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羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

さらば銀河鉄道9・土壌編(2)

2006-08-13 14:34:56 | 銀河線土壌編
こんにちは。
またまたご無沙汰となりました、西日暮里です。

前回は十勝の地域性についてお話しました。
今日は一方のオホーツク・北見地域についてお話します。

確かにオホーツク、とりわけ北見とその周辺は、十勝と産業構造は似ているものの、その実は大きく違っています。
というのも、地元資本は強くないし、何より帯広の勝毎ほどの強力な地域メディアが存在しない、というにはわかるのですが、それ以前に地域メディアがないのです。
否、ないというのは変な話ですが、しかし帯広ほどではないにしろ、人口12万を超える北見には地域の新聞というものが存在しないのです(かつては北海道最古の地域新聞である北見新聞とオホーツク新聞がしないで競合していた時期もあったが、どちらも廃刊)。
毎日の地域の情報源は、北見とその周辺に全戸配布している日刊フリーペーパー「経済の伝書鳩」(日祝日は休刊)と道新とNHKのローカルニュース、という全国的に見ても特異な地域となっています。
今流行のコミュニティFM局すら立ち上げることができないのです。

帯広と北見の違いは何なのでしょうか。
私が思うに「軸」の存在です。
地域メディアひとつとってもそうです。
帯広には確実に地域メディアがあり、それが地域の政治経済文化の軸として君臨しているのです。
これに対し北見にはそれを思わせるものがありません。

確かに十勝毎日新聞は「林財閥」が経営し、土建屋新聞ではないかとの指摘もある以上、よい面も悪い面もあるでしょう。
ですがまったくそういった類のものが「ない」というのもどうなのでしょうか。
地域は無秩序に形成されていくばかりではないのでしょうか。
現に北見の1人あたりの大規模スーパーの面積は道内のほかの都市と比べても突出して高く、それは地域の古参や商店街の「ひどすぎる」までの衰退を招いています。

それはまた、自家用車保有率の高いこの地域性とあいまって、銀河線の衰退に直結したわけです。

いずれにしても十勝と北見の地域性の差が、沿線の一体感を生み出さなかったわけで、「マイレール」意識などがなかったからこそ、政治権力に翻弄され、廃止に至ってしまったのです。

そう…地域に「銀河線への愛着や意思」などを形成することなどできなかったのです。ましてやアピールなんて。

となると、銀河線の廃止は当然の帰結と私は思うのです。

では政治はこの銀河線にどのような影響をみせたのか、次回以降そこに話を移します。

それでは西日暮里でした。
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さらば銀河鉄道8・土壌編(1)

2006-07-30 19:22:29 | 銀河線土壌編
こんにちは。
塾戦争の番外があって、ご無沙汰状態になりました、西日暮里です。
「さらば銀河鉄道」はいよいよ核心に入っていきます。

今日はまず、そもそも歴史や今日の状況に至るまでの経緯はいいとしても、しかしなぜ長大四線の中で、池北線だけが生き残り、ふるさと銀河線として再出発することが許されたのか。
そこに少しずつ踏み込んでいくのですが、まずここでは沿線の地域性について探っていきます。

その前提として…
私は常々、北海道の地域性で思うことがあるのです。

それは、北海道というのは、日本の縮図みたいなものではないか、ということです。
北海道の中心都市である札幌を東京に見立てるとわかりやすい。旭川や函館が、大阪や名古屋のような位置づけになり、それぞれの都市を中心とした地域文化が成り立っている。
道民の都会へのステイタスは、物理的にも精神的にもあまりにも距離感を感じるため、イコール東京とならず、札幌にステイタスを感じてしまい、そしてその次に魅力にステイタスを見出す先は自分の住んでいる地域にある都市(道南だったら函館、ということ)になってしまう傾向にある、と私は見ているのです。
私は北海道が抱えるこの傾向を「プチ日本的傾向」と呼んでおります。

また流通小売業でよく見られるのですが、北海道はスーパーならアークス、家具ならニトリ、ドラッグストアならツルハ、ホームセンターならホーマック、という風に、業態ごとの地元北海道の一番手が圧倒的に強くというより、盲目的に道産子の消費者が飛びつき、その結果二番手以降がなかなか伸びない、もしくは伸びても一番手と会社規模や売り上げにおいてかなり差をつけられてしまう、という傾向があります。
たとえば北海道新聞(以後、略称の「道新」とする)もそうした北海道の気質にある新聞社で、北海道では他の追随を許さないどころか、朝日新聞や読売新聞など全国大手の介入も許さず、道民の6割以上が購読し、発行部数は200万部に迫る大新聞社となっています。
しかし、その道新が苦戦する地域が北海道にはあります。
帯広です。

帯広はいわば「プチ日本的傾向」の北海道にあって更に「プチ日本的傾向」にある、いわば「プチプチ日本的傾向」の土地と私は見ます。
というのも、この地域はなかなか道新に限らず、札幌資本の一番手の介入ができない地域なのです。

なぜか。
明確な答えは出しにくいですが、ひとつ言えるのは帯広の資本で、全てがまかなえるから、というのが理由でしょうか。
つまり札幌資本が帯広に来なくても地元の資本が住民のニーズに応えられるのです。
新聞で言えば十勝毎日新聞(略称「勝毎」)です。
この勝毎が、道新のシェアトップを阻んでいますし、勝毎をやっつけようと帯広での新聞印刷態勢を強化したり、道新資本の地域FM局を帯広開局したりしてもそれをはるかに凌駕するものを勝毎は作り出し、帯広や十勝の住民の支持を集めてしまいます。
今ではケーブルテレビまで所有し、地域情報専門番組の放映までしています。

最も帯広資本の強さがわかるのは毎年夏に帯広で開催される花火大会です。
帯広の夏に行われる花火大会は2回あります。
1つは道新主催のもので、今年の打ち上げ数は去年の3倍以上の1万発と大規模になりましたが、地元の勝毎が主催するもう1つのものは、その数をはるかに上回る3万発、全国トップクラスと言われており、全国的にも注目されています。
つまり道新が太刀打ちできないのです。

そういったことの悔しさの現れでしょうか、道新は事あるごとに帯広や十勝の気質を「十勝モンロー主義」と紙面で書き、皮肉ります。

第1次産業(特に農業)と土建業が地域における産業の基盤とした、日本の典型的田舎のように思える帯広を中心とする十勝地方。
しかし確固たる地元資本の第3次産業が君臨し、あげくには地域メディアまで存在する…中心都市の帯広ですら人口20万人にも満たないというのに、外部資本の流入を極力阻むだけの根強さがあるのです。

では北見地方はどうなのか。
そして十勝と北見の二地域が銀河線に何をもたらしたのか、そこに次回は触れていきます。

それでは、西日暮里でした。
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