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「年金記録問題」解決のための外部委員会が発足

2009年10月18日 10時28分27秒 | 情報化・IT化
10月16日(金)に「年金記録問題」を解決するための外部委員会が初会合が開かれたと新聞各紙が報じている。
朝日新聞では、

紙台帳の記録8億5千万件をコンピューター記録と照合する作業は、延べ6万~7万人がかかわる「国家プロジェクト」になる。

と、毎日新聞では、

メンバーは、社会保険労務士やコンピューターの専門家ら計9人。

と報じられている。毎日新聞によると、その委員会のメンバーは、

〔年金記録回復委員会〕
磯村元史(函館大客員教授)
稲毛由佳(社会保険労務士・ジャーナリスト)
岩瀬達哉(ジャーナリスト)
梅村直(社会保険労務士)
金田修(全国社会保険労務士会連合会会長)
駒村康平(慶応大教授)
斎藤聖美(ジェイ・ボンド証券株式会社社長)
広瀬幸一(社会保険労務士)
三木雄信(ジャパン・フラッグシップ・プロジェクト株式会社社長)

である。
インターネットで調べられる情報のみでは判断できないが、毎日新聞のいう「コンピューターの専門家」とは誰のことだろうか?
社会保険庁が導入している「コンピューター」は、超大型コンピュータであり、度重なるの年金制度の改正に対応するために非常に複雑なシステムとなっている。しかも、照合しようとする年金記録は、数十年前のものを含む。「Dog Year」や「秒進分歩」と言われるIT業界においては、とてつもなく昔のことである。Windowsが動くパソコンがコンピュータだと思っている世代には、使われている用語の意味すらわからず、1バイトでも節約しようと切り詰めていた当時の苦労を想像することもできないだろう。

「民主党には、IT政策はない(前政権が進めていた電子政府・電子自治体の政策は止まったまま)」「ITをわかっている議員はいない(今回も気づいていない?)」との噂が流れている。確かに、そのとおりかもしれないと思ってしまうが、まずは、この外部委員会の成果をじっくり見ていきたいと思う。

しかし、この取り組みにおいては、IT業界や「情報処理分野の専門家」にも責任がある。情報処理学会から「有識者」を推薦すべきであり、社会の基盤としてITが重要な役割を果たしている現状を踏まえれば、産学をあげて「ITも社会保障制度もわかる有識者」を早く育成すべきだった。会員数1万8千人の情報処理学会が「国家プロジェクト」に関わることができないのは、反省すべきことである。

「社会保障分野の専門家」にも同じく責任がある。これだけITや情報が重要な役割を果たすようになったのだから、「社会保障論×IT」や「社会保障論×情報」の研究を進める必要があった。しかし、研究成果はほとんどないに等しく、研究者コミュニティから領域として認知されているようには思えない。

このブログでは、引き続き、「社会保障論×(IT+情報)論」を展開していきたいと思う。