羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第40回~光はどこに(4)

2006-02-24 11:44:22 | 塾戦争闇の章
(4、進学会の場合)
いよいよ京進の事件の公判が始まりました。
これについてコメントを改めてしようとは思いませんが、事件関連の講義をしている最中ということもあり、因縁めいたものを感じます。

その京進と同じく大学生アルバイト講師の比率が高いとされる進学会のCMを見て思うのですが…。
そりゃあ高学歴の講師が多いのはわかるし、「塾は講師で決まる」なんて言うのもいいですよ、そりゃあ。
でもねぇ…付け焼刃でここ数年、新卒の正社員講師を多く採用しているような塾です、結局は。
「塾は講師で決まる」って…そのせりふ自体は否定しませんが、進学会に言われるとなぁ…などと思ってしまいます。

…というわけで、こんにちは。
今日も1コマです。

前回まで佐鳴、秀英と京進事件についての対応を紹介してきましたが、今日は進学会です。
例によって声明を見てみましょう。

京都府宇治市における痛ましい事件の発生を受けまして 先日、京都の学習塾において発生した実に痛ましい事件につきましては、同じ業界に身を置くものとして当社も言いようのない衝撃を受けております。まずは、被害にあわれた方のご冥福を心よりお祈り申し上げます。 今回の事件は極めて特異なケースとは言え、お子様をお預かりする上で他人事ではないとの考えから、改めて当社としての姿勢を皆様にお伝えしたいと思います。
◇ 講師の採用・育成につきまして ・ 講師採用におきましては、厳格な採用試験に加え面接試験も重視し、講師としての適性はもとより、本人の人間性につきましても厳しく見た上で採用の判断を行っております。 ・ 採用後におきましても、毎月全講師によるミーティングを開き、意見・情報の交換と方向性の統一を徹底し、学習塾講師として求められている技量やモラルの水準の維持を図っております。
◇ 生徒が安心できる授業環境につきまして ・ 講師に対する生徒・父母からのご要望につきましては真摯に受け止めており、良好な授業環境を築くために不適と判断した場合は担当講師を変更しております。 ・ 教室環境につきましては、見通しのきかない空間がなくなるよう改善しております。 今後も、これを機になお一層の改善に努めてまいる所存ですので、皆様方のご指導・ご支援のほど、何とぞよろしくお願い申し上げます。


前半の講師採用、人材育成については佐鳴や秀英と同じで「頑張っています、優れています」との内容ですが、進学会の弱点は京進と同じく大量のバイト講師を採用していることです。
で、今までは国公立大学の学生で固めているためバイト講師とは言え、クオリティーは高く、評価もされてきたはずでしたが、この事件で「高学力大学生バイト講師」への評価は失墜してしまいました。
この点は進学会にとって非常に苦しいです。
しかも佐鳴のようにセキュリティーのシステムもない。
だから後半なんてものすごく抽象的な内容になっていますね。

ただ…進学会だって手をこまねいているわけでもないのです。
よりよい環境作りを考えているのです。
…ということで、その一つとして、昨年12月、この講義を開始した直後ですが、日本経済新聞にこんな記事が掲載されました。

進学会、2年で20億円投資し自社ビル20棟取得へ
 
学習塾道内最大手の進学会は生徒獲得競争を有利に進めるため、札幌市内など主要20拠点の教室を賃貸から自社物件に切り替える。今後2年間に約20億円を投じて自社ビルを取得し、設備を拡充する。道内は全国に先駆けて少子化が進んでいるうえ、今夏に秀英予備校が初進出するなど学習塾の競争は激化している。進学会は積極投資で集客力を高める。
進学会は道内で216校を展開する。このうち自社ビルは各地域の本部機能を持つ校舎など16カ所にとどまっている。今後は千歳、小樽などを含めた札幌圏と旭川など主要都市で自社ビルへの切り替えを急ぐ。
これまで自社ビルにした地区では生徒数が約2割増えており、賃貸中心だった戦略を見直す。具体的には幹線道路沿いなどに3―4階建ての自社ビルを建設。生徒のニーズの多様化に対応し、集団授業のほか個別指導室や自習室などを幅広く確保する。宣言効果を見込み、建物の外観はガラス張りにし、屋上部分に看板を大きく打ち出す。


まぁよく言えば環境改善でしょう。
しかし、この「塾戦争」の講義序盤で、その冒頭で進学会が生徒に名簿提出を執拗に求めたという新聞記事を紹介しましたが(こちらを参照)、その記事といいこの記事といい秀英の札幌進出による進学会の慌てふためいているというのが本当のところでしょう。
記事にだってそう書いてありますから非常にわかりやすい。

つまり生徒や保護者がいるから何かと動くのではなく、秀英という同業他社がいるから改善に動くというのです。
これが果たして教育機関としての姿勢なのかどうか、私ははだはだ疑問です。
塾生は札幌だろうと仙台だろうと塾生には変わらないはずです。
本当に生徒や保護者のためなら札幌や北海道のみではなく、進出地域すべてで同等の施策を行うのが、筋のはずです。

また、自社物件校舎を極力建設してこなかった長年の経営のリズムを、秀英の進出で急に崩すというのはどうなのでしょう。
焦りはあまりいいことを生まないはずです。
急に決め、急激に吐き出す投資の先にあるものは何でしょうか。
今後、経営の基盤そのものが揺らぎ、株価に影響することはないのでしょうか。

現に!
05年12月期の進学会の連結決算が先日発表されましたが、競争激化に対応するため広告宣伝費を増額したばかりに営業利益を半分近く減らしています。
売り上げも現状維持がやっとですし、経常利益は減っています。
…もう、秀英の進出で右往左往した結果と言わんばかりの内容です。

更に言えば、進学会は別ブランド名で個別指導をやっています。
つまり一斉指導「進学会(北海道は増進会)」とは「別個の塾」を展開させています。
なのに個別指導の教室所在地は全て一斉指導の教室と一緒なのです。
同じ系列とはいえ、フロアに2つの塾があるのです。
どういうつもりなのでしょうか、生徒無視でコストダウンにそんなにこだわりたいのでしょうか。

いずれにしても…たとえば下の写真は札幌南本部ですが、どうでしょうか。



見づらいですが、手前に立体駐車場があって、塾の教室(もちろん、一斉指導の教室と個別指導の教室が同居)があって、そしてスポーツクラブです。
立派なのは認めますが、その使われ方に疑問符がつきますし、何よりこうした環境の享受にすら達していない生徒の方が、同じ塾でありながら多いのです。

だってそうでしょう?
たとえばこの南本部から直線距離で2キロほどのところにある「豊平公園駅前教室」なんて、これですよ。



こんな落雪の恐れのあるこじんまりしたビルの2階、居酒屋の真上で何も知らず塾を信じる生徒の事を思うと、悲しくなってくるのは私だけでしょうか。
まぁこれはライバルの札幌セミナー(練成会の札幌地区での塾名)も同じなんですが…
更に言えばこんなのはまだ甘いのも事実でして…

それについては次回。
それでは、また。
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