制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

後期高齢者医療制度、当面維持

2009年10月04日 11時06分29秒 | 高齢者医療・介護
新聞報道のみで決定ではないが、複数の政府関係者によると、
老人保健制度(老健)は復活させず、新制度を創設するとともに、来年度中の現行制度の廃止は断念する方針を固めた
とのことである。

廃止のはずの「後期高齢者」当面維持…長妻厚労相
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20091003-567-OYT1T01106.html?fr=rk

1週間かけて、後期高齢者医療制度と老人保健制度の課題について、地域単位で医療保険制度を再編するならどうなるかを考えてきたが、この新聞報道に書かれているとおり、「マニフェスト実現!」のアピールを優先して、準備不足・調整不足のまま、廃止の方向に突っ走るのは現実的でないと思う。
医療保険制度のあり方は、国民生活に直結する。「マニフェスト違反だ」との批判に負けることなく、時間をかけて検討を進めていただきたい。この現実路線への転換は「英断」である。

おそらく、現役世代の医療保険制度をどのように再編するかを考え、その上で後期高齢者医療制度を考えていくことになる。サラリーマンとその家族からなる被用者保険と、自営業者などからなる国民健康保険では、被保険者の属性が大きく異なる。そのため、地域単位で保険者を再編するとしても、協会けんぽを核にした被用者保険、市町村国保の広域連合を核にした国民健康保険の2つとし、全国に事業所をもつ健保組合はそのまま残す。財政面での均衡を図るために、国民健康保険を被用者保険と国が支えることになるだろう。

このように考えると、後期高齢者医療制度は当面維持し、市町村国保を都道府県単位の広域連合に集め、2つの広域連合を一体化する、というシナリオが描ける。さらに都道府県単位で広域連合をつくるぐらいなら、都道府県が医療保険者になればよいのではないかとも考えられるが、いかがだろう。
介護保険制度を設計する際には、都道府県は「保険運営のノウハウがない」「住民からの距離がある」などの理由で選択肢から外れたが、市町村から出向した職員によって後期高齢者医療の広域連合はうまく運営できているのだから、都道府県でもできなくはない。

広域連合は、事務面ではうまくいっている。市町村からの職員が知恵と経験を持ち寄り、努力した結果である。しかし、保険者機能としてはどうだろうか。被保険者から保険料を集める。国や都道府県からも集める。それを原資に、請求があった医療費を払う「パイプ」以上の機能を十分に果たせているのだろうか。求められる機能は、例えば、「この医療行為は本当に必要なのだろうか、効果が得られたのだろうか」などを検証し、医師に対して説明を求める。つまり、パイプの出口をきちんと監視する機能である(医師からの反発は当然。避けていては被保険者からの理解と支持は得られないと思って強気に交渉すべき)。
広域連合では、どうしても甘くなる。パイプから出ていく水が多くなれば、入る側の蛇口(保険料と税金)をひねればよい、市町村からの出向者ばかりだから、その責任は曖昧になる。事務面では広域連合の方式でよい。さらに保険者機能を強化するために、都道府県の関与と責任を明確にしてはどうか。現在の都道府県の役割では、あまりに小さすぎる。