旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

日常という名の非日常への帰還

2017年02月10日 | 旅行一般
 昨日触れたように1998年10月、私は当初の予定より少し早めに旅を切り上げて帰国することにしました。理由はいろいろあります。金銭的な理由もその一つですが、実はこれはそれほど深刻なものではなく、旅に出る前に準備した資金はまだ数十万円残っていたので”なんとなく心細くなってきた”程度。一番の理由は旅している事があまりに日常となってしまい、ある意味”飽きた”のだと思います。

 毎日バイクで移動して、宿を探し、食事を取るという繰り返しが日常化してしまって、古いビデオテープを延々とループさせて見続けているような気分なのです。

 食事についても、宿泊についてもとても許容範囲の広い私にとってはいつも多くの選択肢がありますから、そこで苦労を味わうこともありません。適当にその日に手に入る物で手を打って、あとは順応して日々を過ごしていくだけの繰り返しなのです。

 いつの間にか毎日が”想定の範囲内”に収まってしまって、ただただダラダラと消化しているだけの日々と感じるようになりました。だから予定を繰り上げて終止符を打つことになんのためらいも感じることはありませんでした。

 自分にとって、考えられる一番の”想定外”の出来事は6ヶ月前に投げ出してきた日本での生活を取り戻す事。日本での生活へ戻ることの不明確さを考えると、この後旅を続けてドーバー海峡を再び渡ってスペインやポルトガルを旅する事はずっと明瞭に予測できる気がしたのです。それなら今は帰国して学校に復学し、そして仕事も探そうと思えたのでした。

 この時の旅を締めくくった気持ちは今になっても私の旅に対する感じ方に大いに影響をしています。そして当然、旅の企画や手配にも大いに影響してきます。”想定の範囲内”を超えてこそ旅は自分の中に深く刻まれて行くものだというのが私の実感。

 もしも完璧な情報収集や準備というのが可能で、それだけの準備をしたのであればもはや旅に出る必要なんて無いと思うのです。メの前に立ちはだかる様々な想定外の出来事こそが旅の魅力。たとえば想定外の出来事に破れて旅の目的を全て果たすことができなくなったとしても、全てが予定通り運んだ旅なんかよりずっと自分の記憶に残り、自分に影響を与える体験ができるものです。

 だからスーパーカブで旅するタイ北部タイ&ラオス路線バスの旅カレン族の村とエレファントキャンプ滞在の旅では皆さんの”想定の範囲内”を超えるようにガイドはしますが、皆さんが快適に過ごせるように”配慮”した結果皆さんの体験を薄めるようなことが無いように”配慮”しています。

 旅は仕事とは違うので、予定通りいかなくても、目標が達成できなくても世の中には何のダメージも与えません。誰かに命令されたわけでもないのに目標を立て、計画を立て、準備し、行動を起こす。その結果、立ちはだかる様々な困難に戸惑い、乗り越えた自分に満足を覚え、乗り越えられなかった自分に挫折感を感じ、そして思いもよらなかった人の優しさを実感する、そんな体験を積み重ねて行くのが旅の魅力だと思うのです。

□業務連絡□
 第3回新装/旅行好きの夕べ募集中
 美味しい食事を楽しみながら他の旅人との交流と旅の情報交換をしませんか。次の旅に思いを馳せようではありませんか。
 日時 3月10日(金)午後19時~21時30分
 場所 東京 四谷 サロンガイヤール
 会費 3,500円
 詳しくは下記ページから。
http://www.bekkoame.ne.jp/i/eandg/event/yube.html


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