
この店、だいたい20時半から21時ぐらいに品切れ次第閉まるのだが、最後の30分ぐらいは売りつくすために30~50%引きになる。別に値引きを目当てにしているわけではないが、外出先からの帰りがそれぐらいの時間になることが多いので、時々寄って安い惣菜を2、3個買って帰っていた。ところがある日同じ時間帯に中をのぞくと、売れ残った商品がパックいっぱいに既に詰められていて、400円か500円ぐらいで(これでも格安)売られていた。もちろん買わずに帰ってきた。数日後に見ても同じだったので、それ以降行かなくなった。
確かに最後まで1個ずつ売っていたのではいつ売り切れるかわからない。それが店の都合だろう。でも私が住んでいる区の単身世帯比率は55.9%でこれは東京都心区のなかで2番目に多く、1世帯あたりの平均家族数は約1.7人だ。現代は家族で住んでいても揃って食事をすることは少ない。惣菜店はこうしたライフスタイルの人の受け皿として高いプレゼンスを保っているはず。パックにいっぱいに詰められた揚げ物は1人や2人では食べきれない。
今やどこのスーパーでも野菜のばら売りは常識。肉のパックも小さく、さらに小分けにも頼めばしてくれる。価格の高低より食べきれずに捨てるもったいなさの方がやりきれないから、多少高くても少量パックを買う。今の若い人は物を粗末にすることが平気だと信じているとしたら、それは間違っている。食べ物を腐らせて捨てることが不快なのは、共通の心情だと思う。大手スーパーにできて、街の小さなショップにできないことは確かにたくさんある。それは仕方がない。けれども本来きめ細かい対応が得意なはずの街のショップが大雑把な商売をしていたら、自己の存在価値を捨てることに等しい。
もしかしたらその店の店主も、単品で売ってくれと言えば対応してくれるのかもしれない。でも大手スーパーの店員には平気で言えることも、小さな店の店主には言いにくいこともある。それもまた近所づきあいが希薄な都市生活者の顧客心理である。