かわいい子には旅をさせよ

　旅に出て見えるようになる事の一つに自分の国や自分を取り巻く社会についての事柄があります。

　日々当たり前のように享受している便利な生活が如何にありがたいかを知る機会となる場合もあるでしょうし、今まで気づかなかった日本の抱える問題に気づかされる事もあると思います。日本という大きな視点だけでなく、自分自身の日常のライフスタイルを一歩離れて見直す良い機会ともなります。

　日々の生活は今まで築いてきた人間関係に縛られている面もあれば、それに守られている面もあり、そこでの基準に従いながら生活しているわけですが、海外を旅している間はそういう人間関係の面倒な点も便利な点も、双方を一時的に喪失しているわけですから自分の視点が曇る要因がとても少なくて済みます。

海外に限らず旅している時に感じる解放感はこういう普段のしがらみからの解放感なのだと思います。同時に旅している時に感じる漠然とした不安感は普段周囲を取り巻いてくれている人間関係の保護を失っていることから来るのかもしれませんね。

　旅先では日常生活のように妙な見栄をはったり、背伸びをしたりする必要もありません。国や社会を見直す機会であるだけでなく、等身大の自分を見直す良い機会ともなります。一時期流行った”自分探しの旅”という考え方とは少し違うのですが、自分に欠けている事や自分の良い点、悪い点、いろいろな事が、やはり普段のしがらみを離れた場所で鮮明に見えてくる面もあります。

　守られることもなく、見栄を張る必要もない世界で自分の行動は単純明快な結果をもたらします。そんな事から人は多くの事を学べるのだと思います。

　若いときに自分の欠けている点や悪い点に気づいておけばそれを補う事や学ぶ事で巻き返しを図ることができます。だからこそ、できるだけ若いときに旅する機会を持つ事はその後の人生に必ず大きな財産として残るものだと思います。

　昔の人は”可愛い子には旅をさせよ”と言いましたがまさにその通りだと思います。

　今の時代、特に自分を取り巻くリアルな社会だけでなく、SNSなどサイバーな空間ですら何らかなしがらみに縛られてしまう社会に私たちは生きています。だからこそ、時にはそういうこと全てから解き放たれた自由な時間を持ち、その時間の中で自分や社会を見つめなおしてみる機会を持って、広い視野を得る事がとても重要なのではないでしょうか。