羊蹄学園大学社会学部講義集

北の大地に突如としてできた架空の大学。
かつてないテーマで綴る社会学とは?

佐山武雄の塾戦争第18回~影のプロローグ(3)~

2006-01-05 16:09:27 | 塾戦争影のプロローグ
(3、旋風の先に)
こんにちは。

2日連続の講義です。
今日は1コマのみで、前回のつづきをします。

つづきとは…そうです、「志学会」のことです。
この塾はお話したように、いくつかの明確なコンセプトを持って、北海道の地方都市である北見に生まれ、注目されたわけですが、それは同時に北海道の塾業界、特に塾長の田巻氏の古巣である練成会に衝撃を与えることにもなりました。
2005年春の志学会の高校合格実績を北見地区の練成会(北見練成会)と比較しながら見てみましょう。
ちなみにここ数年、数字的には大きく変わっていません。

〈北見北斗高校(北見市内トップの公立高校)〉
練成会…131名(合格占有率54%)
志学会…62名(合格占有率25%)
〈函館ラサール高校(北海道有数の私立進学高校。)〉
練成会…15名
志学会…13名(受験者全員合格)
〈立命館慶祥高校(北海道有数の私立進学高校。)〉
練成会…25名(受験者全員合格)
志学会…9名(受験者全員合格)


「地方や田舎は小中学生の教育水準が低く、通塾率も低い」などと思われがちですが、これを見ると、教育水準の高低は定かではないにしても、北見北斗高校で見ると練成会と志学会の合計の占有率だけで約8割と、非常に塾の占有率が高くなっています。
そうなると「通塾率が低い」などという指摘は当てはまらなくなると思うのですが…と、それはさておき、それより驚くべきなのは、1校舎のみの志学会がこの人数と占有率であるということです、。
一見、練成会と差があるように見えますが、しかし練成会は北見市内とその近郊に10以上の校舎を構えての結果です。
そう考えると、練成会は北見で相当シェアを志学会に喰われ、近隣の網走市の塾生などをかき集めて、やっとこの数字、ということになります。
また志学会は中3塾生の43%が北見北斗高校合格者とも言っています。
これは練成会には決してないことで、指導の質についても結果を出しています。

こうして練成会は発祥の地である帯広に次ぐ牙城の北見が、志学会によって抉られる形となりました。
ちなみに、もともと練成会に押されていた北見地区の進学会(北大学力増進会の北見本部)に至っては、志学会の登場後は虫の息状態で、北見北斗高校の合格者も2桁がやっとという有様が続き、今では「本社のある北海道の一地域であるにもかかわらず、北見からは撤退するのでは」と言われているほどの状態です(ちなみに2005年の北見北斗高校の合格者はたったの7名にまでなっている)。

練成会に話を戻すと、シェアを抉られ、志学会が塾としての価値を高めていくに従って、練成会は北見のみならず、塾全体としての方針の転換を余儀なくされました。
その結果、たとえば今では正社員講師の比率はほぼ100%に近い状態になっているのがよい証拠ですし、少しずつではありますが、校舎も自習室を確保した独立した専用校舎のものへと転換しています(ただし札幌地区は遅れている)。
ただこれは同時に進学会との差別化にもなり、札幌以外の北海道の都市部での基盤をより磐石なものにしたという意味では、一石二鳥ともいえるでしょうが。
とにかくこうして、練成会は態勢を強化しました。
そしていよいよ昨夏、北見に新しい本部校舎を完成させ、志学会との争いにますます拍車をかけていこうとしています。

この志学会の起こした北見での旋風からみえてくるもの、それはそれまで北海道の大手の学習塾…進学会と練成会を中心にあった、塾としての欠点を志学会は暴く、というひとつの衝撃を塾業界のみならず、塾に通う生徒やその保護者に与えたことでしょう(ただ同時にこれはひとつの小規模な塾の起こしたことにすぎず、志学会の影響がそれほどなかった進学会に塾経営の方針転換を余儀なくさせた、というところにまでは至りませんでしたが)。
しかし、志学会のコンセプトを、複数の教室会場を持つ大手の学習塾が忠実に実行したら、どうなるのでしょうか。

思えば、秀英と志学会には何かしらの接点があったわけではありませんが、偶然にも共通する点は多々あります。
正社員の講師陣で1教科専任、小中高一貫教育…秀英は志学会と違い1校舎のみでなく、多くの校舎を展開させていますが、しかしその分快適な独立校舎です。
秀英の札幌白石本部の前面のガラスには、そのことが書かれた紙がところせましと貼られています。
私はそれを何度も見てやっぱり秀英の北海道での躍動を予感してしまうのです。

なぜなら、北見の小規模塾があれだけの成功を収めた以上、大手塾の秀英が同じような手法で勝負するのなら成功しないわけがないからです(ちなみに地元雑誌のインタビューで志学会の田巻塾長は、志学会と秀英の塾としての類似性を認めている)。

ということは…この講義の冒頭で紹介したように北海道の大手塾が焦るのも無理はない、と改めて私は思うのです。

…といったところで今日はここまで。
次回は更に話を進めます。

それでは、また。
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