たかつき市民環境大学
第2回 「自然と親しむ」
日時:2025年6月12日(木)10時~12時
場所:原公民館
講師:栗本修滋さん
(大阪大学大学院工学研究科附属フューチャーイノベーションセンター招へい教授)
本題に入る前に、栗本先生から、自分は”森林の技術者です”との自己紹介がありました。様々な技術の経歴(地元自治体の林務行政、森林&建設部門の技術士、そして現在森林組合勤務)や科学の経歴(大学で林学・社会学、人文科学研究所、そして現在阪大工学研究科招へい教授)、及び、高槻市緑地環境保全等審議会会長も務められております。
豊かな自然に恵まれた高槻市にお住まいの栗本先生は、大阪植物観察会などにも参加して楽しまれておられますが、本日は、午前では「自然と親しむ」というテーマでお話を聞かせていただき、午後からの講座では、屋外に出て先生のご案内で北摂の自然に触れました。
午前のお話は、「森林の現場で自然と親しむことを考えたい」ということです。
1.まずは感動と反応
2.物語を楽しむ (1)文化の物語から自然と親しむ (事例)椿は春の木
(2)科学の物語から自然と親しむ (事例)サクラの来た道
(3)自然を親しむ私の物語 (事例)野生のヒュウガミズキ
3.林業の将来 ・身近な山のお話
1.まずは感動
森林などの現場に行くと、様々な感動を受け、植物や生き物の在り方に共感し、彼らを守りたいという使命感が生まれ、それが保全や移植という行動に繋がっていくのですね。専門家やボランティアの皆さんが保全活動を一生懸命に行う一方では、キンランが奇麗だからと持って帰り、自宅の鉢に植える一般人も居られるようですが、キンランはその場所の土壌の菌から養分を貰って生きている菌従属植物なので、自宅では育てられないということも学びました。自然の中で楽しみましょう!
森林浴が健康に良い効果をもたらすことが実験で確かめられました。森林浴によりナチュラルキラー細胞が活性化され、免疫機能を高め、ストレスホルモンが減少し、がんに対する抵抗性まで高まるなんて驚きです!
2.物語を楽しむ
青森県の夏泊半島の野生ヤブツバキが、北限の椿ということで天然記念物に指定された時、民族学者の柳田国男は、神社などに伝わる伝説から、その椿は昔の人が持っていき、植えたものかも知れないということを指摘したそうです。科学的評価だけでなく、文化的な考察も必要であることを示す一例です。
写真左:気候変容が生物の多様性を生んできたものの、人間が原因の急激な変容(地球温暖化)にはついていけないそうです。
写真右:桜のふるさと(原産地)はヒマラヤ(ネパール/ヒマラヤザクラ)と言われており、日本列島が大陸と陸続きだった頃大陸や海から幾つかのルート(桜の来た道)で日本にやってきたようです。日本では桜は春に咲くものと思われていますが、大陸の比較的温暖な地域には秋に咲くものもあるそうです。
3.林業の将来
現在の日本の林業は、丹後などの天然材を中心とした伐採的林業や、吉野などの植栽~保育~伐採という育成的林業があるそうですが、経営的には厳しいようです。
植物は土壌菌と共生しているものが多く、これからはこれを知らないとやっていけないと先生は強調されました。
また、あまり聞きなじみのないネイチャーポジティブ(自然再興)宣言では、2030年までに陸と海の30%以上を健全な生態系として効果的に保全しようという国際目標(短期目標)が示されています。その為には、山の保全や無農薬農法などが必須になるので、例えば、大規模農法で100万円の利益を得たら、その内の20万円をそれらの活動や農業に補助することも必要ではないかと先生は提言されています。
以上、普段なかなか聞くことのできない興味深いお話や、自然と文化の関わりなど受講生の皆さんは熱心に聞かれていました。恐らく、自然に対する関心が今まで以上に高まったのではないでしょうか?知らない用語や意外なお話などもっと深く知りたいと思われた方も少なくないと思います。先生が大学で講義されていると、学生たちはスマホで検索・確認することがあるそうで、そうしたことはとても良いことだとおっしゃいました。私たちも見習いたいですね!
栗本先生、素晴らしい講義有難う御座いました。
午後からのフィールドワークも栗本先生の案内で楽しみました。別のブログで報告致します。