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西洋美術関連ブログ 思索の断片
―Thoughts, Chiefly Vague

アートマインド no.174 (2014新年号)

2014-01-13 11:59:54 | 雑誌

(画像をクリックするとアマゾンへ)

アートマインド no.174 (2014新年号)
ジャパンアート社
2013

東京・六本木の森アーツセンターギャラリーでのラファエル前派展開催まであと10日ほどとなった。
各美術雑誌も、展覧会に合わせて特集を組む。

このブログでは昨年末に「日経おとなのOFF 2014年1月号」を紹介させていただいた。
(→ 2013年12月12日の記事

ラファエル前派展に関する記事に限って言えば、割かれている紙面こそ少ないものの、イントロダクションから多少踏み込んだところまで、厳選された要点を丁寧に押さえた良質の記事となっていた。
時代背景、人物関係、作品解説と非常にバランスよくまとめられていた。

記事自体は日経のライター(大旗規子氏)の手によるものであったが、適宜、イギリス美術に造詣の深い荒川裕子氏による解説が加えられていた。

荒川氏に関していえば、ターナーに関するサム・スマイルズ氏の著作(J. M. W. Turner: The Making of a Modern Artist)を訳した『ターナー―モダン・アーティストの誕生』(ブリュッケ、2013)が昨年刊行された。
また荒川氏の『イギリス美術』(岩波新書、1998)は、新書サイズでイギリス美術史を全般的に網羅している貴重な書である。

展覧会まで日数が少なくなり、アマゾンで「ラファエル前派」と検索すると、新着書籍が次々と表示される。
そのうちの一冊(「アートマインド」)に関して、書店で手に取り読んでみた感想を述べる。

個人的に初めて目にするこの雑誌で主に特集されていたのは、「ラファエル前派展」と「ザ・ビューティフル(唯美主義)展」そして東京富士美術館で先日会期が終了した「光の賛歌 印象派展」の三つである。

最後の印象派展に関しては、既に展示が終了していることもあって、ここでは特別言及しない。
ラファエル前派展と唯美主義展の記事は、どちらも同じライター(アートライターの「ばんのなおこ」氏)によって書かれていた。

当然、19世紀のイギリス美術史を眺めてみれば、ラファエル前派から唯美主義へと受け継がれていく美の系譜がみられる。
しかし記事を読む限り、両者の「かみあわせ」具合が丁寧に描き出されているとは思えなかった。

「日経おとなのOFF 2014年1月号」の良質な解説記事を読んだ後だから感じるのかもしれないが、どこかポイントを捉えきれていない感が残った。

また最初の方でテート美術館とヴィクトリア・アンド・アルバート博物館(V&A)がどうこうと書かれていたが、少なくとも後者は今回のラファエル前派展とは直接的な関連が全くない。
海外の美術館に言及するのであれば、今回の展覧会の場合、ワシントン・ナショナル・ギャラリーやモスクワのプーシキン美術館を挙げるべきであろう。

森アーツセンターギャラリーで開かれるラファエル前派展は、ロンドン・ワシントン・モスクワを経て、東京に巡回してきたものなのだ。

ついでに偉そうなことを言わせてもらえれば、ばんの氏は当然豊富な知識をお持ちの方なのだろうが、文章を読んでいると、どうも、本質的なところで、「修羅場」をくぐってきているのか疑いたくなる内容だった。

校閲にも多少問題があるのだろう。

購入することはなかった。


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