旅のウンチク

旅行会社の人間が描く、旅するうえでの役に立つ知識や役に立たない知識など。

旅先で感じる開放感

2007年12月06日 | 旅行一般
海外を旅する事に限らず、国内旅行でも、海外旅行でも、出かけてみて不思議な開放感を味わった方は多くおられるのではないでしょうか。

この開放感は、日頃の仕事や雑事から開放される開放感だと思っていたのですが、それならただ単に休暇をとって家でゆっくりしていても味わえるはずですね。旅行に出かけた時に感じる開放感は、それとは少し違うとは感じないでしょうか。

前回、旅に出ると日頃、自分をとりまく環境を失う事によって保護を失って、素で勝負するしかなくなるという内容の記事を書きましたが、あの記事を書きながら、旅で感じる開放感はこのあたりから発生してくるものではないかと思い立った次第です。

日常の我々の生活は、会社、友人、親族、その他、様々な関係とのバランスの上に立って成り立っています。そのバランスを維持するために懸命に自分を演じている部分があります。時々アルコールが入るといきなり人が変わるような人がいますが、ああいうのは、どれほどその人が普段、自分を演じているかという事の現れかもしれません。そういうバランスの上に立っているからこそ守られているという面があると同時に、そのバランスを維持するために、周囲が期待する通りの自分を演じ続けなければならないという、面も存在するわけです。

友達に嫌われないために、懸命にメールの返事を送っている人なんかは、このバランスを過剰に意識しているとも言えますね。若い人達が旅に出なくなったと言われていますが、若い人たちはこういう周囲とのバランスを過剰に意識するよう強制されているようにも見えます。バランスの中にいる安心感に慣れているから、そのバランスから出て行く人間が理解できないし、出ていって失敗した人間をコテンパンに批判して、バランスの中に永住する自分が正しい事を確認しているようにも見えます。

とにかく、旅に出ると、一時的にそういう関係を全て失うわけですから、自分を演じる必要がなくなります。また、普段とは全く違う自分を演じる事も可能となります。

どちらかというと、旅行商品は、普段とは違う自分を演じる事に重点を置いた商品が多いとも言えます。日常味わう事ができないような贅沢を味わえるとか、そういう歌い文句の物が多いのではないでしょうか。

これはこれで、一つの旅の楽しみ方だと思います。演じるべき自分が決められているだけに、こちらは簡単に楽しむ事ができます。

ただ、やはり演じる必要があるわけで、そんな事よりシンプルに自分のままで過ごしてみる、素のままの自分に向きあってみるのも大いなる開放感を味わう事に繋がるものです。そういう風に過ごすには格安パッケージなどよりもバックパッカー的な旅の方が向いていると思います。

ただ、前回も書いたように、素のままの自分と向きあうのはかなりの勇気を必要とする事もまた事実であります。取り巻く社会とのバランスばかり考えている人間には怖くてできない事かもしれませんが、実際には日頃の面倒な人間関係を一度ストップしてみる開放の時でもあるのですよ。


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