旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

欲につけこまれないように。

2007年05月22日 | 旅のトラブル事例
長期間の海外ツーリング中、エンジンオイルのチェックを疎かにしたばかりにイランでエンジンを破損した私は、それでも何とかイスタンブールまで辿り着き、そこで腰を据えてエンジンを修理する事にしたのです。部品を日本に注文して送ってもらい、設備のあるバイクショップを紹介してもらって、修理が済むまでしばらくの間、イスタンブールに滞在する事になりました。

イスタンブールは良い意味でも悪い意味でも面白い町でしたが、何日も過ごしていると、ただ単にそこに存在しているだけになり、旅人などというものはこういう場面では日々、残金が減っていくのを睨みながら消費のみを行う存在に成り下がります。

そんなある日、日本人向けの絨毯屋に行きました。客引きに強引に引き込まれたに近い状態だったのですが、店内にエアコンが効いている事と、店内で無料で振る舞われるコーラやチャイが魅力であったのも否定できない事実です。

他でも何度も聞いた事のある"この細かい模様は少女の細い指でないと織れない"などの口上がそれなりに流暢な日本語で離されるのをを聞いたり、絨毯にライターの火を近づけて"ウールだから燃えない"という実演を見たりしながら、涼しい中でコーラを飲みながら、もともと絨毯を買う金など持っていない私の興味の対象はそこに居る他の人々の反応でした。とはいえ、絨毯自体は高価なものなので、決まり文句の口上が終わっても、誰も絨毯を買おうとするわけでもありません。日本人にとっての興味は玄関マットのような小さな絨毯で、彼らが売りたいと考えているような大きく高価な絨毯にはないようです。

ところが状況が一変する出来事が起こったのです。次に出てきた口上は"この絨毯はここでは10万で買えるけれども日本で売れば30万以上にはなりますよ"という意味の説明。ちなみに値段の事は正確な話ではありません。この言葉が出た瞬間に今まで小さな絨毯にしか興味を示していなかった人々の視線が一斉に10万の絨毯へと移っていきました。

わたしはその辺りで店を出てしまったので、その後、大きな絨毯が売れたのかどうかは未確認ですが、この"日本で売れば"の口上、他の国でもよく耳にする売り方です。タイでは宝石や木彫りを同じような売り込みで売られていたのを目にしましたし、その他の国でもよく聞くフレーズです。売る側は買う側の欲張った心情をよく知っていて、上手く利用するものだなとその度に感心させられます。

たとえ日本で3倍で売れるとしても、日本に持って帰って、どうやって流通ルートに乗せるのかは教えてくれませんので、こういった口上を"ナルホド"と思った時はどうやって日本で売るかを考えついてから行動に移しましょうね。


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