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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

「安心で信頼できる社会保障制度の確立に向けて」 その1

2009年10月26日 10時24分10秒 | 情報化・IT化
日本経団連から、「安心で信頼できる社会保障制度の確立に向けて」が公表された。数回に分けて、気になることを書いていきたい。

日本経団連
安心で信頼できる社会保障制度の確立に向けて
http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2009/083.html

全体的に現政権が目指す方向を意識した書き方になっているが、今からも伸びていく社会保障費の財源として「消費税」を充てようという提案である。日本経団連は、企業の集まりなので、消費税に付け替えを進めることで「社会保険料の事業者負担を増やしたくない」との考えなのだろう。また、現在は「封印」されているが、消費税の引き上げは避けられない。「消費税を主たる財源として社会保障費用を賄う方向での歳入改革を行う必要がある」のように、消費税を目的税化するのも現実的な選択肢といえる。

現状の認識に異論はないが、「ICTを活用した効率的な医療提供体制の基盤整備」は、どうだろうか。
このブログでも書いたが、「2011年度からのレセプトオンライン請求の義務化」と「医療情報のデータベースの構築やネットワーク化など」は、進めるべきことである。その理由としては、紙とデータを何度も変換する非効率さ・無駄は一刻も早く解消すべきであり、レセプトをしっかり審査することで「違法な請求」を無くすことができるからである。
同時に、日本医師会からの「強い要望」によりできなかったことに切り込むべきである。例えば、審査支払機関では「縦覧点検」ができないことになっている(要確認)。縦覧点検とは、数ヶ月分のレセプトを並べて「違法な請求」を探すことである。縦覧点検がなされていないから、先月と全く同じレセプトを出しても通ってしまう(医学的にありえない行為であっても)。しかも、保険者には「紙」のレセプトを渡しているので、保険者側で縦覧点検しようとすると、それをデータ化しなければならない。コストに見合わないので取り組めない。

これでは、審査支払機関や保険者に「違法な請求」を探させないように、自民党の「族議員」を使って「圧力をかけていた」としか思えない。日本医師会は、このような「誤解」を払拭するためにも、「保険者機能の強化」に積極的に協力する姿勢に転じたほうがよいだろう。


日医、執行部に批判集中 新政権発足後初の代議員会
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20091025AT3S2501625102009.html

日本医師会(日医)は25日、全国の代議員が集まり、民主党政権発足後初の代議員会を開いた。会合では衆院選で自民党を支持した唐沢祥人会長に「責任を取って退陣する考えはないか」(奈良県の大沢英一代議員)など批判が集中する大荒れの展開になった。

中医協:日医を除外…長妻厚労相が委員6人を新任
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091027k0000m010088000c.html

自民党を伝統的に支援してきた開業医中心の日本医師会(日医)の代表委員は全員除外した。長妻氏ら政務三役は日医がこれまで自民党を支援する代わりに、診療報酬の改定に強い影響力を行使してきたと判断。代わりの委員に、地方医師会や大学病院から起用した。

これらの記事をみるまでもなく、日本医師会と同様に、日本経団連も変わるべきである。

政権交代により「しがらみ」が無くなったのだから、レセプトのオンライン化に加えて「審査支払機関=保険者機能の強化」に積極的に取り組むように提案してはどうだろうか。医療費の無駄と不正を無くし、被用者保険の財政健全化につながるのだから、日本経団連にとって悪い提案ではない。