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ensemble マーケティングの視点

日常生活と趣味を綴る個人的散文です。タイトルに反し、仕事に関する話は書きません。

変化球

2011-02-11 14:40:04 | 社会・経済

昨年引っ越しをした。引っ越し会社は一度頼んで満足したところに決めていて、自分が関係している法人の引っ越しも含めて、もう何度もS社にお願いしている。

女性にとって引っ越し作業とは、プライバシーをさらけ出し、足らないところを補ってもらうこと。単にモノを壊さないとか、手際がいいのか、安いとか、そういうことでは選べない。一言でも何か気に障ることを言われたらもうダメ。若い時に一度そういうことがあり、それ以来、価格にはそれほどこだわらないようになった。もっとも仕事の資料も多く、お任せパックは利用しにくいので、値段はどこに頼んでも大差はないと思う。

マニュアル化された大手でも、引っ越しは結局は人間のやること。個性や能力が出る。リーダー格の人に追加サービスの要望を聞かれたので、テレビとDVDの配線をしてほしいと頼んだところ、どうも得意中の得意だったらしい。

テレビは5年くらい前のもので、当時も電器量販店のサービスで人にやってもらったのだが、音がイマイチ。当時はまだビデオを持っていたのだが、アナログだとまったく映りが悪く話にならなかった(結果ビデオを捨てた)。ところが友人宅で、間違ってアナログ放送をかけても鮮明だった。

テレビのメーカー、年代の違いかとも思い、初めて地デジ対応にしたものだから「まあ、こんなものか」と放置していた。ところが引っ越し会社の人に頼んで配線をしてもらった途端、音は10くらいのボリュームでもはっきり聞こえ、デジタルそのものの映りも格段よくなった。加えて配線上の問題だったという説明もしてくれた。

引っ越し会社に電気配線の特技を求めるのは本筋ではないけれど、それだけにこういうサービスは心に残る。

今、就職で苦労している新卒の学生さんは多いが、引っ越し会社の面接に行って「私は電気に詳しくて、どんな家電の説明も取り付けも完璧にできます」とはアピールしないだろう。深く考えない面接官なら「ヨドバシカメラと間違っているの?」と問い返されるかもしれない。

でもどんな業種でも、その世界で活躍するために必要なのは、本筋の技術や能力だけではないと思う。そもそも本筋の技術で、新卒や未経験者は上司や先輩に太刀打ちできない。何社も受けてダメな場合は、一度変化球も試してみてはどうかと思う。

「業種や会社の大きさを選んでいないのに就職が決まらない」という知人の学生に、よくよく話を聞くと「大学に求人が来ているところにしか応募していない」という。大学そのものに競争力があるならまだしも、それでは面接までもいけなくて当たり前だと思う。

業種こそきちんと選んで自分で調べ、良いと思う会社の社長宛に、自分の特技や特性とその会社への熱意を盛り込んだ手紙を書いた方が確率が高い。その子がその後それをやったかどうか知らないけれど、自分も苦労をしてきた中小企業の社長なら、少なくとも心は動かされるだろう。心が動かされてこそ、縁ができる。冒頭の引っ越し会社も、心を動かしてくれたから、いやな会社との比較論で選ぶのではなく、絶対的に選びたい会社になる。

就職も本質は同じような気がする。ストレートを投げてスピードという過酷な競争の中に埋もれるより、変化球ならニッチを狙えるかもしれない。


アフターコンタクト

2009-03-29 16:16:48 | 社会・経済

モノよりサービス消費の時代なんて、言い古されたキーワードだけれど、政府も企業も生活者に今こそ何とかお金を使ってもらいたいと思っている。モノを買ってもらうことも大事だが、一度買ったらしばらく不要になるものをお勧めするよりも、形のないものを買ってもらった方が手っ取り早いし、早期リピートも求められる。定額給付金高速道路1千円の組み合わせで旅行をしてもらうのが、最良のシナリオというわけで、低価格の家族旅行パックが多く売り出されているようだ。

このシナリオの良し悪しはともかく、当然ツアー企画の陰で各地域に旅行者を迎え入れる宿泊施設やレストランや、その他のサービス事業者や人がいて、この好機をモノにしたいと思っている。それはもちろんチャンスだが、このときだけ急激にお客さんが増えても、格安の低い利益が瞬間風速的に通り過ぎるだけで、本当の景気浮揚にはならない。バラまき政策が事業者にとってバラまかれにならないように、それぞれの知恵で次につなげることを考えて、ようやく本当の意味でのチャンスになるのだと思う。

そして繰り返し利用したくなる顧客サービスって何だろうと考えた時、そのサービスを受けている間、まさに顧客接点の一瞬一瞬が満足できることは普通に求められることだ。しかし翌日以降に思い出に残るとか、影響を与えるといったサービス力はかなり高度で、タイミングやお客さんとの相性が良くなければかなわないことでもある。でも瞬間で忘れられては確実な繰り返し利用は見込めない。日常的に通う美容・健康サービスなら、ポイントサービスもある程度は有効だけど、旅先でそんなものを渡されても、あまり意味がない。心にポイントをためてもらう必要がある。

例えばこれはほんの一例だけど、旅と食は切り離せない。美味しいものに出会ってその瞬間感動することはよくある。そこでしか食べられない究極の美味を提供できることも、料理人のサービスや技術としては一級品で必要なこと。でもそれを後々まで覚えていてもらうほどのものとなると、そんな一級のサービスを提供できる店や旅館は一握りだと思う。しかし例えば、そのうちの一品でも普通の素材を使った特別なレシピがあって、料理好きのお客さんにさりげなくレシピを渡したり、つくり方を教えたら、その人が日常生活に戻った時に、その店や料理人を思い出す確率は増すだろう。

プロとは素人にできないことが特別にできる人だけのことを言うのではないと思う。もちろん技術的な上手さや発想力、創造力は必要だが、少なくとも一般のお客さんを相手にしたサービス業の人たちは瞬間芸を見せることより、アフターコンタクトというか、現実的なコンタクトポイントから離れた後に影響力を与える人のほうが上だと私は思う。

具体的な体験談がある。カットをする美容師には二通りいる。カットがすばやくブローに時間をかけ、美しく仕上げる人と、カットが丁寧で、ブローを簡単で誰にでもできそうな技術で仕上げる人。仮に仕上がりが同じレベルなら明らかに後者の方がプロだと私は思う。なぜならばブローは翌日以降、お客さん本人がやらなければならないからだ。

旅先の料理はそのまま日常には持ち込めない。だからフルコースや懐石料理のすべてを詳らかにする必要はない。ヘアカットの技術をお客さんに教える必要がないのと同じで、日常生活でそれほどお金をかけなくても楽しめる料理だけ、1、2品でいいのだと思う。それがその地域やその料理人独自のものであればインパクトがある。簡単にできるブローの方法を教えてくれた美容師のことは毎朝思い出すチャンスがあるように、料理のレパートリーを増やしてくれた料理人のことはその料理をつくるたびに思い出してもらえるチャンスがある。

せっかくなので単にお金を使い切ってもらうツアー企画だけではなく、次につなげるサービスプランを考える機会でもあると思う。民間事業者は政策にまんまと乗る以上に、もっとしたたかであってもいいのでは?


セキュリティと利便性の綱引き

2005-11-19 02:00:45 | 社会・経済
以前に申し込んだ東京三菱スーパーICカードは程なく届き、最近になってようやく静脈認証の登録をした。カード機能にクレジットカード(VISA)やEdyが混在していて使いづらいのではないかということは以前のブログに書いた。そして実際届いてみると…。

案の定Edyにはチャージしていないし、VISAカードは使っていないが、それでも早速戸惑ったことがある。確か営業時間外の引き出し手数料が無料になると思ったので、ある日、コンビニでおろそうとすると、なんとDCクレジット(借り入れ)しか使えない。コンビニの店員に聞くと、ICカードはクレジットが優先され、通常の預金引き出しはできないという。コンビニ店員には何の罪もないので、そうですか、と引き下がって何もおろさずに帰ってきたが、これってちょっとおかしくない?

セキュリティを重視しているからコンビニではおろせないというだけならわかる。VISAがついているから、VISAのクレジットならできるというのも、100歩譲って理解できなくもない。でも顧客側から見れば契約の覚えのないDCクレジットが使えるというのは何だか理屈に合わないような…。そもそもなんで自分の預金がおろせないほどセキュリティ強化しているのに、契約のないクレジットカード会社からの借金ならできるのか?

おそらく銀行の言い分はこうだと思う。クレジットカード会社なら万が一の時に保険でカバーできる、顧客が払う利息分儲かる、DCカードは東京三菱系列だ、etc.

そして静脈認証の登録をすると、今度は専用ATMでしかおろせなくなる。これじゃ、不便なカードきわまりない。まあ、私の場合は、個人カードなので入金されることはめったにないのでいいけど、給料を振り込まれたりしたら不便だろう。考えてみれば、カード会社の引き落とし分プラスアルファくらいしか入っていない口座にセキュリティは必要ないかも(←まさに無用の長物)、なんて考えながら珍しいものを持っているような気持ちでいる。総合口座や銀行ローンと連動しているキャッシュカードなら意味はあるかもしれないが、そっちは以前のままのカードにしている。理由は不便だからだが、微妙に矛盾しているような気がする。


東京三菱スーパーICカード

2005-08-31 00:41:06 | 社会・経済
プレミアムグッズ東京三菱銀行 デイジー貯金箱
できればクレジットカードの数は増やしたくないと思いつつも、自然に増える。最近はビデオレンタルショップやシネコンの会員カードもクレジット機能付だから容赦がない。まあ、使うカードさえ決めていれば使いすぎることはないと、甘んじて受け入れている。

先日、東京三菱銀行のATMの帰りにスーパーICカードへの切り替えを勧誘された。TV-CFで江口洋介がキャラクターになっている「アレ」である。手のひら静脈認証でセキュリティ万全という…。東京三菱はほとんど引き落とし用にしか使っていないので、よほどタイミングが悪くなければ、不正に引き出されても大した被害はないのだが、費用も無料だというので1支店分だけ切り替えてみることにした。

やっぱりもれなくクレジットカード機能と電子マネー「Edy」がついてくるとのこと。結局顧客にとっては無料のコストをVISAやEdy との提携で賄っているわけだ。Edyは欲しかったのだが、「VISAは要らない(もう既にいろいろなVISA提携カードを所有)」と言ったが、使えないように手続きすることはできるが、最初からつけないということはできないらしい。私のそばで同じく勧誘されていた人は、「私はカードの審査に通らないから」と堂々と断っていた。その場合は、預金被害補償もつかないうえにカード発行料を逆にとられるらしい(←これは後で知った。その時にはクレジット付しか勧誘していなかった)。結局安全を享受するためには、顧客にも与信力が必要ということか?

何だか急にスーパーICカードがすましたヤなヤツに思えてきた。

アメックスやダイナースなど、審査が厳しいカードを営業に勧誘されて申し込んだ人が、審査で断られてムカついたという話をよく聞く。VISAでそんなことはないだろうけど、会社員じゃない私は結構TSUTAYAの提携カード申し込みの時もドキドキした。ヴァージンシネマのカードはそれが面倒で作っていない。映画を6本観たら、1本タダは魅力なのに。もし東京三菱のキャッシュカードでそんなことがあったら、預金ごと解約してやる!敵は痛くもかゆくもないだろうけど…。


近所の小さな店との距離感

2004-10-28 02:25:18 | 社会・経済
昨日書いたコロッケ屋の話に質問をいただきました。「なぜコロッケ屋に要望を言えないのか教えてほしい」ということでした。多分この質問の主旨は、大手スーパーの店員に言えるわがまま(例えば2本セットで売っている葱を1本で売ってくれとかそういうことです)が、近所の小さな店では言えないのか…ということだと思います。普通消費者心理として逆じゃないかという疑問です。

大手スーパーの店員は多分社長じゃないでしょう。アルバイトであったり、社員であったり、彼らは会社の指示で働いています。客の要望に面倒だなと思うか、頑張っていろいろ聞いてあげようと思うか、そういう個人差はあっても、本質的に客の要望に対して、感情的に対峙することはないと思います(個人攻撃的クレームは別として)。そして今時のスーパーは客の大抵の要望には応えるように指導しています。従ってスタッフは葱を1本売りを拒絶することのメリットは何もないわけです。当然心では面倒だなと思ったとしても、笑顔でマニュアルどおり対応してくれます。ところが近所の小さな店のスタッフは、だいたいが店主か雇われ店長です。あるいは店主の家族だったりします。彼らは時として直接感情で対峙してきます。客の要望に応えるかどうかの決定権も持っています。

商売熱心で愛想の良い店や人なら良いのですが、意外と都心(下町や住宅街はそうでもない)の昔から営業している個人商店の店主はよそ者(地元出身者ではない人)には無愛想です。もちろん例外はありますが、大抵はそうです。それに加えて、よそ者は元々近所づきあいをあまりしません。だから人間関係の距離感でいうと、伊勢丹の店員も近所のコロッケ屋の店主も同じぐらい遠いのです。むしろ伊勢丹の店員の方が近いぐらいです。人間関係の距離感が遠くて、しかも相手は「ぬし」のように、昔から商店街で商売をしている店主だとしたら、明らかによそ者の客の方が心理的立場は下になります。多分また顔を合わすであろう近所の商店主に「こいつヤな客だな」と思われたくないわけです。いや、もしかしたら、要望を断られる可能性すらあります。そうなったら気弱な私としては完全なる敗北です。ま、近所の店の人と仲良くなれば問題はないのでしょうが、コンビニ世代としてはそれも面倒です。