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自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

社会保障論×情報論 その1

2009年10月19日 10時51分04秒 | 情報化・IT化
社会保障と情報を掛け合わせた領域は、研究の積み重ねがほとんどなされていない。学際的な研究領域ゆえの手薄さがある。
そのため、現在の状況を整理した文献すら、簡単には見つけることはできないし、論文が書けるほどの成熟さはない。逆にいえば、ブログであったとしても何らかのかたちで経験したこと、考えられてきたことを残しておかないと、誰にも知られることなく、また、積み重ねがなされることなく、忘れ去られてしまうということである。

研究領域としては、年金システムや子ども手当システムなどの事務処理システム(IT)のつくりから、障害者の社会参加を実現するために必要な情報をいかに届けるか、様々な職種からなるチームで障害者の自立生活を支えるにあたって必要となる情報を共有するための仕組みまで多くのサブ領域に分かれそうである(このブログで書いてきたものをざっと見るだけでも)。

このブログで「社会保障論×情報論」を展開するにあたって、まずは情報論から考えていきたい。

情報論は、コンピュータ化を対象とする「IT」の領域と、情報提供や情報共有のあり方などを対象とする「情報」の領域に分かれる。「IT」と「情報」は、事務処理の効率化などを扱うのは「IT」、よりよいサービスを提供するために必要な情報や本人の社会参加に必要な情報を扱うのは「情報」、その具体的な方法の一つとして「IT」があるとの構造と理解してよいだろう。
つまり、

・IT化論
 社会保障制度の運営に必要となるITシステムを対象とする
 事務処理の効率化が目的のため、領域の独自性はない

・情報化論(提供者側)
 よりよいサービスを提供するための情報の共有と活用する仕組みを対象とする
 今日では、地域福祉を推進するにあたって必要な情報も対象となる

・情報化論(当事者側)
 必要な支援を得るために必要となる情報を入手し活用するための仕組みを対象とする
 今日では、社会参加のための仕組みも対象となる

・情報+IT化論
 情報化を促進するために必要となるITシステムを対象とする
 例えば、情報提供システムや利用者管理システム、アシスティブ・テクノロジーなど

・推進するための制度政策論
 情報開示や提供の仕組みを裏付ける制度や政策を対象とする
 法制度の切り替わりによって必要となる仕組みやITシステムも対象となる

となる。年金制度のような現金給付の制度は、IT化論が中心、自立支援法のような現物給付の制度では、全てのサブ領域が必要だが中心は情報化論となる。
事務の全て、サービスの提供と利用の全てで「情報」は不可欠だし、ITはどこにでも使われている。それゆえ、何でも「情報論」だと言えてしまう。しかし、どの領域においても深くは語れないという「中途半端さ」がある(ITは「つけあわせ」。無いと困るが「メインディッシュ」にはなれない)。

ここまで書いてきたように簡単には整理できそうにないので、何度かに分けて書きながら考えをまとめていきたい。