2014年3月29日放送 美の巨人たち(テレビ東京)
早良俊夫 「雲仙観光ホテル」
長崎・雲仙。
地名の由来は「温泉」の訛りだという。
昭和天皇も宿泊されたこのホテルが開業したのは1935年のこと。
2003年に国の登録有形文化財となって以降、数年をかけて大改装が行われた。
リニューアルのコンセプトは、「新しくノスタルジア」。
形容矛盾にも思えるが、そうとも限らない。
思い出してみよう、ラファエル前派の革新性は何であったか。
兄弟団は中世あるいは初期ルネサンスの芸術を賞賛しつつも、単なる〈懐古〉に終始したわけではない。
彼らが求めたのは、〈新たな美〉を生み出すことであった。
今回の大改装のひとつの目玉は、客室の壁の装飾。
新たに壁を飾るのは、ラファエル前派第二世代のひとり、ウィリアム・モリスの手掛けた美しいデザインである。
「新しくノスタルジア」という理念を導いたのは、19世紀英国の美術革命に他ならなかったのだ。