制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

「社会参加カード(仮称)」のあり方

2009年09月21日 11時02分43秒 | 自立支援法・障害
自立支援法の「廃止」に続き、障害者手帳を見直して「社会参加カード(仮称)」とする方針が出されている。
現在、身体障害者には「身体障害者手帳」、知的障害者には「療育手帳」、精神障害者には「精神障害者保健福祉手帳」が交付されているが、これらの「手帳」が「カード」化されることになる。

現在の障害者手帳の制度には、

・手帳を持つことに抵抗感がある、持つことで得られる利便が魅力的でないなどの理由から、申請していない者も多く、「障害者=手帳の所持者」でない
・手帳を交付した後の管理が十分になされていない(手続きがなされないとわからない)、住民基本台帳と連動していないため、市町村が管理している交付データと実際が一致していない
・ゆえに、市町村は、地域で暮らす障害者の実数を把握できない

などの課題がある。
紙の手帳をカード化するだけでは何も変わらない。かといって、「障害者=手帳の所持者=サービスの利用者」とし、市町村が交付データを管理し、自立支援法のデータと連動させるような制度とするのは、「改正」よりも「改悪」だろう。

自立支援法の改正か、新法・新制度か

2009年09月20日 17時40分40秒 | 自立支援法・障害
新聞記事では、自立支援法を「廃止」し「新法」を、とされているが、現行法に手を入れるだけでも十分だろう。
例えば、「社会福祉法」は「社会福祉事業法」を改正・改題した法律である。


社会福祉の増進のための社会福祉事業法等の一部を改正する等の法律

(社会福祉事業法の一部改正)
第一条 社会福祉事業法(昭和二十六年法律第四十五号)の一部を次のように改正する。
 題名を次のように改める。

   社会福祉法


まったく新しい法律に変えると、市町村やサービス事業者の業務設計からやり直すことになる。その結果として、サービスの申請や利用の方法が変わったり、自己負担や上限の考え方が変わったりする。何よりも、新法を書き上げるまでに時間がかかる。
現行法を改正して「応益負担」にするなど、できることから着手しておき、その間に本質的な議論をすればよいのでは、とも考えられるが、いかがだろうか。

支給限度額のあり方を考える

2009年09月20日 16時52分10秒 | 自立支援法・障害
自立支援法の改正にあたって、利用の上限をどうするかについては十分な議論がなされていない。障害者が「自立」するためには上限を取り払うべきとの考え方があるのに対して、現実的な問題として、(1)「青天井」にした時の財源をどのように確保するのか、(2)地域の社会資源が限られているなかで上限を取り払うと、利用者間の格差が大きくなってしまうのではないか(24時間・365日のサービスが利用できる人も、サービスを利用するために空きを待っている人もいる)といった問題に取り組まなければならないからである。

上限は、障害者自立支援法の第二十二条(支給要否決定等)の4、

4 市町村は、支給決定を行う場合には、障害福祉サービスの種類ごとに月を単位として厚生労働省令で定める期間において介護給付費等を支給する障害福祉サービスの量(以下「支給量」という。)を定めなければならない。

が根拠となっている。残念ながら、「改正法案」には、この条文の改正は盛り込まれていない。

実質的には、応能負担。条文を実態に合わせればよい?

2009年09月20日 16時34分13秒 | 自立支援法・障害
障害者自立支援法における「応益負担」の根拠は、第二十九条(介護給付費又は訓練等給付費)、第三十条(特例介護給付費又は特例訓練等給付費)にある。
具体的には、

第二十九条
3  介護給付費又は訓練等給付費の額は、障害福祉サービスの種類ごとに指定障害福祉サービス等に通常要する費用(特定費用を除く。)につき、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは、当該現に指定障害福祉サービス等に要した費用の額)の百分の九十に相当する額とする。

の「百分の九十に相当する額」しか給付しない、つまり、残りの1割はサービスを利用する本人が負担するとの条文である。
これが、廃案になった「改正法案」では、

第二十九条
介護給付費又は訓練等給付費の額は、一月につき、第一号に掲げる額から第二号に掲げる額を控除して得た額とする。
一 同一の月に受けた指定障害福祉サービス等について、障害福祉サービスの種類ごとに指定障害福祉サービス等に通常要する費用(特定費用を除く。)につき、厚生労働大臣が定める基準により算定した費用の額(その額が現に当該指定障害福祉サービス等に要した費用(特定費用を除く。)の額を超えるときは、当該現に指定障害福祉サービス等に要した費用の額)を合計した額
二 当該支給決定障害者等の家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額(当該政令で定める額が前号に掲げる額の百分の十に相当する額を超えるときは、当該相当する額)

となっている。利用したサービスの合計額から「家計の負担能力その他の事情をしん酌して政令で定める額=応能負担」と「百分の十に相当する額=応益負担」の低い方の額を引いた額を給付する、つまりサービスを利用する本人は、「応益負担額と利用料の1割の低い方の額」となる。「応益負担」を「応能負担」に変えるだけなら、廃案となった改正法案をそのまま通せばよい(準備は整っている)。

厚生労働省は、「応益負担」の運用に近づけているので、根拠となる条文に手を入れて実際に合わせた、と言うかもしれない。

障害者自立支援法を「廃止」する?

2009年09月20日 16時26分15秒 | 自立支援法・障害
障害者自立支援法を「廃止」して、利用料の1割を負担する「応益負担」から、所得に応じた「応能負担」に変更するとの方針が打ち出された。
政権交代に伴う大きな前進と捉えることもできるが、実際には、国会解散により廃案となった「障害者自立支援法等の一部を改正する法律案(平成21年3月31日提出)」の見直し・再提出となるかもしれない。

厚生労働省が今国会に提出した法律案について
第171回国会(常会)提出法律案
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/soumu/houritu/171.html

障害者自立支援法を本当に「廃止」するとサービスを利用できなくなってしまうので、実際には、現行法を生かして改題する、改正に伴う急変・混乱を避けるための移行措置をしっかり整えるという意味だと理解したい。