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ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

新宿ピカデリーとバルト9

2008-09-06 14:08:13 | まち歩き

先日、7月にオープンした新宿2つめのシネコン「新宿ピカデリー」に初めて行った。オープンを楽しみにしていたわりに、出足が遅かったのは、オープン時は夏休み映画のピークで、ポニョとかパンダとか妖怪とかばかりで、イマイチ好みの作品が上映されていなかったので。

先にオープンしていた「バルト9」には、やや脅威であったのか、ピカデリーオープン前後から急にメルマガが来るようになった。でも映画館の質は、バルト9の方がいいと思う。かかるプログラム(東宝と松竹系の違い?)、音響(これはピカデリーもわりといいけど)、座席の座り心地、動線(チケット売り場まではピカデリーのほうが早く着くので、スクリーン1で観る時にはその点は気にならない)など。ただ、バルト9にはレディースデーがないので、私がピカデリーに行った日には、水曜日だったので、終了時がほぼ終電というレイトショーにもかかわらず案の定女性客で溢れていた。

その上、チケットを買うと、有無を言わさずという感じで、メンバーカード(東宝系にもあるクレジット機能付のものではなく、ポイントカード)が配られ、6本観れば1本タダという気前の良さは、ピカデリーに行ってしまう十分なモチベーションになる。

いずれにせよ、新宿はこれで映画を観るには十分な街…と言いたいところだけど、万人向けでない作品や、良質な作品を紹介する単館と大型の複合館が混在する渋谷のほうが映画を観る街としては魅力的だと思う(シネコンはないけど)。一部には新宿にもそういう映画館はあるが、今後歌舞伎町近辺の映画館が変化を余儀なくされるときにさらに期待したい。ただ、場所柄、歌舞伎町は大人向けを狙った方が受けるような気がする。今もシネコンは落ち着かないからと、わざわざ歌舞伎町の古い映画館を選ぶ大人(男性)もいる。そういう意味では中年以上の男性から、映画文化をとり上げるのではなく、むしろもっと観に来てもらえるような企画が求められるのかもしれない。今、ハリウッドも日本映画も大人の男性には向いていない感じがする。ヨーロッパには時々良い映画があるけれど、それこそ単館しかやっていないケースが多いので、普段からアンテナを張っていないとなかなか映画館で観る機会に恵まれない。


コンビニの深夜営業がもたらす功罪

2008-06-21 15:03:04 | まち歩き

京都市街地のコンビニの深夜営業規制は、あながち反感を持たなかった。景観を守り、歴史的財産を持った上質でサスティナブルな都市をつくるというビジョンにつながるからだ。事実中心部の一部では民家にも木造の新築を求めているという話もあり、景観保護という一つのミッションにインテグレーションされているのではないかとも感じた。本来はコンビニも建設時に看板や外観を景観に溶け込ませてほしかったし、他にも何とかしてほしい業態はあるが…。

ところがCO2削減という別の目的が出てきたことで、話は広がってしまった。埼玉県神奈川県が深夜営業の自粛(さすがに規制ではない)を求めると言い出した。その声に大手コンビニや協会も反応し、数値や実態の一部を示した反対の声をあげ、またローソンは照明にLEDを利用することを明言した。

環境対策が誰にとっても重要課題であるということへのコンセンサスはとれつつある。例えば大手コンビニ企業がFC加盟店のオーナーと個別に面談し、深夜営業が不要である地域、またその弊害が大きい地域に限り、営業時間を短縮するというのならわかる。ところが行政が一方的に、目に付いた業種に限定して、そうしたことを言い出すのは理解しにくい。特に埼玉や神奈川は多くの長距離通勤者を市民に抱える自治体であり、彼らが終電で帰宅後の街の灯りや利便性を奪うことになる。治安面だけでなくそもそも自治体が負うべき、国民保険などを含めた税収の集金窓口としてもコンビニは機能しており、そこに至るまで時間をかけて合意し、システムを開発してきている。その利便性を奪うほうがムダではないだろうか。

また、長距離通勤者だけでなく、オフィスワーカーにとっての時間外にシフト制で働いている多くの人がいる。「夜型から昼型へのライフスタイル変化」と自治体では言っているようだが、警察官や消防士、医療スタッフ、学費を稼ぐアルバイター、シングルマザー等…夜働くことで、社会に貢献し、努力をしている人の人生は目に入らないのだろうか。また、コンビニの加盟店のオーナーやスタッフなどは、看板となっている大手企業に守られているわけではなく、仮に営業時間短縮が売上や利益に響けば生活にも響く。深夜のコンビニバイトをしている留学生たちは、東京に住まいを移すのだろうか。

それでも社会の構造変化、環境という大目的のために、何かを犠牲にしなければならないことはあるかもしれない。ドイツは深夜営業の店が極端に少ないが、機能しているという意見もあるだろう。筋が通ったビジョンがあり、そこからはみ出ざるを得なかった人を救う想像力があれば、国や自治体のリーダーシップは支持されるかもしれない。でもこれまでの急速な市場経済の発展の中で、コンビニを含めた大手小売業が台頭し、商店街の多くが廃れている。今回の動きで加盟店の多くが昼間の収益だけでの営業継続が危機となれば、一時的に昼間の地域の商業にも不便をきたすかもしれない。地域コミュニティも、高齢者も含めて単身世帯が増え、隣近所のつながりも希薄になっている。多くのものを失い、街が形を変えた後に、力づくに揺り戻しをかけるのは無理があると思う。


光の功罪

2008-04-13 11:56:04 | まち歩き

東京や一部の大都市以外のところに行くと、夜が暗いことに驚かされる。100万人都市の京都の中心部ですら、コンビニも見当たらず、もれてくるのは古い家屋(間口が狭いので明かりもあまり漏れない)からのわずかな灯という裏通りがある。もちろん景観条例が効を奏しているわけで、他の都市ではこうはいかないと思うが、光の少ない町は寂しいけれど独特の情緒があり、ノスタルジックだ。それでも乗車したタクシーの運転手は「京都は安もんの町になった」と嘆く。

確かに表通りはファストフードやコンビニの看板で明るく(安っぽく?)照らされ、昔のような情緒はなく、ヨーロッパの古都のような秩序はない。他の大都市からみれば贅沢な街並みも、守る意志がなければ壊れてゆく。京都は一時の規制緩和の揺り戻しで、また景観に関する条例が厳しくなっており、中心部の一部では日本家屋以外は建てることができなくなっているという。気候の厳しい町で日本家屋は住む人にとってベストではないかもしれないが、大局から見れば良いことかもしれない。

徐々に日本全体に増えつつある外国からの観光客も、リピーターは北海道などを好むという。京都の観光政策は巻き返しに必死でその成果も出つつあるが、玄関口である駅舎を妙なものに建て替えてしまったツケはまだ返しきれていないように思う。今となっては、駅前の旧シンボル「京都タワー」もどうにかしてほしいくらいだ。

一方、くいだおれ閉店で話題の大阪、特にミナミは、あの明るさ、猥雑なくらいの元気さが個性の街だと思う。地元球団が優勝したからって、何も汚い川に飛び込むことはないと思うが、それでもあのパワフルさには人はひきつけられる。東京の生活が長くなっても、いまだに在京球団が好きになれないのは、パワーのあった大阪の思い出に金縛りに合っているのではないかと思う。

くいだおれが閉店するのは、一民間会社である店の事情だから仕方がない。でも街全体の個性を失い、大阪らしさが遠くなるのは寂しい。それは別に関西出身者のノスタルジックというだけではなく、地域にとっても損失ではないだろうか。もちろん経済都市としてはグローバルスタンダードに合わせていくことも大切だけど、その地域特有の文化やカラーと折り合いをつけないと。

それは別に大阪に限ったことではないと思うが。


WOWOWの連ドラ

2008-03-30 22:26:21 | まち歩き

地下鉄の車内吊りや駅に、WOWOW初の連ドラ『パンドラ』の広告が出ている。流行りの医療ミステリーらしく、しかも脚本は平成版『白い巨塔』を書いた井上由美子さんで、俳優陣もいわゆるアイドルではないが、著名で華のあるメンバーばかり。在宅率の高い日曜日22時。高視聴率の大河ドラマも終わった後で、競争力もあると見込んでいるのかもしれない。いずれにせよ、相当力を入れているのではないかと思う。

そういえば、地デジ対応テレビの普及率は徐々に上がっていると思うが、有料放送への契約率はどうなのだろう?NHKの受信料ですら、支払っていない人が相当数いるというのに、それ以外の放送受信料の契約率がそんなに高いとは思えない。私も何度か入りたいと思ったきっかけはあったが、そのたびに思いとどまってきた。

海外のニュースチャンネルは、そこまでして見なくても新聞で十分、という結論に達し、映画チャンネルは映画館やDVDで事足りると思い直し、海外ドラマチャンネルはDVDなら観ることも録画予約することも忘れないと、早い話時間を選ばないレンタルやセルのDVDを選択している。まあ、『パンドラ』も最終的にはDVDBDになるのかもしれないが

結局、放送局はオリジナル番組を作ることがひとつの価値と言えると思う。キー局以外の局が継続的に多番組を製作できる体力があるのかは疑問だが、少なくともWOWOWは以前から単発ドラマを制作したり、既存の民放キー局同様映画製作にも参加したりしている。

映画やドラマが好きな身としては、既存の民放局以外からも多様なソフトが出てくるようになるのは歓迎。何しろこのところはまっているアメリカのテレビドラマをレンタルで観るにつけ、日本の連ドラに興味を失い、リビングのテレビの方はDVD再生モニターになっている状況なので。


衣食足りてこそ

2008-02-13 03:23:49 | まち歩き

週末某百貨店にバレンタインのチョコレートを買いに行ったら、各催事ショップのプレートにブランド名とともに国名が出ていた。「ベルギー」「スイス」「イタリア」等々、チョコブランドとして見栄えの良い国名が並んでいる。これらを見て誰も怪訝に思う人はいないだろう。それどころかほとんどの商品にチョコレートのものとは思えない高価な値段がついていて、多くの人がそれをもろともせず購入している。でも原材料すべてが欧州で生産されているわけではない。カカオやコーヒーなどの生産国の多くを占めるのは、貧しく政情不安の国々。むろん労働条件で問題のあるところが多く、子どもに過酷な労働を強いているケースもあるらしい。そのことが一般に問題提起されたのは、わりと最近のこと。「チョコレートの真実」という本も邦訳されている。だから食品として危険だとはいうわけではない。彼らはおそらく言われたとおりに働いているだけだ。自分のつくった原料が何になるのか、むろん最終的に一体いくらで売られているのか知らずに。

こうした国々の現状に目をつぶっていることはあっても、問題がないと思っている人は少ないと思う。しかし中国に対しては、経済的に同等レベルに迫ってきていると思っていて、フェアトレードという考え方の対象外にしているところがある。確かに中国のような新興国は表面的には衛生や機能面で整備され、少なくとも児童労働はないかもしれない。でも高い学歴を持ち、多くの収入を得て急激な生活物価上昇を牽引している人も出てきている一方で、着実に格差は広がっているという。中国より先に発展した韓国でも南大門が放火により消失するという事件が起きた。ギョーザの件はまだわからないが、韓国についてはイデオロギーによるものではなさそうで、社会に対する漠然とした、あるいは経済的な面での不満の蓄積のようだ。日本でも動機が明確でない猟奇的な事件が起きている。

どんな動機でも犯罪は論外だが、そこにイデオロギーや偏った歴史観があるのなら、まだ説明がつきやすい。でも低賃金の仕事への不満や経済的なトラブルが大きな犯罪につながっているなら、そんな社会の方が不健全に思う。「衣食足りて礼節を知る」という。自分や自分の周囲の衣食が満ちることも大切だが、自分が食べているものや着ているものなどを生産している人の生活への想像力を持つことも必要と思う。何もボランティアするとか、寄付をするとか、そういうことまでしなくても、「人件費が安いから安い」というものに疑いを持ち、正当なコストで貿易をしている会社から買う意識を持つだけでも少しは違うかもしれない。でも結局、何にいくらのせて売価になっているかわからないから判断のしようがない。今後もっと企業が実施している、あるいは守っているさまざまなCSR活動の中身をきちんと伝えていくことは、消費者が公正な判断をするためにも必要なことになってくると思う。