アメリカ・ポートランドのドーナツ店『CAMDEN’S BLUE☆DONUTS(カムデンズ ブルー スター ドーナツ)フレッド シーガル』が代官山のログロードにできたと何かで見たので、近くまで行ったついでに足を延ばしました。
持ち帰ったので皿は北欧デザイン(IKEA)のチープなもののうえ、クリームが溶けておいしそうではありません。でも実際は、クリスピードーナツより、個人的には好きです。というか、ほかに比べるものがミスタードーナツくらいしかなく、いまだコンビニドーナツも食べたことがありません。よほどドーナツ好きでなければ、次から次への出てくるドーナツの新ブランド、比較して語れる人はいないような気がします。
味でないところで一つ感想をいえば、ブランド名が覚えられません。そして、店にたどり着くのが困難です。ログロードという商業施設自体に。
ネーミングの覚えやすさでは、一枚も二枚もうわてで、いまだに清澄白河店にも行列が途絶えない(少なくとも土日は)『ブルーボトルコーヒー』ですが、どうも代官山にできるはずの3号店を取りやめた場所が、このログロードのようです(違ったらすみません)。店が出店を取りやめた理由は、実際のところわかりませんが、公式な理由は十分な専有面積が取れなかったこと。実際、ログロード内なら、十分な面積を取ることは難しかったと思います。
また、代官山というエリア自体が、青山あたりと比べると、たぶん難しいのではないかと思います。もちろん代官山小川軒のような変わらぬ老舗は存在しますが、結構店舗の入れ替わりは激しいです。近年の代官山では最大と思われる開発によって生まれた代官山アドレス内のスーパーマーケットですら、オープン当時に入っていた店はそれほど年月をおかず撤退し、今は大資本のピーコックストアが入居しています。TSUTAYAの実験店、代官山蔦屋書店はうちの近くにぜひ欲しいコンセプトショップですが、あれほどの敷地を使い、大胆なデザインで店舗運営をしなければ、注目を集め続けることは難しいとも思わせます。
代官山というのは、狭い街です。大企業が多くあるビジネス街ではなく、山手線と東急線の線路に分断されたなかに商業とマンションを含む住宅が密集し、狭い道が交錯する迷路のようなところです。坂も多い。それが魅力でもあり、アンテナショップとしてはともかく、収益を上げる商売としては難しくしている気がします。駅でいえば、渋谷、恵比寿、中目黒の間のトライアングルゾーンですが、住まいが代官山駅徒歩5分以内でもない限り、「最寄り駅は代官山」と言ったとしても、実際には残りの3駅のどれかを使っている人がほとんどでしょう。代官山駅が、最近ようやく副都心線と繋がったとはいえ、都心に行くにはいったん分断され、急行も止まらず不便だったからです。
世田谷や目黒のお屋敷街のように、移動の基本はクルマという人も意外と少なく、この街に愛着を持ち、昔から住んでいる人も比率としては少ない。ようするに、街に住む人のための街としても、ほかから人を吸収する街としても、中途半端感が否めません。
そんなことを考えると、1号店に清澄白河を選び、2号店は青山に出し、3号店となるはずだった代官山を取りやめたブルーボトルコーヒーは、ロケーション戦略におそろしく長けた会社かもしれません。
土曜日に清澄白河を歩いていると、必ずスマホ片手に道に迷っている、わりと大人のカップルに出くわします。あそこまで(街にとっての)新規客を引っ張れば、その人は必ず並んで店に入ろうとするでしょう。最寄り商圏も平面的に広く、古くからの住宅だけでなく、最近は大型の新築マンションも増えています。いくらカフェの街といったところで、競合店舗の絶対数は少なく、デニーズですらだいたいいつも混んでいます。
青山店は「今日はやめて、ほかの店にしよう」となるかもしれませんが、それでも利便性の高い場所ですから、次がありますし、そもそも青山、原宿あたりで評判の店は、たいていほかの店でも並んでいます。
代官山の場合は、意外とそうでもありません。目新しい店が密集しているわりに、行列のある店が少ないし、次また行くにも面倒くさい。三宿や中目黒の外れなどとは違い、隠れ家を標ぼうするには、賑わいすぎ、利便性も高すぎるのです。別に代官山が嫌いなわけではありません。雑貨店をめぐるような趣味があれば楽しいと思います。狭いエリアに個人店や大企業のチェーンストアではないスタイリッシュな店が密集しているからです。ただ、ビジネスをする供給側からみれば、なかなか難しいのでは、という話です。