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平取町立二風谷アイヌ文化博物館⑥祈る・祝う イオマンテ(クマの霊送り)

2024年06月10日 09時58分15秒 | 北海道

平取町立二風谷アイヌ文化博物館。平取町二風谷。

2022年6月9日(木)。

祈る

アイヌの人々は日々の生活のなかで神々への祈り(カムイノミ)を欠かしませんでした。カムイノミは男性が行う厳粛なものであり、女性がカムイノミをすることはありません。

カムイノミのなかで最初に行うのが、炉にいるアペフチカムイ(火の姥神)への祈りです。アペフチカムイは最も身近なカムイですが、強い力を持っています。一日のはじまり、猟に出るとき、催事を行うときなど、必ず最初にアペフチカムイに祈りました。

トゥキパスイ(イクパスイ)(捧酒箸)。

カムイノミに用いる道具として欠かすことのできないものに「イクパスイ」があります。イクパスイは、アイヌの言葉と献酒をカムイに届けてくれます。長さ30㎝、幅2㎝、厚さ3㎜ほどの薄い板状のものですが、表面にはさまざまな文様が彫られており、男性の彫刻の技を見ることができます。漁狩猟には必ず携帯し、行く先々でのカムイノミに用いました。

イオマンテなどの大きな儀礼では、キケウシパスイという表面に羽根のような削りかけのついたパスイが用いられます。イクパスイが何回も用いられるのに対して、このキケウシパスイは儀礼のたびにつくられ、儀礼が終わると神々に持たせるといって、屋外のヌササン(祭壇)に祀ってあるイナウ(木幣)に結びつけてしまい、二度と使いません。現在、博物館等で見るキケウシパスイはほとんどが複製品です。

アサマリイタンキ 和名:底高漆塗椀(熊送り)。

サイズ(mm)径140、高86。団子を供える。1955年頃収集か。内朱外黒漆塗・花紋様、江戸以前・南部椀か。

エチユシ(酒注)。

 

祈る・祝う

神をアイヌ語で「カムイ」といい、神に祈ることを「カムイノミ」といいます。アイヌの人々は、「カムイ・モシリ 神々の住まう世界」、「アイヌ・モシリ 人間の住む世界」、「ポクナ・モシリ 死後の世界」という3つの世界を創造し、アイヌ・モシリに住む人間であるアイヌは、カムイ・モシリから来訪する神々とともに生きていると考えてきました。

アイヌの人々のいう神々とは、太陽や月、山、海、川、風、火など、私たちのいう自然、ヒグマやシマフクロウ、キツネ、キツネ、ウサギ、タヌキといった動物ギョウジャニンニク、オオウバユリなどの植物舟、鍋、ゴザなど自分たちの手でつくり出す道具類天然痘、風邪といった病気など、アイヌの周りにあるすべて、つまりアイヌが生きていくうえで必要なもの、役に立つもの、アイヌの力の及ばないものはカムイであり、私たちが目にしているのは、カムイがアイヌ・モシリに滞在しているときの姿であると考えました。

これらの神々のうち、太陽や月などの自然神は恒常的にアイヌ・モシリにあって、アイヌに役立っていますが、動物神や物神は、カムイ・モシリとアイヌ・モシリを行き来して、アイヌの生活を支えています。

動物神や物神は、普段はカムイ・モシリでアイヌと同様の姿形・生活をしていますが、ある時期がくると、アイヌの役に立つためにアイヌ・モシリを訪れます。これは、神々の義務・務めとされています。

クマを例にとって見ますと、クマ神は、自分の家にある毛皮と爪を身にまといクマの姿となってアイヌ・モシリを訪れ、アイヌの出迎えを受けます(狩猟でクマを射止める)。コタンで歓待され、お土産をいっぱいもらい、アイヌに送られて(霊送り儀礼)カムイ・モシリに帰ってきます。

このときのクマ神のアイヌへのお土産は、毛皮と肉と肝です。いずれも貴重なものです。また、冬の冬眠中のクマを射止めて仔グマを捕獲したとき、コタンに連れ帰って1年ないしは2年養育した後、盛大な別れの宴を開いてクマ神をカムイ・モシリに送り帰します

この儀礼がイオマンテ(クマの霊送り)です。カムイ・モシリに帰ったクマ神は、仲間の神々を集めてお土産を分配し、アイヌ・モシリでの歓待の様子などを話します。

そうすると、仲間の神々も、「我々も来年は訪れてみよう」ということになり、翌年、多くの神々がアイヌ・モシリを訪れることになります。

この多くの神々の来訪は、アイヌが狩猟でたくさん獲物(食糧)を得ることができるということであり、食糧の安定確保を意味しています。漁狩猟・採集を生業としたアイヌの人々の食糧を求める想いがここにあります。

イオマンテのヌササン(祭壇)。イナウ(木幣)で飾る。

シロマイナウ・チェホロカケプ(右から2番目)sir-oma-inaw・c=e-horka-ke-p。和名:逆さ削りのイナウ。

儀式で火の神に捧げる。二風谷。

説明1(使用場所・方法)。「このイナウは熊送りや新築祝いなどのまつりのときに一本作ります。そしてチェホロカケプイナウ(逆さ削りのイナウ)一本とこのシロマイナウをいろり端に立てて火の神に捧げ、まつりが終わった後でチェホロカケプだけを火にくべて燃やし、このシロマイナウは家の東の隅の家の守護神を安置してある上の方に刺し、家を解すときまでそのままにしておきます。

したがって、ポロサケ(大きい酒=大宴会)のたびにその数は増していくので、その家で何回大きなまつりが行なわれたかがすぐに分かるようになっていました。

おまつりのときにはいろいろな種類のイナウがたくさん作られますが、それらのイナウは火にくべて燃したり、外の祭壇に飾られたまま風雨にさらされ、朽ちはててしまうのですが、このシロマイナウだけはいつまでもその姿を変えずに残るのです。」

説明2(製作方法):「ヤナギ)」

▼「シロマイナウというのは、五~七本房を削ってはそれをより合わせ、十五~二十本のより房を削りつけ、下の方をとがらせたイナウです。」

▼「シロマイナウを作るには、いちばんいいような太めのイナウネニ(イナウを作る材料)を選び、木の根元の方を向こうに向け、そのまっ白な木肌にイナウケマキリの刃を斜めに当ててすーっと手前の方へ引くと、三十~四十センチくらいの長さの細いらせん状の木の房ができます。

木を少しずつ回しながら五~七本削っては指先でつまみ、先の方を八センチくらい残してぐるぐると撚りをかけます。撚りがもどらないように膝で押さえては、次々と削りながら撚ってゆきます。この撚った房が木の周囲にまんべんなくでき、十五~二十本くらいになったら根元をとがらせてできあがりです。

サパンペ(イナウル)(冠)。

サパンペは、アイヌの成人男性が儀礼の際に着用した冠である。身に着けた者の言葉を補って神々に伝えるという、アイヌのシャーマニズムにおける呪具である。

サパンペはアイヌ語で「頭に有る物」(サパ・ウン・ペ、sapa-un-pe)を意味する。また、イナウに因んでイナウル(inawru)とも呼ばれる。

形状は鉢巻に似ており、頭全体に被るのではなく外周を覆うものである。ヤマブドウの蔓の皮を捩じり上げて大まかな形を作り、額の部分にはヒグマやキタキツネなど動物の頭部を模した木彫を取り付け、周囲は楊やミズキの材を削ったキケ(イナウの削り花)や、シナノキの樹皮や蒲の茎をコイル状に編上げた物、日本本土産の布地、あるいはサメの歯などで飾り付ける。

サパンペは日常的に着用するものではなく、イオマンテなど重要な祭礼、あるいは客人を迎える時などハレの場で用いられた。渡島、胆振、日高など北海道南西部では儀礼に参加する成人男性の多くが着用した。

 

平取町立二風谷アイヌ文化博物館⑤食生活 住生活



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