羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第24回~役割放棄の塾(5)

2006-01-18 11:57:25 | 塾戦争影の第1章
(5、塾の役割を放棄する塾Ⅰ)
こんにちは。

今日も2コマです。
2コマが最近多いですね。

今日は前回の「合格実績」や「指導体制」から何が見えてくるのかをお話します。

そもそも「学習塾」というのは、合格実績について同業が同業を責めることがその目的や役割ではなく、「学校外で教科の補習や進学準備の学習指導を行う、私設の教育施設。塾。」(大辞泉より抜粋)がその目的・役割のはずなのです。
そして塾の善し悪しは本来、この目的・役割をきちんと達成できるかのはずです。

現実には、小中学生の受験を意識する保護者の場合で言えば塾の善し悪しは、わが子の成績が上がり、それを維持し志望校合格を果たすよう導くことができるかどうかの一点に絞られます。
一方で、特に大手の学習塾の場合、ひとつの地域でたくさんの生徒を抱えているため、一人ひとりの成績の向上が、ひいては前にも書きましたが、地域の教育水準の向上につながり、そしてこれが塾の目的・役割と地域住民から位置づけされるのです。
しきりに高校の合格実績を大手の塾が出すのも、自分たちの塾の規模や指導力、そして地域でこれだけ優秀な生徒を育て、教育水準の向上に寄与しているのだとアピールしているから故なのです。

ところで、志望校合格を待たずしてその一人ひとりの成績が授業の結果、上がったかどうかは、学校のテストで判断されるわけですが、そのテストや入試のある意味予行演習として塾には大規模な模擬試験というのが存在します。

模擬試験というのは、早い段階から本番である高校入試に慣れておくために、形式や問題傾向を入試に似せ、塾で実施するものをここでは言います。
その多くは採点後、コンピューターで平均点や偏差値を算出し、総合・教科別・地区別の順位や志望校の合格可能性をパーセントなどでしめしたものを受験者やその保護者に渡します。
しかし塾によって模擬試験の主催は様々です。

佐鳴の場合、小学生、中学生の塾生ともに単独で「サナル模試」というのを年数回受験するのが定番です。
5府県で校舎展開していますから、それぞれの府県の入試に合った問題を解いてもらうのですが、しかし佐鳴の主力地域である静岡や愛知では少し事情が違います。

静岡の場合、佐鳴の中学3年生の模擬試験は「静岡県進学模試」というのを受験します。
これは佐鳴が静岡県下の学習塾に呼びかけ、実施されるようになった、佐鳴主導の静岡県の塾横断的な模擬試験です。
受験者数は静岡県最大と言われていますが…実はこれには静岡で佐鳴と双璧をなす秀英は参加していません。
秀英は秀英で独自にこれに対抗すべく、やはり県下の学習塾に呼びかけて、進学模試とはまったく別の「静岡県統一模試」を実施しています。
つまり本来は本番である入試の練習、受験指導のためのデータ入手という、生徒にしてみれば将来までをも意識させる、高校進学に必要な行事なのにも関わらず、その模擬試験の背後には二大大手学習塾の主導権争いの道具、と指摘されても仕方の無いような状況が横たわっているのです。

愛知ではその状況が更に顕著になります。
愛知では今日、中学3年生の場合、「全県模試」と「新中統」という模擬試験で県内の学習塾は二分されています。
どちらも特定の学習塾が主導しているわけではなく、第三者の会社が主催していますが、模擬試験の参加を巡り、大手の塾同士でもめた結果、未だ一本化されておらず、佐鳴はじめ以前紹介した野田塾や明倫ゼミナールといった愛知の老舗大手塾が二手に分かれてしまっています。
挙句、秀英に至ってはどちらにも参加せず単独の模擬試験を実施しています。
全県模試が今のところ、中学3年生は2万人(愛知県の中学3年生の3人に1人)が受験と、最大の規模になっていますが、だからこそ生徒のことを思えば、更に多くの受験生が参加するようなよう、正確な志望校合格に向けてのサンプルを採取するために、まずは模擬試験の一体化をはかるのが筋なのに、お互いのメンツや立場が優先し、結局は不統一の状態に陥っています(一応、静岡と愛知で校舎展開している進学会は独自の模擬試験)。

さてさて…北海道はどうでしょうか。

それはもう1コマで。

それでは、また。
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