制度改正Watch

自立支援法・後期高齢者医療制度の「廃止」に伴う混乱を防ぐために

日本の医療費をOECD加盟国平均並みに引き上げる前に

2009年10月07日 10時12分07秒 | 情報化・IT化
民主党のマニフェストでは、先進7カ国のなかで日本の医療費の対GDP比が最低。そのため、OECD加盟国平均まで今後引き上げていきます、としている。これまでの「医療費の伸びを抑制しなければ、財政が持たない」との考え方を転換することになるが、少し待って欲しい、と言いたい。

民主党政策集 医療政策<詳細版>
http://www.dpj.or.jp/policy/koseirodou/index2009_medic.html

なぜならば、日本では、医療費の総額はわかるが、日本国民がどのような病気に罹っていて、どのような治療がなされたのか、いくらかかったのか、成果が得られたのかといった、医療政策を論ずるにあたっての基礎的なデータがほとんど明らかにされていないからである(そのような統計データは存在しないと言われている)。

今週は、レセプトオンライン化について書いているが、レセプト=請求書こそ、それらの基礎的なデータを得るための材料となる。これまでは、紙のレセプトだったため、分析するためには膨大な費用が必要だった。これからは、レセプトは全てデータで扱われるため、審査支払機関を通るレセプトを分析すれば、日本の健康と医療の実態(日本人が罹りやすい病気など)がわかることになる。
つまり、医療費の総額を目標にする前に、医療費がどのように使われているのかをしっかり分析し、引き上げるべきところは引き上げ、無駄と思われるところは切っていく必要がある。その結果として、医療費がOECD平均並みに引き上げられることになった、というなら話はわかる。引き上げられた医療費を負担するのは国民である(受益者も、負担者も)。国民が納得できる説明をしないと「診療報酬が引き上げられ、医療関係者だけが喜んでいる」と思われかねない。

当然ながら、日本医師会は大反対するだろう。カルテは医師の「創作物」であり、医師のものである(日本の常識は、世界の非常識。こんな論理が通用するのは、世界中で日本だけである)と言い張っているのだから、レセプト=請求書も医師のものである。医療保険者ごときが勝手に分析するな、と言うかもしれない。
政権も交代したことだし、日本医師会も日本の医療の実態を分析するスキームに入って、全てを透明にすべきではないか。レセプトオンライン化の目的は、請求事務の効率化だが、データ化されたレセプトを有効に使えば、もっとすばらしいことができる。医師にとっても悪い話ではないと思う。