旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

記録する事、忘れる事

2013年12月10日 | ライフスタイル
 しばらく前の事になりますが、私は仕事上で扱う書類やその他の情報の整理に強く行き詰まりを感じた事があります。日々取り扱う予約内容への対応やこれから先のプラン、見積もり、新しいアイデア、仕入データなど、あらゆる情報が上手く利用できなくなっている事に気がついたわけです。予約や見積りは期限が迫ってくるのでこなせるとしても、ふと思いついたアイデアなどはどんどん埋もれて忘れ去れていってしまいます。これらを何とか防げないかとPDAを使ってみたり、システム手帳に何ページもの分類項目を作成して管理してみたり、いろいろな方法を試してみたのですが中々上手くいきません。分類をまたがってしまう項目が発生したり、それよりも、今ふと思いついた事が手帳に書くほどのアイデアなのかどうかで迷ってしまい、迷っているうちに忘れてしまう(笑)なんて事まで起こってきました。

 そんな頃に見つけた”分類せず、何でも書いておく”というアイデアは私にはとても大きな変革をもたらしました。今記録を見てみると”何でもノート”のVol1は2006年なので、この頃出会ったアイデアのようです。分類したり、選別するのは後にして、とにかく思いついた事や見聞きした事をどんどん書き込んで行く手帳やノートを作るという方法で、昔から様々な人が提唱していた事をようやく知ることができました。
 
 今ではお客様からの問い合わせ内容、見積もりの計算の元になる金額の調査結果、ふと思いついた旅の企画(実現不可能なものも含む)、インターネットで見つけた料理のレシピのプリントアウト、スーパーで買い物したレシート、日記、後でインターネットで調べようと思った花の名前、旅行中の出納帳、現地で教えてもらった言葉などなど、何でも1冊の小さなノートに書き込んだり、貼ったりするようになりました。もちろんノートの中は分類されていないごちゃごちゃ状態ですが、いつ頃の事かは以外と思いだせるものなので日付さえ書いておけばそれなりに役に立ちます。それから、”書く”という行為は記憶を定着させる働きを強く持つようで、例えば外国の屋台で教えてもらった料理の名前などは手帳に書いて、その後何度も見直すというより、書いた事で覚えておける事も多いのです。受験勉強の時にノートにどんどん書いて覚えた事と同じなのでしょう。

 反面、書いたことは覚えてしまうという点で少し注意が必要なことにこの方法をとりれてしばらくして気がつきました。以前、日記について触れたことがありますが、私は日記はその日には書かないようにしています。その日はまだ出来事に対する臨場感がありすぎて、楽しかったことを覚えていると同時に嫌なことも良く覚えています。嫌な気持ちを記録してしまうと、後で読み返したときに嫌な気持ちの再体験をしてしまいます。1晩眠れば忘れてしまう程度の嫌な気分をいつまでも反芻するのはプラスにはならないと思うので、そういう事は忘れてから日記を書くために朝になってから前日の日記をつけるようにしたわけです。

 何でもノートに書き留めるという習慣を身に着けていくなかで気がついたのは人にとって"忘れる"という機能はとても重要だという事でもあります。
 たとえば、親しい間柄の人との会話で何気なく投げかけられた言葉1つがとても引っかかったような場合、その事をいつまでも覚えていて良い結果を生んだような話は聞いたことがありません。とても乱暴な分類にはなりますが、自分が嫌な気分になった事はほぼ全て忘れた方が良い結果を生むものだと思います。

ただし、忘れることは記憶する事よりも難しいものです。忘れないためには何かに記録しておけば良いわけですが、忘れるためにできることはあまりないのです。


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