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さなえのうた

歌いながらあちこちに出没します♪

フィガロの結婚:原作

2020-11-20 | オペラ研究
フィガロの原作、
1952年に初版が発行されたものを所有していると先日書きましたが、
(持っているのは、もちろん改訂版で今世紀に増刷されたもの)
21世紀に訳されたものをゲットしましたっ!

大修館書店から発行されている、鈴木康司さん訳・解説のものです。
ISBN 978-4-469-25080-0
2012年に初版が発行されています。
鈴木さんは『闘うフィガロ~ボーマルシェ一代記』の著者でもあります。

いろいろ読んだのですが…これが一番というか唯一、
訳し方がいいと思いました。


フランス語って、翻訳が難しいんですよぉ…。



原作におけるフィガロの最初のセリフを
ほとんどの訳者は「19歩と26」と訳しています。
この「歩」は、「ピエpied」のことであり、
長さを測る昔の身体尺で、約32センチです。
足のかかとからつま先までの長さですね。
英語のフィートと同じ測り方です…が、
1フィートは約30センチ…フランス人の方が足が大きい?

1尺も約30センチです。
手を広げた時の親指の先から中指の先までの長さが由来だそうです。
…アジア人は手で測るけど、西洋人は足で測るのね…。



「19ピエと26」
この「と」は接続詞 et であると思います。

英語の and にあたる et には、
そして・と・加えて・さらに…いろいろな訳がありますが、
鈴木訳でのみ、この et を「かける」と訳しています。

「19 pieds et 26」を、「(幅)19ピエ、(長さ)26」と訳すべきだと思うのですが、
それを的確かつシンプルに訳しているのが鈴木訳です。

鈴木訳の原作本、お薦めです
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Nr.1の小道具~トアアズ~

2020-11-03 | オペラ研究
フィガロの物差しを検証してきました。

岩波文庫(赤522-1)の『フィガロの結婚』では
(※ボーマルシェの原作:辰野隆訳)
フィガロは“トアアズ”を手にしているとあります。




~原作の翻訳本~

この文庫本は1953年に出版されたもので、
ボーマルシェのことも『ボオマルシェエ』と表記しています。
改版が1981年に、他の訳者によるものも2012年に出ているようです。
…まだ入手できていません。




~トアアズ=toise~

『トアアズ』とは、『トワズ』のことだと推測されます。
トワズ toise については辞書にも載っています。
ウィキではトワーズとして記載があります。

トワズは昔の長さの単位で、約1.95m。
wikiでは「おおむね2m、スイスでは1.8m」とされています。
岩波文庫本では「約1.94m」とされています。

ようするに身体尺で、
成人男性が両手を広げた長さと定義されているようです。

両手を広げた長さは、身長とほぼ同じ。
よって、トワズは身長を目安にして測るものということになります。

日本でいうと…尋。
「ちひろ」の「ひろ」ですねぇ。
約1.5mまたは約1.8mだそうです。

昔の日本人の方が、昔のヨーロッパ人よりも、
身長が低かったんですねぇ…。




ものさし?

原作では身長を基準としたトワズを使用していました。
どうしてモーツァルトのオペラでは、
もっと小さな単位から測り始めるのでしょう。

身長よりも全然小さな物差しを、なぜ使っているのでしょう。



やっぱり…?
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相対×絶対=完全

2020-11-01 | オペラ研究
~2~

2という数字は、相対するものを表す数字でもあります。

男と女
新と旧
上と下
右と左
光と影
プラスとマイナス
積極性と消極性
生と死
善と悪
表と裏
静と動
開と閉
白と黒
肯定と否定
有と無
・・・・・・

両極にあるもの、相対するもの、
相違するもの、互いに補うものを表しています。




~3~

3という数字は、聖なる数字だと言われます。

心・技・体
天・地・人
天上・地上・地下
縦・横・高さ
神・キリスト・精霊
知力・体力・時の運
赤・青・黄

絶対を表す数字でもあります

三権分立
三種の神器
世界三大・日本三大
御三家
三部作
三原則





~2×3~

2が相対、3が絶対を表すとすると、
2回繰り返すことを3つ行うフィガロの測り方は、
相対と絶対の積になるので、
完全になるような気がします。


やっぱり、直角二等辺三角形で測っていることには意味があるような気がしますねー。




~相対と絶対~

音楽家として、
絶対音感がある人はたくさんいます。

が、絶対音感に頼り過ぎてはいけません。

A=440なのか、A=442なのか、
自分が合わせるべき音程に、合わせなければなりません。

今の体温、今の心拍数、
自分の今の体調によって、楽器の状態も変わります。

相対的に音を取る訓練を重ねましょう。

…余談でした。
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3つの試練

2020-10-31 | オペラ研究
フィガロとスザンナは、結婚式を迎えるにあたり、
3つの問題をクリアしなければならないと書きました。


3つの問題…これって、
モーツァルトの他のオペラでも見られるんです。




~魔笛~

先ずは有名な魔笛。

神に仕える男という意味の名を持つタミーノと
神に仕える女という意味の名を持つパミーナは
3つの問題=試練を受けなければなりません。

沈黙の試練、火の試練、水の試練です。

火の試練と水の試練は、あっと言う間に通過できてしまうので、
試練である感じは少ないのですが…。

いずれにせよ、
この3つの試練を経て、二人は結ばれます。


魔笛は他にも『3』にまつわる事柄がたくさん。
3人の侍女、3人の童子、3回繰り返される和音…。




~ドン・ジョヴァンニ~

ドン・ジョヴァンニにも3つの問題が課されます。

先ず、アンナ。
…その父親を殺めることになります。
次にツェルリーナ。
…騒がれて、悪事が暴露されることになります。
最後にエルヴィーラ。
…妻の説得に応じずに、地獄に落ちることになります。

更生のチャンスが3回もあったとも言えますねぇ。
ですが、仏の顔も三度まで、
ドン・ジョヴァンニは地獄に落ちます。




~3つの試練~

3つの問題をクリアして、
晴れて結ばれるのか、はたまた地獄に落ちるのか。

魔笛にしろドン・ジョヴァンニにしろ、
3つの問題をクリアしようとする時に、
男と女がかならず共に関わっているのは興味深いです。


原作では一言で終わっている“フィガロが部屋の寸法を測るシーン”が、
モーツァルトのオペラでは拡大されて、
2重唱1曲分になっています。

これは、なにかを象徴しようとしているように思えてなりません。
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3つの三角形

2020-10-29 | オペラ研究
フィガロとスザンナは、結婚式当日を迎えました。

めでたく結婚する前に、二人は
3つの問題をクリアしなければなりません。




~第一の課題…伯爵~

まず、伯爵問題です。

第一幕第一景、
Nr.2の2重唱『Se a caso madama la notte ti chiama 夜、奥様がお前をお呼びの時は』及び続くレチタチーヴォで、
伯爵がスザンナとエッチしようと画策していることが
明らかになります。

バジリオを使ったり、初夜権を復権させようとしたり…。

Nr.1の2重唱『5…10…20…』でフィガロが寸法を測っていた部屋も、
伯爵の悪知恵から与えられたものでした。

フィガロとスザンナ、そして伯爵、
この三角関係を、あるいは恋路の障壁を、
二人は解決しなければなりません。




~第二の課題…マルチェリーナ~

次に、マルチェリーナ問題です。

第一幕第四景、Nr.4のアリア前のレチタチーヴォで、
マルチェリーナが借用書を武器に
フィガロと結婚しようとしていることが明らかになります。

Nr.4のアリア『La vendetta 復讐だ』でバルトロがそれに加勢し、
Nr.5のケンカの2重唱では女二人のバトルが勃発し…。

フィガロとスザンナの結婚を阻止しようとするマルチェリーナ、
この三角関係を、あるいは未来の嫁姑問題を、
二人は解決しなければなりません。




~第三の課題…伯爵夫人~

最後に、伯爵夫人問題です。

第二幕が始まると、アリア『Porgi, Amor 愛の神よ、ご覧あれ』で、
伯爵夫人が夫の浮気癖や、自分の身の上を、
嘆いていることが明らかになります。

子供が出来ず、セックスレスになり、
冷めてしまった夫の愛情…。


…もしかすると、伯爵の方が無精子症かもしれませんが…。


伯爵夫人はスザンナになりすまして、
夫と会おうとします。


スザンナを利用して伯爵の愛情を取り戻そうとする伯爵夫人、
この三角関係を、あるいは
将来二人が抱えることになるかもしれない不倫問題・セックスレス問題を、
二人は解決しなければなりません。




~2×3~

“3つの”というのは、とても象徴的だと思います。

そして、それを二人で解決するという図式も。


フィガロの測り方が、2×3だということは、
とても象徴的だとも思えてきませんか?
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