制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

社会保障論×情報論 その2

2009年10月20日 10時05分42秒 | 情報化・IT化
今回は、情報論を掛け合わせる先の社会保障論について考えてみたい。

社会保障論を大雑把に分けると、社会保険制度や公的扶助、狭義の社会福祉の理論などからなる。今日では、これら制度・政策によって裏付けられたサービスに加えて、社会的な問題にアプローチする社会的起業などの非制度的な支援やサービスについても理論の枠組みに入れる必要がある。

例えば、「経済的に困窮しているならば、生活保護費を渡せばよい」というものではない。経済的に困窮する原因が失業ならば、就労に向けて支援する、生活困窮が原因となって家庭内に不和(DVなど)が生じていれば、適切に介入する。このように最低限の生活を保障するための現金給付に、ケースワーカーによる自立に向けた関わり=現物給付を組み合わせないと、公的扶助の目的を達成できなくなっている。さらに、これらのサービスの組み合わせですら、限界がある。例えば、ホームレス支援においては、様々な民間団体がホームレスを支援しつつ、制度的なサービスにつなぐようにしている。つまり、非制度的な支援やサービスとのシームレスなつなぎ合わせが求められている。

これは、情報論と掛け合わせる前に、社会保障論の今日的な姿について考えておかなければならないということである。

例えば、支援やサービスを必要とする「対象者」と「提供者」の関係が揺らいでいる。提供者からみた「対象者」は、「制度によって守られるべき、社会的なニーズを抱えた人(弱者)」である。一方で、その人は、一人の人間=生活の「主体者」であり、「社会において何らかの役割を果たしている人」である。誰もが、誰かに支えられており、誰かを支えているとの考え方=立場に立つと、これまでの「社会保障論」の枠組みを越えてしまう。

この枠組みを越えた考え方に情報論を掛け合わせてみるとどうなるだろうか。

「提供者→対象者」の枠組みでは、必要な支援やサービスを得るために必要となる情報をいかに届けるか、と考える。しかし、枠組みが揺らいで「提供者=対象者(時と場合によって入れ替わる)」となると、自らが必要とする情報を得ることは当然のこと、自らが持つ情報を必要とする人たちに届けたり、支援者になったりする(例えば、ピアカウンセリング)。自分のことは自分で決める「参加」と、一人の人間としての社会への「参加」のように概念は様々だが、情報論との掛け算では、いかに情報やITを使って当事者の「参加」を実現するか、を考えることになる。

情報論の理論化はまだまだで、十分に整理・体系化されていない。一方の社会保障論は、今日の社会情勢に対応するために揺らいでいる(最低保障年金を始めとするマニフェストに掲げた政策を実現していくと、さらに揺らぐことになる)。
さらに、その掛け算の「社会保障論×情報論」は研究領域として、どの学会からも認知されていないし、このタイトルにしてからアクセス件数がぐっと落ちている。

このように悪条件は重なっているが、引き続き考えていきたい。