旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

感覚

2007年05月21日 | 旅行一般
人間にはスゴい能力を持っている人がたくさんいます。例えば日本酒やワインの聞き酒をする人。こういう人達が"良い"とか"悪い"を判断する事を言語や数値で完全に解明したり、伝達したりする事は不可能なのではないでしょうか。他にも綿花の品質を判定する人、あるいはコンマ数ミリの研削作業を熟す人などなど、様々な能力がある人がいますね。そして、こういった能力が先天的なものだけでなく、訓練によって身につけた人がいるという事。人間はものごとを知覚する際には感触とか味覚などの感覚を脳に送り込んでいるのであって、言葉や数字を頭に送り込んでいるのではないのでしょう。

私は過去、バイクショップでメカニックをやっていた事があります。ショップのメカニック向けに各メーカーからかなり詳細なメンテナンスマニュアルが販売されていて、作業を行う際にはチェックするのです。知識としては、例えばエンジンをオーバーホールするとしたらマニュアルにはエンジンの車体からの脱着方法、電気系統との切り離し方法を始めとしてかなり親切に解説がなされています。

それでは充分な設備とメンテナンスマニュアルがあれば誰でも例えばエンジンを分解して組み立てる事ができるかというとどうでしょうか。できる人もいるでしょうが、多くの場合は経験が無い人には難しいのではないでしょうか。この経験という部分が"知識"ではなくて感覚の部分だと思うのです。そして、人間のコミュニケーション手段というのはこういった事を伝達できるほどには完成されていないという事でしょう。

雑誌やテレビやインターネットで仕入れた文字や数値の知識だけで、理解できたと思い込む事はマニュアルを手に入れただけで自分が車やバイクを分解、組み立できると思うのと同じような次元ではないでしょうか。そこに秘められた言葉では表現できない事を感じてみる事も大切だと思います。

様々な国を訪れ、様々な人と実際に会うという事を重ねていく事が与えてくれる感覚が今まで自分が入力してきた情報と異っている事を発見するのもまた旅の楽しみです。


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