏やかで温かな暮らしの

全体の手触りだけを思い出す

喧嘩なんて一度もしなかったし

解決しない話し合いもなかった

いつも優しくて穏やかで

余裕のないことを拒み

真剣に向き合うことを尊び

私を安心させてくれた

だけど

私はそこから離れた

私たちは離れた

心は置いてこなかったから

遠く離れたまま

あの人を少しずつ忘れた

おそらく良くないことから順に

そして良いことだけ残って

今も思い出す



不思議な熱

2019-04-09 23:07:08 | Weblog

 

先に眠った彼の体に

ほんの少し触れてみると

手が触れたところが

びっくりするくらい熱くなって

ビリビリと小さく痺れる感覚がある

 

起きているときに

同じように触れてみたら

やっぱり同じように

ビリビリ痺れて熱い

 

思い返せば

それは最近に始まったことではなくて

私たちが付き合い始めてから

ほどなくして

感じていたように思う

 

不思議な熱に

なぜか私は安心する

 

彼と生きる日々が

このまま続く証のような

気がしている

 

 


植物の名前

2019-04-06 02:08:52 | Weblog

草や木の名前を知ると

それらが生える場所と自分に

繋がりが出来た気がする

花の咲く季節が

実のなる季節が

来るたびごとに

名前を頭の中や

喉の奥で発音して

それを確かめる

それが

現象学的な事象であっても

思いは事実だし

植物も事実だ




語られない言葉

2019-03-29 00:07:05 | Weblog

あの人と一緒にいた頃

夜、明かりを消して真っ暗な部屋で

ベッドに入ってから眠るまでに

いつも色々な話をした

最近こんなことを考えているとか

今日こんなことに気づいたとか

心の中の話をたくさんして

安心して眠った

会話がきちんとできていないことなんて

余程忙しいときしかなくて

そんなときはいつも決まって

あの人の方から

少しお話しようか、と

言ってくれた

その優しい言葉を聞くと

私はいつも安心で

あの人と離れた後も

いつかまた

誰かと

そんな日が来るのだと思っていた

けれど

あの人はいなくて

そんな日はもうない

眠る前に

明かりを消したベッドの上で

語られなくなった言葉は

どこへ行くんだろう








会いたくない

2019-02-09 17:25:09 | Weblog

きみがどこにいるか

偶然まったく予想外のところから聞いて

びっくりした

会いたい気持ちより

会いたくない気持ちが

不思議と大きくて

またきみのことを頭の中で

嫌になる方に考えてばかりいる

自分に思い当たる

直接言って欲しかったんだろうか

それでもきっと

根底に見え隠れする愚かさや幼さを

引っ張り出しては

きみを好きになれないことに

また思い巡らすんだろう

きみはきっと

今のわたしのことなんて知らない

知っていてもいなくても

連絡がなかったのは興味の問題だ

本当は

覚えていて欲しくて

でも構われたくはなくて

そのくせ一番大事に思われたい

それらが無いことに

苛立つから

会いたくない







洗濯機

2019-01-03 18:52:42 | Weblog

壊れて動かなくなったのが一昨日。

それなのに昨日は何もする気が起きなくて

修理業者を調べもせず

買い替えの算段を立てもせず

うたた寝ばかりしていた。

今日、急に思い立って

自分でできる故障のチェック方法を調べて

案外少しの努力で

トラブルの発生箇所がわかって

時間をかけたら直すことができた。

昨日もし

修理に出したりしていたら

こんなに早く

元どおりにはならなかった。

昨日の眠気はもしかしたら

そういうことだったのかもしれない。



何を言えばいいか

2018-11-09 14:06:36 | Weblog


あの人の誕生日がくることを

わかっていて

何を言おうか

何を言えばいいのか

考えているうちにその日が過ぎた

過ぎてなお

何を言えばいいか

考えている

遠くて

けれども心の彼方ではない

あの人に