旅のウンチク

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スーパーカブで旅するタイ北部エピローグ=6年目のまとめ

2013年05月11日 | 旅の風景
 "スーパーカブで旅するタイ北部"はここしばらく私が同行する唯一の企画となっています。

 相当にアクが強い性格の企画のため不必要に不安を感じる方もおられるようですし、逆に参加してから後悔されたり、怒りを覚えられる方もおられるようです。

 今回ご参加いただいたみなさんは上手く適応して楽しんでおられたようでしたが、それでも出発前に心配されていた事と実際に現地へ行ってから苦労された部分には違いがあったのではないでしょうか。

 2007年の開始以来、決して爆発的な人気を得ることはなく、かといって消滅する事もなく続いてきたこの企画。今後の参加を検討される方のためにも、もう少し考え方をまとめて今回のレポートの締めくくりとしたいと思います。

 この企画においては、ほとんどの移動をスーパーカブ(現地ではドリームとかウエーブという名前があります)を使用します。E&Gの他の企画はほとんどがオフロードツアーのため、ちゃんとしたライディングウェアを着ていただくよう要求していますが、タイのツアーに関してはそういう事もありません。私も半袖にスニーカー。日によっては短パンで、グローブもしていませんから、この点では教習所的にはダメな装備。ヘルメットだって現地で借りた物を使っています。

 このツアーのイメージするものは、”玄関からツッカケ履いて散歩に出かけたついでにタイまで来ました。”という事だと考えていただければ伝わりやすいかもしれません。コンビニだと思ったらチェンマイだったとか、そんな感じです。

 出発前にはスーパーカブで旅する事から”原付日本一周”的な過酷さを予想して、その点の不安を訴えられる方が圧倒的に多いのですが、実際にはスーパーカブで走る事自体で頑張らないといけないようなルート設定はしていません。

 たとえば、チェンマイからチェンコンへの移動の日を例に挙げると、私が出発時刻や昼食のタイミング、走行ペースなどを配分する際に気にかけているのはチェンコンまで走れるかどうかではなくて、日が暮れていく時間帯にメコン川を眺めながらビールを飲めるタイミングで皆がシャワーを済ませていられるように気にかけているわけで、それが余裕でできる距離感でルートを決定しています。バイクで走る事はそっちのけで、夕暮れのメコンを楽しめる事が最優先=ビールが最優先なわけです。

 貴方がたとえ初心者であっても、ペーパードライバーであっても、バイクを運転するという点に関しては全く心配はいりません。なにせ乗るのはスーパーカブですから。

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 ついでに少し広告。
 実はバイクの免許が無い方も人数限定ですが参加できます。”二人乗り”料金があまり一人乗りと変わらないという指摘をされることがありますが、この二人乗りは、私を含めて、スタッフのバイクへの二人乗りという含みがあるのです。つまり1人から2人は、スタッフの後部座席で同行することが可能。この場合はもちろん免許も要りません。過去、お一人だけタンデム旅行を楽しまれた方がおられました。
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 実際のところは多くの方が苦労されるのは、バイクに乗っているとき以外の時間だと思います。

 たとえば宿泊先はバックパッカーの経験がある人でなければ驚くようなところですし、食事もローカルのレストランや屋台。なおかつ添乗員の私は皆さんに”同じもの”と言わせないために店に入ったらとっとと自分だけ注文して、戸惑っている皆さんをニタニタ眺めて楽しんでいるような毎日。出てくる水や食べ物も得体が知れず、”水割りの氷でコレラに感染した”なんて昔の都市伝説みたいな話を信じていると、何も食べられないかもしれません。

 部屋確保の状況でたまたま1人部屋になったからとって追加料金をいただくこともありませんが、逆に私が”このベッドなら充分大きいや”と思えば男性二人でダブルベッド1つの部屋を使っていただくこともあります。この企画で初めて会った人と相部屋になる事は普通と思ってください。もちろん男女は分けますが。

 そう。この企画のメインテーマは戸惑いとか、迷いとか、驚きとか、失敗とか、そういう事なのです。みんな忘れてしまっているかもしれませんが、本当は旅の楽しみはこういう所にあるのだと思うのです。

 だから、宿がボロい事は別にコストダウンしているのではなくて、そういう所を努力して探しているわけです。過去ご参加いただいた方で、”追加料金を払ったらもう少し宿泊のランクを上げられますか”とのご相談を受けたことがありますが、実はこれは反対で、追加料金を払っていただいたら、頑張ってもっとボロいところを探しましょうというのがこのツアーの趣旨に沿った考え方です。

 ジェットコースターに乗って、追加料金を払うからスピードを落としてくれと頼む人はいないでしょう?追加料金を払ったら、スピードアップしてもらわないと割に合わないではないですか。それと同じです。

 いかにして皆さんに快適に過ごさせないかの工夫をするのがこの企画における私の役割の一つです。

 企画を金額の面からだけとらえれば、1週間のバイクツアーで159,000円というのは格安で、添乗員が同行なので安心と思って参加されるとしたら、それは現地で多大な苦労をするかもしれません。なぜならばこれはバイクツアーではありませんし、添乗員はあくまで皆さんを戸惑わせたり、驚かせたり、失敗させようと日夜努力しているわけです。安宿というのがビジネスホテルレベルしかイメージできなかったら現地で泊まるのは掘立小屋にしか見えないと思います。すると結論、安かろう悪かろうのツアーだったという評価にならざるを得ないかもしれませんね。

 自分が現地で戸惑って、迷って、驚いて、失敗して、人に助けてもらって、その結果感じたことや見つけた事がその旅の一番の思い出になるという事を皆さんにこの旅を通して感じていただければと思っています。そして、皆さんの失敗が”致命的な”ものにならない程度に配慮しながら私は”どう困らせてやろうか”、”どう驚かせてやろうか”と考えながら共に旅を楽しんでいるのがこの企画での私の役割です。

 また次回、多くの挑戦者が現れることを楽しみにしています。免許が無い人も二人乗りで行きましょ。

 それでは最後に。今回2013年4月27日出発のスーパーカブで旅するタイ北部の総括を一言で。
"飲み過ぎました”


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