旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

黄色と黒の配線を引っこ抜け!=後編

2017年06月08日 | 旅の風景
 寒さに震え、”今日中にはつかないだろうな”という絶望感が頭をよぎる中必死にネルソンへ向かう我々の前に対向車のヘッドライトが見えました。ダグが手を振って車を停めます。停まった車はなんと、我々のツアーのサポートカーのシボレー サバーバン。当然ホテルについているはずの私達がなかなか現れないのでデイブの指示でルートを逆走しながら探しに来てくれたのでした。

 後部に引かれたトレーラーにバイクを乗せて、暖かい車内に乗り込んだ私は安心感に包まれてそのまま眠ってしまいました。ネルソンに到着するとホテルのレストランで既に盛り上がっている皆さんの姿。

 私はその横を通り抜けて部屋で温かいシャワーを浴びます。レストランへ行くともうラストオーダーは終わっていましたがデイブがステーキを注文しておいてくれたのでした。

いつもなら食事してビールを飲んで楽しくやるのがツアーの夜ですが、今日はそうも行きません。幸いお客様方はもう充分盛り上がっているようなので我々ガイドは中座させてもらって不調だった2台にとりつきます。

 ヘッドライトを取り外し、タンクやシートも取り外し、ワイヤーハーネスをバイクから取り外した私たちはそれを持って部屋へ戻ります。バスルームのヘアドライヤーを使って慎重にワイヤーハーネスとコネクター類を一つ一つ乾かしていきます。1時間半ほどかかって全部乾いたところで解散。もう日付は翌日になってしまっているので明日少し早起きして組み付けてみる事にしたのでした。

 翌朝早めに起き出してバイクのところへ行ってみると既にデイブが1人でワイヤーハーネスを組み付けていました。二人でエンジンをかけてみるとあっけなく始動。まあ、どこかわからないけれどハーネスのコネクターがリークしていたことだけがわかりました。昨日の経験があるので何度もスロットルを開け閉めしてみたり、駐車場内を試乗してみたりしてみましたが異常はなさそうです。

 朝食を終えてクートニー湖を渡るフェリーの乗り場へ向かいます。ここは舗装路。天候は回復して日が射して気持ち良い日となりました。
 
 昨日サポートカーで私達を収容してくれたバリーが今日は昨日最後まで不調だったバイクでバックアップライダーを努めます。添乗員の私は自分のバイクを取り戻し舗装路区間は集団の中盤あたりを走ります。程なくフェリー乗り場の入り口へ。最後尾のお客様は後続車にフェリー乗り場への入り口を指示するためにバイクを右の路肩に寄せて止まります。私たちはそのままフェリー乗り場の駐車場へ。

 ところがバリーが一向に現れません。フェリー乗り場の入り口にバイクを停めたお客様と役割を交代して私が後続を待ちます。

 ようやく現れたバリーのDR350とサポートカー。でもバイクは調子悪そうではありません。

 駐車場に入ったバリーに話を聞いて、今回の顛末が全て判明しました。

 どうやら、朝メインハーネスを車両に組み付けた際にデイブは2台のハーネスを取り違えた模様。メインスイッチとタンクのキーの組み合わせが入れ替わっていました。それと同時にバリーが乗ったバイクのキルスイッチのコネクターをつなぎ忘れていたそうです。

 走りはじめて、ハンドルバーのところにつながっていないコネクターがあることに気づいたバリーがそのコネクターを繋いだ途端にエンジンが停まってかからなくなったため遅れたとの事。コネクターを抜いてキルスイッチをハーネスから除外すれば始動して普通に走れたというわけです。

 我々は新しい経験と知識を手に入れました。

 それ以降も雨が降ったときや水没した時にDR350が始動不能になるたびに”黄色/黒の配線を引っこ抜け!”とデイブと私は合言葉にしていたものです、これはツアー車両がDRZ400に置き換わるまで役に立った知識でありました。

思えば、この時の出来事が私とデイブの信頼関係や友情をとても強くしたと思います。引退した今でもたまに”どうしてる?”と連絡をくれるデイブ。またいつか一緒に面白い仕事ができたらなと時々思い出すのです。

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