私と赤城の叫び声と共に落下するパネル、そして轟音…。
一瞬、現場に静寂の時が流れ、あちこちから声が聞こえて来る。
「大丈夫か!?」
「どうした?落したのか?」
「怪我はしてないか!!」
呆然と下をみると、落したパネルがやや斜めになり、下回りのパネルに刺さっているように見える。
「大丈夫です、怪我は、してません…」
現場では基本的には上下作業は厳禁なので、下に人が居ないことは分かっていたが、改めて背筋が寒くなる。
「・・・」
「・・・」
私は防音パネルの天井で、何本もの視線を漠然と感じていた。
佐野がすぐさま中に入り、状況を確認する。
「とりあえずパネルを引き上げるぞ、上にフックをかけろ」
こういう時、
「何やってんだこの馬鹿野郎!」
と顔を真っ赤にして叫ぶ親方も居るが、佐野は正反対のタイプの人間で、冷静に、そして的確に指示を出す。
「掛かったか?じゃあ巻き上げるから、他の部分に接触しないように気を付けろよ」
赤城と二人でパネルを押さえながら、慎重に介添えする。
「どうだ、パネルの傷は?」
縦に吊られたパネルを、赤城と二人で目視する。
「…ほとんど無い…のか?裏側に数箇所擦ったような跡がありますけど、ほとんど目立たないです」
「右下のベロ(パネルの掛かりの部分)がちょっとだけ曲がってるけど、叩けば直るね…」
意外にも落下したパネル自体にはほとんど損傷が無い。
「よし、とりあえず仮置きするぞ、そのまま橋みたいに渡して置いちゃってイイから」
赤城と二人でパネルに手を掛け、慎重にパネルを置きにかかる。
「他のパネルに傷をつけるなよ」
佐野が細かく指示を出す。
「フィいいいいいん…」
天井クレーンのモーターがスロー回転をして、パネルがゆっくりと下ろされ、ようやくパネルは安定したポジションに仮置きされた。
「…ふぅうううう…」
体中からドバッと疲労物質があふれ出し、同時に、
「やっちまった…」
という思いで心が一杯になる。
「おい、被害状況を確認しろ、本体の損傷箇所は?」
佐野は淡々と作業を継続する。
「はい…」
落下したパネルを受け止めた下回りのパネルは、内側のメッシュに十数センチの裂けたような穴が開き、内部の吸音用グラスウールが顔を覗かせている。
「交換、かな…」
ぼうっとした頭で、私は裂け目から見えるグラスウールの黄色を見つめる。
「どうだ?」
佐野の声で我に返り、私は本体の被害状況の確認作業に意識を戻す。
「…こっちから見た範囲では、大丈夫みたいです」
「赤城ちゃん、そっちは?」
「うーん、こっちも大丈夫そうだなぁ…」
「その辺のメーター類は?」
赤城と二人で何度も確認をするが、接触した跡すら確認できない。
「やっぱり大丈夫みたいですね…」
落下したパネルの内側には、数本のとても薄い跡があるのだが、機械本体にはその痕跡がみられないのだ。
「と言うことは、あのパネルの穴だけなのか?」
どうやら不幸中の幸いとでも言うのか、パネルが落下したのは機械本体で唯一空間が下まで空いている部分で、しかも落下したパネルを受け止めたのは、アルミのパンチングメタル(無数の穴が開いた薄い板)と吸音用の分厚いグラスウールだったらしい。
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自分でロット単位で購入して専用ナイフで切って詰めると、非常に安上がりです。
まあ、普通は自分でやりませんけどね(笑)
そーですか、生徒さんでしたか(笑)