goo blog サービス終了のお知らせ 

ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

モバイルチケットは日本でもスタンダードなり得るのか

2017-09-07 00:06:15 | マーケティング

夏季休暇をとり、US OPENに行ってきましたが、今年は公式サイトからオープニング5セッションセットチケットという企画券を購入しました。サイトではFedExによるデリバリーを選択したのですが、送ってくる気配はありません。その代わりにメールで送られてきたのは、モバイルチケットとかなり丁寧なその使用方法(英語がさほど理解できなくてもわかるように図解されている)。サイト検索で情報を見ると、今年から導入されたもののようです。

「これって、スマホと充電器を忘れていくとアウトだな」と思いつつ、パスポートとそのあたりの機器だけは絶対忘れないように気を付けながら出国。まあ、どちらにしても必要なものではあるのですが。

そして難なく入場できたのですが、会場前には多くのスタッフがスマホのイラストとともに「Help!」と書かれたプラカードを持って立っています。初導入のうえ、老若男女多国籍の観客が訪れるイベントゆえ、いいかげんなアメリカにしては最大限の配慮といえるかもしれません。あるいはただでさえ混乱する入場口に新たなバリアが張られることを恐れた処置だったのかもしれません。

少しさかのぼって、空港からマンハッタンにはいわゆる空港バスで行きましたが、多くの客があらかじめ予約していたのか、モバイルをかざして乗車していました。ワシントンDC.にショートトリップをしましたが、往復のアムトラックは日本からネット予約。QRコードの入ったeチケットをプリントアウトして行きました。

一方で、いまだにミュージカルの当日割引券販売所は、マンハッタンの数カ所にしっかり残っており、私もそこで一番安い席をリクエストして「ミスサイゴン」を観ました。日本円換算で6000円ほどでしたが、さほど大きくない劇場の2階の中央の席で、日本なら確実にS席です。こういうアナログなところは、四半世紀以上前に初めてアメリカに行っている私としてはホッとします。

日常のIT化が最も進んでいるのは、中進国(中国のように後から発展した国です)と言われています。例えば固定電話やFAXが普及する前に、世界的なIT化、スマホの普及がやってきたため、一足飛びにそちらが普及し生活に浸透してしまったからです。

そういう意味では、アメリカも日本同様、しばらくは両輪が必要なのかもしれません。

日本はアメリカよりも画一的に文明が発展し、高齢化も進んでいますから、完全なIT社会を確立するにはもっと時間がかかるでしょう。しかしいずれやってくるのはおそらく確実。英語力を身に付けることが今の子どもにとって重要だといわれていますが、それと同時にIT対応力も必須でしょう。

スマホがスマホの形のまま、日常のインフラとして残り続けるかどうかはわかりません。ただ近い将来、決済に金が用いられることは限られ、スーパーマーケットのレジは完全無人化され、さまざまなサービスをネットを通じて予約し、モバイルチケットで通過する社会がきても驚きません。

モバイル化はセキュリティ強化にもつながります。ネットセキュリティの問題は解決しなければなりませんが、紙のチケット(現金)なら主催者が手放したあとは、どこをどう経由し、犯罪者やテロリストの手にわたっても追跡できません。モバイルなら技術的には追跡可能です。

 


Amazon Goは大きな自動販売機として成長できる?

2016-12-07 21:58:28 | マーケティング

Amazonが元気です。元来のネット通販事業も好調ですが、次々新機軸を出し、話題性の意味でも、他のEC事業中心のIT企業の一歩先をいく感じを醸し出しています。

日本ではダッシュボタンの発売とサービスが始まり、本国アメリカではAmazon Goの実験店舗がオープンするそうです。

ダッシュボタンは注文を簡単にするという意味で、リピート品のヘビーユーザーには便利でしょうが、消費者視点で画期的かといえばそこまでではない気もします。kindleもワンプッシュで電子書籍の注文が可能ですが、熟考せずに買ってしまい、時々後悔しています。簡単に注文できれば、その分注文を取り込むことはできるでしょうが、電子書籍と違い、即時荷物が届くわけではありません。すぐ欲しい日用品なら、近くのコンビニがの優位性はまだ脅かすことはできません。

だからというわけではないでしょうが、Amazon Goは実店舗でありコンビニです。アメリカはカード社会の歴史も古く浸透していますから、そんなに消費者に抵抗がないかもしれず、ここではあくまで日本にできたら、という視点で考えてみます。

日本で小売りの現場での自動化やIT化は、思ったほどまだ浸透していないように感じます。いまだ現金社会であるということもひとつですが、これはクレジットではなくプリペイドカードの普及で、ある程度は解消されてきています。カタログ通販はECに取って代わられようとしていますし、亀の歩みであってもIT化は着実に進行しているようにみえますが、この普及を加速させているエンジンは、皮肉なことに実店舗にあります。

その代表格がセブン-イレブンやローソンなどのコンビニでしょう。たとえば、コンサートやスポーツ観戦のチケットは、今ほとんどネットで注文されています。でもそのチケットはコンビニで発券してもらえ、現金で買う場合には精算もしてもらえます。配送よりも発券時期を自分でコントロールできるので、私は結構利用していますし、現に今一番日本でチケットを売っているのは、プレイガイドでもIT企業系チケット販売でもなくローチケだそうです。プリペイドカードを広く普及させたのも、コンビニの力によるところが大きいと思います。

コンビニというのは、接客に関しては大型スーパーマーケット以上にアナログな店です。多くのスーパーが省力化しているレジの袋詰めもしてくれますし、箸やフォークのサービスもセルフではありません。

コンビニは黎明期から成長期こそ、若い人や男性がターゲットの中心でしたが、人口動態の高齢化もあいまり、大型スーパーより親切で身近だという点が受けて、今ではむしろ高齢者に人気が高いのです。

また近くのスーパーにはセルフレジがあります。でも無人ではなく、20台ほどに2人以上は人がつき、マシントラブルや空いたレジへの案内、使い方の相談など顧客対応をしています。

そう考えると、Amazon Goはコンビニの代替にはならないし、大型スーパーはさらに厳しい。日本でもICチップによるレジ通過実験はずいぶん前から行われていますが、実用化に至らない理由は技術的なことだけではないのかもしれません。

だからといって、Amazon Goが日本に進出の余地がないかといえば、大規模な駅のキオスクや自動販売機に代わるものとしてはあり得るのではないでしょうか。私自身、あまり自動販売機は利用しませんが、新幹線など長時間乗車する駅では別です。売店はお土産やお弁当を買う人で混雑しているので、飲み物だけ買うには自販機の方が便利だからです。最近は交通カードで精算でき小銭も不要です。飲料に限らず、電車に乗り遅れないように早く買いたいと考えるのが多いのが駅ですが、人件費の問題かキオスクを設置できる駅やその軒数も限られてきています。

まったくの無人店舗にするには課題はありますが、駅や空港なら親切な接客や豊富な品そろえより、利便性とスピードを重視する出張客には重宝される気がします。Amazonなら現時点でも、そうしたターゲットにささる品ぞろえは豊富ですから、マーチャンダイジングでもキオスクや駅内コンビニとは違うポジショニングを築けるでしょう。


スーパーフライデーと行列

2016-12-02 19:30:43 | マーケティング

今日出かけた帰りに近所のミスタードーナツの前を通ったら、その場所では見たことがない行列ができていました。平日の夕方なので、ほとんどが女性と子ども。最初は何事かと思いましたが、これがテレビCMでやっているソフトバンクの「スーパーフライデー」なのかと気づきました。吉野家もやっていたと思いますが、そのときは普段からの吉野家ユーザーの方々は迷惑だったのではないかと、ちょっと思いました。ドーナツはまあどうしても食べたければいまどき、セブン-イレブンでもローソンでも売っていますからね。でも吉野家の近くにすき家があるとは限りません。

ミスタードーナツにしても、ミスド好きの人が急に「食べたい」という欲求をおさえきれず、長い距離(徒歩3分にあるとは限りません)を経てたどり着いたら、この行列っていうのはどうなのでしょうか。ミスド側に自社の本業を大切にする気持ちがあれば、せめて行列は「買う人」と「もらう人」に分けるべきでしょう。他社の顧客のために、自社の顧客を置き去りにするのは、マーケティングではないと思います。

アルバイトのスタッフも気の毒です。会社はソフトバンクと金銭のやりとりはあるにしても、無料でドーナツを配るために、1日中行列客をさばかなければいけないし、中には行列にクレームを言う客や近所の店もあるかもしれません。

並んでいる人も、自分の意思で並んでいるならまだいいですが、お母さんに付き合わされている子どもはちょっと気の毒です。別の日に普通に買ってもらいたいと思います。1時間も待って、普段なら待たずに食べられるドーナツ1つを食べるより、勉強やスポーツや遊びをしていた方がいいでしょう。まあ、確かに行列か勉強かを選べと言えば、行列を選ぶ子も多いかもしれませんが、親だって本当は勉強を選んでほしいはず。教育上もあまりいいようには思えません。

マーケティングや販促の手法はいろいろでいいし、時に奇をてらったことをやらなければ、いまどき注目されません。でも企業は、マーケティングでもCSR活動同様に、最低限ステークホルダーに配慮しなければ、一時的な収益にはなっても、長期的に利益を上げる仕組みにはならないと思います。特にミスタードーナツは、ソフトバンクに協力し、自社CMで投下する広告量の何倍も宣伝され、認知促進という意味でのPRの費用対効果は莫大だったかもしれません。けれども本業の顧客、自社の従業員(アルバイトスタッフ)という最も大切なステークホルダーを慮らず、小売りサービス業の本分を逸脱しているように思います。

伝統的な小売業は、バーゲンハンターを上客とはみなさず、年間を通じて購入頻度や額の多い客を大切にします。それでもバーゲンハンターはお金を払っていますから、間違いなくお客様です。他社のキャンペーンに乗っかって、無料のドーナツをもらいに来る人は、その小売業にとってお客様ではないですから、本物のお客様と平等に扱ってはいけないのです。


見せるための食マーケティング

2016-08-29 19:17:04 | マーケティング

スキレットと聞いて何だかわかりますか。しばらく前から流行っていて、ニトリやイオンのような量販店でも、1000円以下、数百円のものが山のように売っています。

簡単にいえば、厚め、小さめ(1人用)のフライパンで、それ以下でもそれ以上でもないものです。

でも売れている、今さら売れている理由は、こういうことだと言われています。

そのまま食卓に載せて、そのまま食べられるって書いてしまうと、鍋のまま皿にも移し替えず、インスタントラーメンを食べるといったひと昔もふた昔も前の下宿大学生を思い浮かべてしまいますが、そうではなくて、ビジュアル的におしゃれだということだそうです。

インスタグラムやフェイスブックに載せるために、まず撮影することを前提とした調理器具であり、食器なのです。

もう一つ、最近はフライパン中心の調理方法になっているということもあります。でもそれだけなら、スキレットといかにも新しいもののようにつくられた流行に、ここまで火がつき、定着することもなかったと思います。

食、調理の目的は、おいしく食べること、食べてもらうこと一辺倒だったのは、今は昔。今はそれに加えて、「見せて魅せる」食という概念がヒットの源泉にあるような気がします。

レシピサイトで人気のあるレシピもキャラ弁などは最たるものですが、それ以外にも見た目がかわいい、きれいということが重視されています。

ジャーサラダもそれを作るために売られているキッチングッズは、昔からあったただの瓶です。

見ても美しいということは、昔から伝統的な食の世界ではあり、追求されてきたことです。和懐石の盛り付け、器との調和……それが撮って発信する場を得たことで、家庭料理の世界にも波及してきたということでしょう。


絵本と日記とぬり絵

2016-06-08 00:59:37 | マーケティング

 

以前、高級めの手帳カバーを持ち、毎年ただの紙なのにやはり結構な値段のレフィルを買って大事に使っていた時代が何年もありました。

ガラケー時代にちょこちょことケータイにスケジュールを打ち込む若い人を見て、「これは無理だ」と思い、スマホへの切り替えはかなり早かったのに、手帳だけはアナログを持ち続けていたのも今は昔。ipad mini購入を機に、スケジュール管理はデジタルに移行し、ルイヴィトンの手帳カバーはタンスの肥やしになっています。さすがに何年使ってもきれいなので、売れるのではないか(もちろんカバーだけです)と思いながらも、心情的に売れませんね。中身の抜けたバインダーでも手帳は手帳。何となく思い出が詰まっているような気がする。たぶんipadのデータを消去した状態のただの「板」とは、ここが違う気がします。

そんな年齢的にはおばさんの域の私ですら、たいていのものはデジタルに集約した今現在、静かにブームがきているらしいものが表題の3つです。

これだけではなく、万年筆も売れているし、ぬり絵が売れているということは、当然色鉛筆かクレヨンは必要なわけで、それらも売れているのではないかと予測されます。しかも絵本やぬり絵は子ども用だけではなく、というよりむしろ大人が読んだり色を塗ったりするに堪えるレベルのものが売れています。

この先祖返りのようなトレンドは何なのかと考えると、デジタルへの移行には意外に限界があるように感じます。

ITバブルのころからネット社会が浸透してきたころには、幾重にも情報を蓄積できるインターネットの世界は無限のように感じました。でもデバイスがパソコンからケータイ、タブレット、スマホと替わっても、人間と向き合うのは一枚のディスプレイでしかありません。どんなにストリートビューが鮮明化しても、実際の旅から得られる経験を超えることはできないのです。配信される情報にも限界があり、自分でニュースの現場に赴いたり、様々な書籍や情報ソースをあたったりすることで得られる以上の深みは期待できません。

アナログな領域の趣味の種類は無限に近くありますが、デジタルを介する趣味の種類は思いのほか少ないです。別に今さらデジタル化を否定しているわけではなく、あくまで仕事の道具、趣味のある部分を担うマシンでしかないと思うし、そういう使い方をしている人がまだまだ多いと思います。

これからしばらくはブームの種やビジネスチャンスは、思いのほか、アナログなモノやコトの中に潜んでいる気がしてなりません。