三の丸尚蔵館。国宝・雲紙本和漢朗詠集 伝行成筆。東京都千代田区千代田(皇居東御苑 内)。
2024年3月14日(木)。
まさに、この御物本《雲紙本和漢朗詠集》が3月15日に文化審議会から国宝指定を答申されたという新聞記事を読んで驚いた。
和漢朗詠集は平安時代中期の歌人・藤原公任が漢詩の秀句と和歌をまとめた詩歌集。上下2巻が完全な形でそろっており、国文学史や書道史上、極めて貴重とされた。もともとは藤原道長の娘威子入内の際の引き出物の屏風絵に添える歌として撰集され、のちに公任の娘が藤原教通(道長五男)と婚姻を結ぶ際の引き出物として、朗詠に適した和漢の詩文を達筆で知られる藤原行成が清書し、それを冊子として装幀されたものといわれている。
源兼行(かねゆき)は、平安時代中期の貴族・能書家。陽成源氏、上総介・源延幹の子。官位は正四位下・大和守。陽成天皇の第六皇子である大納言源清蔭の孫で、能書家でもあった源延幹の子として誕生。
当時第一の手書きと称され、位記(位を授ける際に与える文書)や上表文の清書、願文(祈願の意を表す文書)の執筆、色紙形や門に掲げる額の揮毫などを担当した。後冷泉・後三条・白河の三朝にわたり、大嘗会の悠紀主基屏風の色紙形の揮毫を行っている。宇治平等院鳳凰堂(阿弥陀堂)の色紙形の執筆やその筆跡から「桂本万葉集」や「高野切」第二種など一連の古筆が兼行の筆によるものとされている。
2024年3月12日(火)から14日(金)まで東京に行ってきた。主な動機はサントリー美術館で開催されている「織田有楽斎」展鑑賞のためだが、それだけではもったいないので、あれこれ考えた。横浜の兄の自宅へ行って様子を見ることと、大学時代の友人2人と会うことは決定。
年末から検討したが、「織田有楽斎」展の優品は会期後半の2月下旬から出陳だった。3月24日が会期末だが、最終週は、旅行適期になるので各方面が混雑するだろう。それで、その1週前を選択した。暖冬であれば、サクラも早く咲くかもと思ったが、現在の予測では3月22日が開花予定日らしい。
東京観光は博物館・美術館を含めほとんど回っているので、離島を考えてみた。小笠原諸島父島・母島は15年以上前に行っているので、八丈島・青ヶ島、式根島・神津島あたりを検討してみた。問題は宿泊費を安くできるかどうかだ。ネットで見ると、キャンプ場のテント泊は無料だった。テントは1996年に購入したイシイのテントがまだ使えるだろう。4万円だったが、登山で8回ほど使い、山小屋の宿泊代よりは安くなった。しかし、今は心臓病の身障者である私には40ℓザックはかつげない。そこで、キャリーカートに収納して転がせばいいと思った。ただ、シュラフは嵩張って重い。最低気温が20度ほどだったら、シュラフカバーで十分だろう。そういう季節を狙うことにして、離島案は却下した。
東京の宿泊代は高い。マンガ喫茶・ネットカフェの「快活クラブ」が各地にある。12時間で3500円ほどだ。自宅近くにもあるので、会員証を取得して、予約した。ただ、クチコミを読んで見ると評判が悪い。そこで、キャンセルして、蒲田のカプセルホテルを予約した。1泊3300円で2泊。楽天ポイント700円を使用。
以前はマンスリーマンションを使い、月単位で全国県庁所在地で暮らしながら旅行することも考えたが、カネがなくなった。東京都区内はマイカー観光は困難。道の駅「八王子」で宿泊し、身障者無料の都区内の都営駐車場にクルマを置いて、JR・メトロを利用したい。
1年ほど前に、「Tokyo Subway Ticket」という外人観光客用・関東民以外用のお得切符を知った。72時間1500円、48時間1200円で地下鉄2社乗り放題。今回は48時間用をコンビニで購入して利用した。
名古屋からの往復は、JRが身障者半額になる。高速バスは乗換え不要の長所がある。夜行バスは鬱陶しくなってきたので昼行の方がいい。東海道線は乗換えが多い。飛び込み自殺などによるダイヤ混乱がある。時期により青春18切符が安い。往路は、横浜で途中下車することにしたので、東海道線にした。金券ショップで18切符を買う時間が惜しかったので、当日、駅で乗車券を購入した。半額で3190円は良かったが、名古屋市区内→東京都区内なので、蒲田で前途無効になることに気付いた。復路は、JR高速バス。新宿バスタ発にしたかったが、適便がなく、東京駅発。ネット会員価格・身障者半額で2700円。13時30分発で名古屋駅に19時10分ごろ到着した。
で、東京観光は、新設された夏目漱石・森鷗外の記念館を当初検討したが、最近関心を深めた考古系の博物館ジャンルで検討してみた。江戸東京博物館は休館中。多摩の東京都埋蔵文化財センターは、この期間のみ休館していた。そこで、考古学関連の明治大学博物館と國學院大學博物館を見学することにした。
3月10日にEテレ「日曜美術館」がアンリ・マティス特集だったので見た。マティスは、「色彩の魔術師」といわれるが、コペンハーゲンかストックホルムの王立美術館で数点を見て、なるほどと納得した。また、ニューヨークの近代美術館で「ダンス」を見たときも衝撃を受けた。本当にダンスを踊っている躍動感を感じたからだ。ちょうど、国立新美術館でマティス展が開催されているので、行こうとネットで調べると、当日2200円が身障者無料だったので微笑んだ。
三の丸尚蔵館は、20年ほど前に見学している。昨年秋に改修開館したとき話題になって、行きたいとも思って、ネットで調べたが行かなかった。が、やはり行ってみるべきだと思い行くことにした。
皇居三の丸尚蔵館開館記念展。2023年11月3日~2024年6月23日。
第1期:「三の丸尚蔵館の国宝」2023年11月3日~12月24日。
第3期:「近世の御所を飾った品々」2024年3月12日~5月12日。
第4期:「三の丸尚蔵館の名品」 2024年5月21日~6月23日。
入館料1000円。日時指定予約制、来館前にオンラインによる事前予約が必要。無料入館者も事前予約が必要。ただし、障害者手帳等を持つ本人およびその介護者各1名の予約は不要。
地下鉄「大手町」から大手門をくぐり、三の丸尚蔵館前に着いたのは、9時40分頃だった。10時からの入場者が列をなしている前を、障害者手帳を水戸黄門のように見せて、中に入った。予約も入館料も要らないことは快適である。皇室崇敬の念がいよいよ高まってしまう。
内部は2室しかない。2室で終わりなのかと、思わず職員に尋ねてしまった。ついでに、今回の目玉は、と尋ねると藤原定家筆の国宝「更級日記」写本、とのこと。たしかに、見逃してしまいそうな位置である部屋の中ほどにあって、最後に鑑賞して、これが「更級日記」か、大名茶人が好んだ定家様本家の特徴ある「の」の字はこれかと思った展示品であった。
御物は、国宝ではないのでは、と尋ねると、管理・運営が宮内庁から独立行政法人国立文化財機構へ移管された結果、国宝指定されたという回答に、ああそうだったな、と思い出した。伊藤若冲の動植綵絵は5月21日から展示されるとのこと。
国宝・更級日記は、東山御文庫に伝えられてきた 藤原定家による写本、通称「御物本」である。他の現存する写本は全て御物本の系統である。すなわち異本の類は一切なく、その点において例外的な古典である。
このあと、時間に余裕がありそうだったので久し振りに東御苑を見学した。