制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

医療保険制度の地域単位での再編に向けて

2009年09月29日 20時19分45秒 | 高齢者医療・介護
後期高齢者医療制度を「廃止」すると、被保険者を国民健康保険の被保険者や健保組合などの被扶養者に戻すことになる。
現在、国民健康保険(市町村国保)は、ただでさえ、財政状況が危機的な状況にある。後期高齢者医療制度により、75歳以上の被保険者を「切り離した」にも関わらずである。再び被保険者に戻すとなると、財政状況はさらに悲惨なことになる。
1人あたりの医療費は、高齢になればなるほど高額になる。これは仕方ない。「保険料を上回る医療費を使う人たち(保険制度におけるハイリスク者)」が増えるので、「下回る人たち(単純化すると、現役世代)」が支えるピラミッド構造(三角形)が維持できなくなる。

「高齢者の医療を確保する法律(高齢者医療確保法)」で市町村国保の財政を安定させるための基金などを定め、実質的な広域化・リスクの分散化を進めているが、「ハイリスク者」が増え、ピラミッド構造が崩れているので、広域化によりリスク耐性を高めたとしても「社会保険」として成り立たなくなる。

現実的な解決策として、まず、市町村を単位とする国民健康保険制度の広域化(都道府県を単位とする広域組合)を進める。次に、現役世代の比率が高い健保組合などを都道府県を単位として再編する。最後に、この2つの広域保険者を統合してピラミッド構造に戻す、ことになるだろう。

高齢者医療確保法の構想の中には、この「地域医療保険制度のあるべき姿」の道筋が描かれている。
具体的には、同時に改正された健康保険法・附則の

(地域型健康保険組合)
第三条の二 第二十三条第三項の合併により設立された健康保険組合又は合併後存続する健康保険組合のうち次の要件のいずれにも該当する合併に係るもの(以下この条において「地域型健康保険組合」という。)は、当該合併が行われた日の属する年度及びこれに続く五箇年度に限り、第百六十条第十三項において準用する同条第一項に規定する範囲内において、不均一の一般保険料率を決定することができる。
一 合併前の健康保険組合の設立事業所がいずれも同一都道府県の区域にあること。
二 当該合併が第二十八条第一項に規定する指定健康保険組合、被保険者の数が第十一条第一項又は第二項の政令で定める数に満たなくなった健康保険組合その他事業運営基盤の安定が必要と認められる健康保険組合として厚生労働省令で定めるものを含むこと。

http://law.e-gov.go.jp/htmldata/T11/T11HO070.html

である。この規定を緩めて本格的に運用すれば、地域型健康保険組合(地域型健保)が財政的に立ち行かなくなっている健保組合の受け皿になる。全国健康保険協会(旧・政管健保、通称:協会けんぽ)を都道府県別に分割して地域型健保と一緒にする、職種別の国保組合などや市町村国保の広域連合を統合すると、都道府県を単位とする医療保険制度ができあがる。

医療保険者の自主性に任せていては、この再編には10年から20年はかかるだろう。なぜならば、保険者の利害が一致しないからである。例えば、職種別:医師などが加入する医師国保組合の財政状況はすばらしい。同じ「国保」でも、市町村国保とは天と地ほどの差がある(目立たないように隠しているが...)。

「政治主導」で指導力を発揮し、地域単位での再編を後押しして欲しいものである。