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遠藤雷太のうろうろブログ

何かを観たら、とにかく400字または1000字以内で感想を書きつづるブログ。

空宙空地『その鱗、夜にこぼれて』

2021-03-05 01:56:00 | 演劇を見てきた

2021/3/4

・ひなびたスーパーに集まる人々の、それぞれの人生の断片を重ね合わせて幸せについて思いやる話。

・最初に「おばさん」が思わず万引きしてしまう事件から始まるものの、過去の空宙空地の長編と比べても軸となる存在や出来事がなく、市井の人々のそれぞれの人生をフラットに描こうとしている感じ。

・なので、物語を見るというよりも、何枚ものレイヤーを重ねた一枚絵を鑑賞しているような気持ちになる。もしくは洛中洛外図。

・毎回思うけど、舞台俳優としての華と生活感が両立しているおぐりまさこさんは本当にすごい。

・平凡な人々の表現をつきつめると、平凡な人間のステレオタイプができあがってしまうのでバランスが難しい。

・既婚未婚と子供あるなしで、少なくとも4パターンくらいには感想の傾向が分かれるような気がする。

・自分は未婚子供なし男性なので、一番自分と近いのがスーパーの店長さんだったりする。

・実際のところ、彼の家族についての言及があったかは思い出せないけど、せめて人から嫌われないように生きていきたい。

・一度見ている役者さんが多いことを差し引いても、あれだけ目まぐるしく一人何役もやっているにもかかわらず、誰が誰だかわからなくなることがほとんどない。

・膨大な人間関係をきれいに捌ききっていたと思う。

・ゲストは明逸人さん。ゲスト出演である以上、完全に馴染んでいても馴染んでなくてもよろしくない難しいポジション。あのやる気のない警察官が微妙に嫌な実在感で絶妙だった。

・フラットな絵画と違うのは、それぞれの登場人物の時間の経過も描いていること。

・コストコ、スイスロール、胡蝶蘭などなど、他愛のないキーワードをその補助線にしている。

・特にスイスロールは巧い。あんなに、年齢を重ねるとともに価値が変わっていくものもないもの。

・人生のすべてを描くことはできないけど、ポイントになるシーンを切り出すことで立体的に見せることはできる。

・たくさんの人のたくさんの人生が重なっていくことで、具象から抽象画っぽくも見えてくる。

・人々の現在過去未来が鱗のように集まって、きれいな構造色ができたようなお話だった。

(2021/3/3 19時30分の回)

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