選択肢は自分のキャパシティが広げるもの。

　A地点からB地点への移動という作業ではなく旅をする事を考えた場合には、移動方法を自分のイメージする旅にフィットさせる事は重要な検討要素となると思います。
　
　たとえばサンフランシスコからロサンゼルスへ移動するだけであれば国内線航空便で移動するのが”効率の良い”移動となるでしょうが、サンフランシスコからロサンゼルスへ旅をするとなると、航空便での移動はもっとも味気ない旅となりそうです。レンタカーで移動するなり、バイクで移動するなり、グレイハウンドバスで移動するなり、自転車ツーリングなり、あるいは危険を冒してヒッチハイクするとか、徒歩移動など、様々な選択肢があります。自分の旅にフィットする方法を考える事から旅の日数も決まってきますし、旅に適したシーズンすら変わってくるという面もあります。

　一番良い手段というのはその旅で目指すイメージによって変わってきます。移動作業でない限り、時間とお金が節約できる手段が一番良いとは限りませんし、快適で楽な手段が一番良いとも限りません。

　旅する方法の選択肢を多く持っていればいろいろなバリエーションの旅を楽しむことができる事になるわけですが、選択肢を自由に選ぶためには自分の能力やキャパシティが大きく関わってきます。

　単純な話、バイクの運転免許が無ければその時点でバイクという選択肢を選択する自由は喪失しますし、車も同じ。自転車や徒歩旅行は自分の体力と旅行日数が許す範囲かどうかによって選択肢から失われる事もあります。あるいは言葉ができないという理由でグレイハウンドバスの切符が買えないという理由で選択肢から外れる場合もあるでしょう。自分の能力やキャパシティが伴わなければ、様々な選択肢から選択する自由を得ることはできません。

　実際、旅の計画の相談を受けている際にこうやって選択肢がどんどん狭まっていくケースは結構あります。以前話した人は、外国の食べ物がどうしても口に合わなくて二度と海外旅行はイヤだという極端な人もいました。日本では比較的多くの種類の料理を口にする機会がありますし、口にできないほどの料理しか存在しない国なんてそんなに多くはないと思うので、これは食習慣が違う所で食事をする事が自分のキャパシティを超えてしまうという事なのだと想像できます。

　自分の現在の能力やキャパシティに見合った方法にこだわって消去法で旅の手段を絞り込んでしまう事は結局、自分のイメージする旅を実現する事を諦めてしまう事になるわけです。

　もちろん、自分なりの妥協点に着地しているのであればそれで良いのですが、もう少し見方を変えて、旅するという目的に向けて自分の能力やキャパシティを広げる努力をしてみても良いのではないかと思います。

　以前、”スーパーカブで旅するタイ北部”に参加するために二輪免許を取ってきた方がおられました。私の友人には、バックパッカーとして旅していた時に見かけたツーリングライダーをきっかけに、”自分も次はアレだ”と二輪免許を取得した事をきっかけに、いろいろな国をバイクで旅した人もいます。旅に向けて自分のキャパシティを広げた事がその後の選択肢を大きく広げる事につながったのだと思います。

　旅するという目標に向けて、何か能力を高める努力をする事は自分の自由度を高めて旅を楽しむ上で役に立つばかりでなく、その後の旅に新たなる選択肢を与えてくれますし、自分のスキルを高めるという意味ではその後の人生にも意味を持ってくることだと思うのです。

　休暇を取って、旅に出て、帰ってきたら周りの人から見て少し能力アップしていたら、次の休暇が取りやすくなる.....かもしれません。