羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第2回~光のプロローグ(1)~

2005-11-30 14:53:23 | 塾戦争光のプロローグ
(1)焦燥の夏
こんにちは。

さていよいよ講義に入るのですが、そもそもなぜこの講義をこの時期にやろうと思い立ったか、それをまずは語っていこうと思います。

思い立ったのは今年の夏です。
その時、焦っている…私は、そんな風に思ったものです。

ご存知の方も多いと思いますが毎年、5月の連休が終わると、世間の連休疲れも何のその、多くの業界業種は夏の商戦にシフトします。
教育産業とも言われる、主に小中学生への受験指導をウリにする塾業界も例外ではなく、夏休みに開催する「夏期講習会」の生徒募集のテレビCMやインターネット告知、新聞折込チラシが目に付くようになります。
夏は受験の天王山と言われており、塾にとって顧客である生徒獲得の絶好のシーズン、一年の塾の収入もここでの成否で決まることから、当然のように力が入ります。
2005年、今年もその季節がやってきました。
どこもあの手この手と大変そうです。

…といった中で、長年塾業界を草葉の陰から見、そしてこうして講義をしようとしている私はかつてない違和感を覚えました。
何かが違う、と。
特にインターネットの大手塾のホームページを見て、そう感じます。
確かに「夏期講習会募集」の告知はある。
それはいつもと変わらない。
でも…それだけなのです。
どんな内容で、どのくらいの量を、どういう理念や目的を持って授業をするかということに全く触れていない塾があまりにも多いのです。
あるのは講習会の期間と会場、対象学年、そして事前説明会の日程と会場、そして講習会お申し込みフォーム…そう、まずは講習会に通うべきか迷う小中学生やその保護者に対し、とにかく話を聞きに来い、もしくはとっとと申し込んでくれ、と言わんばかりなのです。

私は宙を仰ぎました。
生徒をとりあえず集めることが、あまりにも前に出すぎていないか、と。

実際に夏が来て、夏期講習会の時期に入った途端」、今度はこのような新聞記事を目に飛び込んできました。
以下は、2005年7月29日の北海道新聞の記事です。

進学会(札幌)が運営する「北大学力増進会」の札幌東本部が今月中旬、夏期講習の受講を申し込んだ中学生とその保護者に対し、所属する中学校のクラス名簿と、小学校時代の卒業アルバムの貸与を求める文書を配布していた。

 記事には、札幌市教委がプライバシー保護のために外部提供を禁じているにも関わらず、受講生とその保護者向けにクラス名簿や卒業アルバムを、対象家庭に入試情報を郵送するための資料として活用する目的で貸与させてほしいという内容の文書を配っていること、別の本部に至っては名簿集めキャンペーンと称して、提供してくれた生徒にはノートなどを配っていたこと、が書かれています。

進学会とは北海道の最大手の学習塾です。
そのような塾ががこのような醜態をさらしたのです。
ちょっと前ならいざ知らず、個人情報保護が叫ばれている昨今、少し考えれば「バレたらヤバイ、違法性のあること」とわかるはずなのに(現に記事では、この行為についての地元中学校教頭の憤り、札幌市教委の批判、更には個人情報保護法の観点からの専門家の指摘が綴られている。ちなみに進学会はこの件について取材拒否している)。

私は再び宙を仰ぎます。
2002年の新学習指導要領実施後もなお続く、教育界の混迷。
とりわけ公教育の荒廃が叫ばれる中で、その対極をなす私教育の存在が高まり、黙っていても塾がクローズアップされているご時勢なのに、なぜこの有様なのだろう、と。
とりわけ進学会は北海道の最大手なのに、
何をそんなに危ない橋を渡る危険を犯しているのだろう。

だからこそ…
焦っている…私はそう思ったのです。

しかし私にはなんとなくわかっていました。
進学会の場合、焦っているとすれば理由はひとつ。
「あのこと」に起因している、と。

そしてそれは塾業界が大きく動くきっかけになるのではないか。

私は、私なりに長年、塾業界での見聞を広げてきました。
ならばその見聞の集大成であり、今後のために全てを吐きだす「塾業界について」の講義は、業界の大転機となる今しかないのではないか。
私はこうして、塾についての講義を、この一件を契機にやってみようと思い立ったのです。

私の講義はこの夏の出来事をスタートに進んでいきます。
しかしまだプロローグです。
これからこれから。

今日はここまで。
それでは、また。
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2 コメント

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Unknown (進学会講師)
2006-08-29 05:39:52
北大学力増進会の名簿集めは実は秀英と関係あるものではありません。

昔から伝統のように講習会のたびに毎回毎回行われてきました。この記事以降廃止されましたが。



しかし、秀英が来たことに起因するドタバタは加速している印象があります。今では講習のメニュー、値段設定、あげくの果てには校舎までもが秀英の模倣になっています。(校舎の件は最近またしても北海道新聞に書かれたようですが)

「全ての戦略を秀英を意識して行う」と経営陣が明言しているようです。



教室にすら秀英を攻撃するビラが貼られているような状態です。
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情報ありがとうございます (佐山武雄)
2006-08-30 14:37:07
ご無沙汰でございます。



私の方にも増進会のドタバタは耳に入っております。

やはり脅威と映るのでしょう。



しかしながら秀英も札幌では頭打ちになっています。

今後はどちらが現状維持するかがカギではないでしょうか。
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