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ある女  アニー・エルノー  堀 茂樹訳  早川書房

2005年02月22日 | ’05年読書日記
前に書きました、「場所」は、作者の父親を語ったものですが、こちらは母親についての本です。

このおかあさん、最後には老人性痴呆症になってしまい、養老院のようなところで余生を送る事になってしまいます。
若い時は、商店の女あるじとしてきびきびと働き、一人娘を立派な学校へと送り、お客さんたちの信頼を得、いろんなこと(自分の階級以外の、つまりはブルジョワの暮らしについても)を必要に応じて柔軟に学んで行った、気性の激しい、賢い女性。

そんな彼女が、自分の持ち物について、自分の仕舞ったものの場所について忘れ、孫の顔すらも忘れ、ついには何もかもを思い出せなくなります。

人間って、何なんだろう…なんて思いました。
私は自分の父親の死を、体験していますが、こんなに、本人も回りも辛い思いをして人生を閉じていくのって、あまりにもむごすぎるんじゃなかろうか。

そんなことを思いました。

「ある女」も、「場所」と同じく堀 茂樹さんの訳なのですが、とても読みやすいですよ。
あとがきももちろん読みましたが、アニー・エルノーのほかの作品「シンプルな情熱」について、ある日本の女性作家が、ぼろくそにけなしているのに対して、上品に、静かに、しかしはっきりと反論していらっしゃいます。
堀さんの、アニー・エルノー作品に対する愛情を感じます。
とても読み応えのあるあとがきです。



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