制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

特別徴収と普通徴収の違いは?

2009年10月02日 13時54分52秒 | 高齢者医療・介護
民主党など4党が提出した「高齢者医療制度廃止法案(衆議院解散に伴い廃案)」において、後期高齢者医療制度のみならず、国民健康保険料(税)を含め、特別徴収をやめる、としている。

後期高齢者医療制度の廃止等及び医療に係る高齢者の負担の軽減等のために緊急に講ずべき措置に関する法律案
http://houseikyoku.sangiin.go.jp/sanhouichiran/sanhoudata/169/169-017.pdf

第三条 政府は、前条第一項の措置により後期高齢者医療制度が廃止されるまでの間の措置として、後期高齢者医療制度に関し次に掲げる事項について必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
一 保険料の徴収について、できる限り速やかに、遅くとも平成二十年十月一日までに、特別徴収の方法によらないものとすること。
(省略)

第四条 政府は、次に掲げる事項について必要な法制上又は財政上の措置その他の措置を講ずるものとする。
(省略)
三 国民健康保険法又は地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)に基づく市町村又は特別区による国民健康保険の保険料又は国民健康保険税の徴収について、できる限り速やかに、遅くとも平成二十年十月一日までに、改正法第十三条又は第十六条の規定による改正がなかったとしたならばよるべき方法によるものとすること。


特別徴収と普通徴収は、あまり聞きなれない言葉だが、特別徴収は年金などからの天引き、普通徴収は市町村や金融機関の窓口などで納付することである。特別徴収でも普通徴収でも納める保険料は同じである。保険者にとっては特別徴収は、納付率が上がるので望ましい。被保険者にとっては、窓口まで行って納付しなくても済む。ゆえに双方にメリットが大きいとされてきた。
基礎年金のみの世帯では、介護保険料に医療保険料と次々と天引きされたら手元にほとんど残らない。「なんてひどい仕組みだ!」と言いたくなるのもわかるが、あらかじめ引くか、後から納めるのかの違いであって、最後に手元に残る額は同じである。怒りの矛先は、特別徴収の仕組みでなく、保険料を賦課する仕組みに向けなければならない。

「人気取り」のために普通徴収を基本にするとどうなるか。年金が少ないからと保険料を納めない。滞納が続いて資格を失う。必要なときに必要な医療・介護のサービスを受けられなくなる。このスパイラルに落ち込む人たちが増えるのは確実であり、良い方針転換とはいえないだろう。

年金収入しかない高齢者=親に代わって子どもが納付することもあるだろうと考えると、新制度においても、
1)あらかじめ登録されている口座からの振替=普通徴収
2)年金収入が一定額以上ある人は、年金からの天引き=特別徴収
3)金融機関の窓口などで納付=普通徴収
とするのが現実的だろう。