goo blog サービス終了のお知らせ 

ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

三越で、Tポイントカードをお持ちですか

2016-05-30 22:59:26 | マーケティング

日曜日に銀座三越の地下でパンを買ったときのこと。

「三越伊勢丹カードかTポイントカードはお持ちですか」

報道で知っていたとはいえ、一瞬戸惑いました。

ちなみにエムアイカード(三越伊勢丹カード)も都内では、つい先日まで現金払いではポイントは付きませんでした。そのころに京都伊勢丹地下で食品を買ったときに、現金でもポイントが付くことを知りました。割引がなくなったのを機に、統一したのでしょう。MIカードの特典が変わったことは、すでに書いています。

値引きかポイントか――エムアイカードの変化

今度はTポイントカードと提携をしたようです。5月25日から使えるようになったとのこと。(Yahoo!ニュース

高級百貨店のイメージを損なうとの批判的な意見に、簡単にいえば「客層を広げるため」というような理由づけをしているそうです。Tポイントの運営会社が保有する顧客データにも魅力はあるのでしょう。

パンを買ったとき、あまり深く考えず「両方持っていますけど」と言うと、「どちらかで」と冷静に考えれば当たり前のことを言われ、やっぱり深くは考えずMIカードを出しました。常に行列状態のベーカリーショップですから、内心面倒な仕事が増えたと思っているスタッフもいそうです。

実際、どうなのだろうかと疑問に思います。元来、百貨店のような業態がマーケティングの一環として行うカード戦略は、フリークエント・ショッパーズ・プログラム(FSP)に基づいたものでした。詳しい用語解説はリンクに飛んでいただくとして、要するにロイヤリティーの高い優良顧客情報をとり、その人たちに対するサービスや情報提供を的確にすることで、店舗への貢献度の高い顧客に対して、さらに購入額を増やしてもらう。さらには彼らと似た属性や嗜好を持つ新規顧客にアピール力の高い品ぞろえをしていくということです。

しかし、Tポイントカードを持つ顧客層は多岐にわたっており、戦略として同じベクトルは向いていません。二兎追う者は一兎をも得ずになるのか、狙いどおり若い顧客層の取り込みに繋がるのか、どうなのでしょうか。

もうひとつここに踏み込んだ意図として、地方店を中心に本店以外のテコ入れはあるのではないかと思います。伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店は、東京の百貨店のなかではブランド力、売り上げ、品ぞろえともに高いレベルにあります。実際、伊勢丹本店は売り上げでも単店では百貨店業態で日本一です。

ところが、伊勢丹は大阪では短期での撤退を余儀なくされ、大都市部以外の支店でも業績の厳しい店は現在の営業店でもあるでしょう。三越も同様です。両本店と大都市の一部店舗だけを残し、ほかは手を引くのであれば余計なことはしない方がいいのかもしれません。しかし全国規模での店舗面積を維持または拡大し、雇用を守り、売り上げや利益効率の向上を図らなければ、たださえ業界再編で寡占化している百貨店業態はますます縮小し、株価も含め自社グループの企業価値も守れません。結果としてブランド力も損ないかねない。ブランド力=イメージ力ではありません。イメージはブランド力を形成する一部に過ぎないのです。

そう考えれば、今回の提携は、既存顧客層やインバウンド客からだけではたえきれない店舗にとっては、重要なことかもしれません。

でも「Tポイントが使える」だけでは十分ではありません。Tポイントカードが使える店は山ほどありますが、顧客単価の低い業種業態がほとんどです。そもそもまだ日本では低単価の店は、現金払いが主流ですから、それほどポイントはたまりません。Tポイントでためたポイントがあるから、(単価の高い)百貨店で買い物をしようかという発想にはなりにくいのではないでしょうか。

結局、間口を広げ、蓄積され、日々変化する顧客データをどう生かすか。ここが大切だと思います。


アーリーディナーでにぎわう店

2016-05-20 23:09:16 | マーケティング

ちょっと前に外食のモーニング需要の話を書きました。だいぶ前にレイトランチについても書いた記憶があります。深夜食堂は物語を紡ぐ場所としては、昔から不可欠ですが、個人的には年齢やそれに伴うライフスタイルの変化もあってか、出かける機会はかなり減っています。

では都市部の飲食店に「アーリーディナー需要」はどうでしょうか。

それはもちろん、朝起きてすぐに朝食、いわゆるランチタイムに昼食、帰宅後の夕食は家族で楽しく……が理想です。でもこれを365日の大半、粛々とやっている家族がどれほどいるでしょうか。そもそも単身世帯の割合は増える一方で、全国レベルでも3割にせまる数字。2、3人の小世帯家族であっても、毎日家族そろって夕食という家庭は、勤め人が複数いる場合では少ないと思うのです。

身近な働く女性(既婚、未婚問わず、ただし同居する子どもなし)に話を聞いても、たまに夕食を1人で外食するという人は意外に多いです。(絶対に1人で夜の外食はムリという人もまだ多いですが)

夕食おひとりさまのタイミングと動機は、おおよそ2パターン。残業等で遅くなったときに家で作るのは面倒くさい、または遅く食べると太るからという。もうひとつは、そもそも一刻も早く夕食は済ませた方がダイエットにはいいから早く食べたいというパターン。前者は遅い時間に飲食店を利用することになり、後者は一般的に混みあう時間帯より早い時間帯に利用することになります。

前者はまだ多くの人、とくに女性にはハードルが高いです。何しろ、酔客やにぎやかな(やかましい?)グループ客の主戦場です。でも後者、つまり早く済ませる分には、店は空いているし、別にアルコールを頼まなくても気おくれもせず、比較的行きやすい。そのあとゆっくりヨガや遅くまでやっているエステにも行けます。シネコンのレイトショーも間に合うでしょう。

店側にとっても、居酒屋ならハッピーアワー(混みあう前の時間帯のビール1杯サービスなど)をやっているような時間帯。昼夜連続営業をしている店なら、夜の仕込みや休憩も終えて、もっとも客がほしい時間です。

ところが、ここに対応している店が意外に少なく、ファミレス、惣菜のカフェテリア形式のMujiカフェ、大戸屋のような定食屋チェーン、とくに平日のビジネス街や繁華街の店はわりと混んでいます。実際、男女問わず1人客が多い。外回りの営業の人が残業前の夕食というケースもあるのだと思います。

それ以外の夜営業主体の店は、アルコールが最も利益率が高いからか、料理もお酒を飲みながら複数人でのシェアを前提とする量が出てくる場合が多いです。代金は半分にしなくても、スモールサイズを用意する余裕があれば、立地と料理の内容によっては客が増える気がします。

ちなみに有楽町イトシアの地下や、最近東京メトロが表参道、永田町、銀座など起点駅に飲食店を入れてフードコートにしているEchikaなどは、こうした客の受け皿になっています。立地上昼夜通し営業をせざる得ないので、そうせざるを得ないのかもしれませんが、レイトランチにもアーリーディナーにも味方です。

青山あたりと違い、デリの少ない銀座の駅ナカGRANO DELICATESSEN BARもいいですね。惣菜の小皿料理は300円前後からあります。

 


オーストラリアとオーストリアの来訪外国人観光客数

2016-05-14 23:01:51 | マーケティング

たまたまこんなグラフを目にすることがあり、おかしいのではないかと調べてみました。

世界各国・地域への外国人訪問者数(2013年) 

日本の順位の話ではありません。日本より上、13位にある「オーストリア」です。

いや、別にオーストリアが行くに値しない国だと言っているわけではなく、歴史ある芸術の都「ウィーン」のある美しい国という認識はあります。自分自身は行ったことがないですが、一度は行ってみたいとは思います。これでどこかにコアラの国「オーストラリア」が入っていれば、そうなんだで終わっていたと思うのですが、トップ50に入っていなかったので、間違いではないかと……。

別にオーストラリアびいきでもなければ、行ったことすらないのですが、面積で世界6位、人口でもオーストリアの倍以上ある国で、思い浮かぶ都市だけで、ぱっとキャンベラ、シドニー、ブリスベン、メルボルン(単にテニス好きじゃないかという話は別としても)。オーストリアはウィーン以外出てきません。

要するに地理的要因に尽きると思います。ちなみにオーストラリアの年間来訪外国人観光客数は、約500万人。現在の日本(2,000万人に到達したようですね)にも、はるか及ばない。地球規模でいえば、日本以上に離島(離大陸?)。ニュージーランドなどオセアニアの島国を除いては、地理的に遠い。比較的似たイメージのあるカナダは、アメリカと陸続き、大西洋を挟んでいるとはいえ、欧州とも近く、オーストラリアの3倍程度の集客。私もアメリカのついでに行ったことがあります。

それでもオーストラリアは日本からは時差がほぼない、治安の良さ等の面でも親しみがあるのか、民間交流はさかん(捕鯨問題では対立していますが、歴史的な軋轢もほぼない)で、海外旅行先としては人気がありますから、それなりの観光立国だと勘違いしていたわけです。古くからワーキングホリデー制度もありますし……。500万人でも人口比や都市面積比等からすれば、十分なのかもしれませんが。

いずれにしても、立地は大事です。日本が急激にインバウンドを伸ばしていますが、やはり多いのは台湾、韓国、中国など近隣アジアからの観光客。GWに行ったポーランドも、近隣ヨーロッパからの観光客で賑わっていました。アウシュビッツには隣国ドイツから若い学生たちが大勢来ていました。自国の先人の過ちを世代が代わっても見られ感じられる場所が近くにあることが、彼らの歴史認識に与える影響は大きいでしょう。

陸続きに国があることでテロリストや不法移民が流入しやすいといったデメリットもありますが、観光を媒介とした経済活動や人的交流面でのメリットもあるのです。

ところが、アメリカは隣国メキシコと壁を作ろうとする人を大統領に選ぶかもしれません。メキシコだけではなく、キューバやイラン(こちらは地理的には遠いけど)との関係はどうなるのでしょう。時計の針を後ろに戻す選択をするのでしょうか。


モーニング需要とコメ離れ

2016-04-28 23:46:03 | マーケティング

デニーズが3月から朝コーヒーをオーダーした客にトーストとゆで卵の無料サービスを始めたらしいです。(→デニーズのモーニングはコメダ風?

個人的にデニーズの秀逸メニューは、モーニングだと思っていて、有料のモーニングメニューを2度ほど頼んだことがあります。秀逸だといいながら、たった2回なのは、朝食を外で食べる機会がないからです。

とはいえ先日、ある都市(名古屋ではない)でビジネスホテルに泊まったら、1階がコメダ珈琲店で、これはナイスなテナント誘致だと思い、朝はそちらでコーヒーをオーダーしました。もちろんトーストを付けてもらい、サラダを追加オーダー。私はあまりおいしいと思えない、ほとんどのビジネスホテルの無料朝食サービスより、こっちの方が断然いいので、次からここのホテルを選ぼうかと思ったくらいです。部屋もわりと良かったからですが。

私のようにふらふらしているライフスタイルでも、そんなに朝の外食というのはしないわけです。名古屋人でもなければ、そんなにがんばっても食べる人はいるのだろうか。タクシーの運転手や病院関係者など、昼夜関係なく働いている人だけでは?と思いきや、結構いるみたいです。

というのも、近くにまさにコメダ珈琲店があり、何度も平日の午前中の打ち合わせのために入ったことがあります。初めて利用したときは空いているだろうと思ったのですが、一足先に着いた待ち合わせ相手が席待ちで並んでいて驚きました。何のことないモーニングの時間帯が一番混んでいます。一度夜にも行きましたが、むちゃくちゃ空いていました。近隣はマンション街で大きな病院があるわけでもホテルがあるわけでもありません。通勤前にしては遅い時間帯なので、近所に住んでいる人がほとんどだと思います。

デニーズのリリースにもありましたが、増加しているアクティブシニア層の取り込みのようです。アクティブでなくても、ジョギングはしなくても朝の散歩くらいはするでしょうから、要するにリタイア後のシニア層の需要を狙っているということでしょう。確かに、新橋・銀座あたりの銀座ライオンに夕方早めに行くと、シニアのグループ客が肉料理を囲み、ビールを飲んでいます。

コメダ、デニーズの無料朝食サービス、銀座ライオンに共通しているのは、パンと肉料理中心の洋食メニューで、コメや和食ではないということです。

コメ離れ、和食需要の低下というと、現役世代より若い人たちの現象と勘違いしがちですが、そうとは言いきれません。戦後に育ちざかりだった、あるいは戦後まもなくに農村部以外の都市で生まれ育った、まさに今人口動態的に日本人のボリュームゾーンとされる60歳以上のシニア層が、朝はパン、昼は麺、夜だけごはんのライフスタイルのけん引役となっているのです。肉料理やコレステロールの高そうなこってりメニューも、ダイエットや成人病を気にする現役世代より旺盛に食されているように見受けられます。

むしろ、学校給食がコメ中心だった若い世代の方が、和食回帰の傾向があるように思います。和定食中心の大戸屋ややよい軒の方がむしろ若い人が目立ちます。やよい軒には和食の朝食メニューがありますが、いかんせんゆっくりできる感で喫茶店やファミレスにはかないませんから、時間のたっぷりある層には向かないかもしれません。

ちなみにデニーズの有料モーニングはごはんとみそ汁、納豆も選べます。もっとも、おかずはどう見ても、パンを選びたくなる内容ですが……。


オムニチャネルの成否は売り場の魅力と比例するのでは?

2016-04-24 02:42:10 | マーケティング

卑近な例ですが、先日こんなことがありました。普段から使っているファンデーションのブランドから、eDMがきていて、新しいシリーズの商品を買ったら、サンプルセットをプレゼントというありがちな内容でした。

その数日内、そのファンデが切れかかっていたので、別の用事で銀座に行ったときに某百貨店(2つに1つですが)に立ち寄り、まさしくその商品を買ったのですが、サンプルの話は一切なく、接客もおそろしくあっさりしていました。ふだんならデパートや商業施設の化粧品ブランド店は、しつこいくらいの接客とやたらサンプルを押し込むにもかかわらず、です。

その時点で忘れていてもらい損ねてしまいました。

想像するに、日曜日に行ったのが悪かったのです。銀座のデパートの休日は、いまや観光客と日本人が入り乱れて大混雑。きっと本社からの応援の人にあたってしまったのでしょう。ただ、サンプルセットを忘れてしまっただけではなく、おそらく私の年恰好だけを見て「夏に外で紫外線を浴びるようなことはされないでしょう」(要するに紫外線カットの必要指数を判断するための質問)と決めつけていました。

仮に販売員と客の関係じゃなくても、初対面の相手のライフスタイルを予想して決めつけないですからね。しかも当たっていないし。

こういうことがあると、欲しい色番号だけ判断できれば、次はネットでいいかなとなるわけです。実際、基礎化粧品はネットで買っています。

でも、これでは小売り各社が今、推し進めているオムニチャネルではなく、ただリアル店舗がオンライン店舗に客を取られているだけに過ぎません。このデパートのオンラインショップでしか売っていない商品なら別ですが、そんな化粧品はスペシャルセット以外ではほとんどありません。

オムニチャネルとは、同企業あるいは同企業グループのなかで、O2Oつまりオンライン(店舗)もオフライン(リアル店舗)も、同じ客に行き来してもらい、その顧客の購買データも含めて囲い込まなければ成立しません。

正直、成功企業として、大手ではどこも思い浮かびません。大手では、というのは、たとえばオンラインショップで繁盛している観光地のスイーツ店が知名度を上げて、リアルショップも繁盛しているような例はいくらでもありそうですし、逆に都市部のマルシェやデパ地下の催事場に出店して、ネット通販の客をつかむということも単純な仕組みですが、ありがちな話です。

大手企業で積極的に取り組んでいるイメージがあるのは、国内ではつい先日お家騒動報道があったセブン&アイでしょう。成否が問われるのはこれからでしょうが、確かにセブン-イレブンのネットワークは顧客接点(主に商品の受け渡しの場やシニア層への御用聞き的機能)としては優位性があります。ただ、現実にはM&Aで取り込んだ通販や百貨店などとの相乗効果が出せるところまではいっていないようです。

一方で、今盛んにマーケティングの専門家が成功事例としているアメリカの小売業のメイシーズ(業態としてはデパートメントストア)は、どうなのでしょうか。

去年の夏にマンハッタンのど真ん中にある店舗をのぞきましたが、日本の例えば伊勢丹新宿店や日本橋三越に比べて閑散としていました。平日でしたが、街中には東京以上に観光客があふれているにもかかわらず、です。

品ぞろえや店の雰囲気自体もどうってことなかったです。昔からブルーミングデールズ、バーニーズなどと比べてもどうってことはなくて、デパートとGMS(大型総合スーパー)の間くらいのレベルの品物が多い印象でした。当時(20世紀)の印象から、時代に合わせた変化はまったく感じません。こんなに店に魅力がなくて、オムニチャネル戦略を想起させるようなPOPや仕掛けも目立たず、大丈夫なのだろうかと思っていましたが、どうも大丈夫ではなさそうです。

こんな記事を書いている人がいましたが、示されている数字より、無責任に感覚で言ってしまえば、店に魅力がなければオムニチャネルは成功しない気がするのです。

カタログショッピングでも、カタログに魅力がなければ買う気がしないでしょう。実際にカタログ通販がネットショッピングに食われているのは、デジタルだと膨大な情報量(品ぞろえ)から自分の指名するブランドや商品を検索して、値段で判断できる点が大きいと思います。オムニチャネルにおける店舗はいわばカタログであり、ショーケースなわけです。ほかにその小売業がつくったカタログがあったとしても、勝負は店だと思います。

たとえば、お店で素晴らしい接客で、自分にとってぴったりの商品に出合えたとします。それが消耗品なら、なくなるころにそのお店からメッセージやクーポン券(化粧品なら試供品でも)とともにはがきやカタログが届けば、わざわざ店には行かずに、注文しようと思うかもしれません。郵送でなくても、eメールでもいいのです。近くて身軽なら、また店に行きますが、そうそう頻繁に出かけられない人は大勢いるのです。

都心部のデパートだとすれば、商圏は広いのですから。