日経新聞に載っていたが、不況感で消費が冷え込み、その中でも生活者がもっとも我慢するのが「外食」らしい。ランチを弁当に、ファミレスには行かず家族で内食、とパターンはいろいろ考えられるが、何だかんだ言って、やっぱり節約ターゲットは既婚男性の飲み代だと思う。居酒屋チェーンが前年比割れとか、如実に数字に出ているものもあるらしいが、実感としてはどうだろうか。
事務所の向かいにイタリアンバール風スタンディングバー、何軒か隣に赤提灯の立ち飲みがある。どっちもわりといつも人があふれている。赤提灯は知らないが、バールの方はとりたてて安いわけではない。居酒屋チェーンよりは明らかに高い。チェーン店ならずももっと安くて椅子のある店はいくらでもある。にもかかわらず、この2店にかかわらず、立って飲む、食べる店は人気がある。最近は寿司屋もあるくらいだ。店側は早い回転率と高い坪効率がメリットなのはわかる。酔っ払って寝込まれることもないだろう。
飲む側の論理としては、店と利害が一致して、長居をしたくない、酔いつぶれることなくスマートに飲みたいというのがあると思う。最近よく言われることだが、いわゆる心から望まない関係性(たとえば気の合わない上司と部下など)での飲みニケーションが減り、職場の人間関係がドライになった。それでも同僚と仕事帰りに少し話をしたいときもあるだろうし、一人で食事や酒を飲みたくない時もあるだろう。そういう時にスタンディングが、ダラダラ・ベタベタにならずに便利というのがあるのではないか。
同じ日経に掲載された中で消費の引き締めの中でも買いたいものに、薄型テレビなどが入ったようだ。地デジを見すえ、といってももう少し先の話。外から家の中の生活に向いているということではないか。飲まずに帰る、あるいは飲んでもすぐに帰るのだから、その代替に家でテレビや映画を観たり、ゲームをしていると言ってしまえば短絡的すぎるけれど、好景気でも不況でも人に与えられた24時間は変わらない。急激に失業率があがれば別だが、今程度のブレなら代替消費は何らかの形で発生する。むしろ「仕事+飲む」以外の日常的な余暇は増えているかもしれない。余暇がたとえば家族と共に過ごす時間が代わっているなら、代替消費としては弱くても、それはそれで豊かなこと。古きバブルの時代、恩恵は大してなくとも既に社会で生きていたけれど、自分の若さに懐かしさはあっても、時代背景を考えると戻りたくないと思う。政治はともかく、生活者全般は今の方が少しは理性的で成熟しているような気がする。