備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『ケンヒル版・オペラ座の怪人』(2018)

2018-09-01 03:07:47 | 他言語ミュージカル
『オペラ座の怪人』関連作品まとめはコチラ



知ってる。
ツッコんだら負けなことは。
でも、ツッコミだらけなアラスジ。


ジャムが稽古をしていると、
突然、謎の物体が、効果音と共に落下。

怪人の存在を示唆する不穏な
幕開けだが、何故に、矢文?

その後、支配人が客席上手通路から登場。

階段を数え間違い、突っかかる
という伝統的なボケを披露した後、
キャスト紹介と言わんばかりに、

支配人の秘書っぽいレミイや、
常に踊るバレエダンサーのジャム、
台詞がお姐キャラのメフィストフェレス、
言動、足下が覚束ないドゥビエンヌ、

更に、支配人の息子、ラウルが登場。

と、この時点でALW版と違うのは、
支配人は一人。ラウルとは親子設定。


”ようこそリシャード様、光栄です”
ここまでに登場した、全てのキャストで一曲目。
掴みの一曲で、歌い始めがドゥビエンヌという。
この時点で、軽いノリの楽曲という印象に。

更に、マダムも登場し、
怪人の忠告をリシャードに話すも、
リシャードは相手にしない。

メフィストフェレスが、
『お前は存在しない』
と叫ぶと、山びこが呼応し、
同じ台詞を繰り返す謎の声。

ポイントは、-t の発音。
あ、怪人役者の発声と分かる。



皆が帰ると、ラウルが
クリスティーヌを呼ぶ。
実は、既に恋仲設定な二人。
ただ、損得勘定で付き合ってる感、満載。


『ファウスト』公演日。
五番ボックスで見始める支配人親子。

劇中劇。
”呪われよ、この世の喜びを追求した かどで”

年老いたファウストが登場。
が、直ぐに吊されたメフィストフェレスが登場し、
公演は中止に。ただ、幕を降ろせ、という台詞は
有るも、それらしい描写が無いため、公開の現場検証状態。

そして、この舞台の喜劇説明で登場する、
有名な台詞、『絹100%』

二回観て、二回とも笑いが、
おきているので、お約束ギャグと言えど、
破壊力が有る台詞らしい、コレ。



心配したラウルが、
慌てて、クリスティーヌの楽屋に。
しかし、謎の話し声と、
謎のシルエットが見える。

というか、何のシルエットなのか、
それがよく分からず、怪人の帽子?

そして、不安を煽るキーボードの音楽に、
それを止めろ、と、メタ的なツッコミをし、
挙げ句、楽屋に入る別ルートを聞き出す。

そんなメタ的な展開を放置し、歌うラウル。

”彼女は何ということを!”
これが、完全にオペラ発声で、
この公演で、オペラ発声枠と印象づける子爵。

一方、楽屋に入るもクリスティーヌの姿はなく、
鏡に写る怪人が、ラウルをあざ笑う。
とりあえず、ダミーでなく、体型から本人と確認。



後日。
メフィストフェレスの死因は事故と
認定させ、とりあえず、ご機嫌の支配人。

事情を知る、クリスティーヌを呼び出すが、
現れたのは、何故か、馬丁。

そして、昨夜の出来事を歌い始める。

”昨晩遅きに地下室で”
馬丁のソロ。
ここで、ミュージカル発声でも、
オペラ発声でもない、歌劇な発声で、朗々と歌い始める。

呼び出されたクリスティーヌが、
ラウルを頼るも、訪ねた時に、
楽屋に居なかったクリスティーヌを疑い、
支配人に責められても庇えない。

この辺も、損得勘定で付き合ってる感、満載。
更に、机に現れる謎の手が、支配人の手紙をすり替え、
いよいよ、怪人の存在を信じ始める支配人。

そして、この手が次の墓場シーンの伏線に。
というか、机の下は鏡かと思ったら、
普通に空洞なので、どうやって手を出してるのか、
ちょっと、気になる(タネも仕掛けも分からない)


墓場に駆け込むクリスティーヌと
それを追う、ラウル。

”突然に私の夢はすべて消えて”
ラウルに捨てられたと、歌うクリスティーヌに、
クリスティーヌの師、音楽の天使の存在を信じるラウル。

ラウルは一端、帰った風を装い、
クリスティーヌが呼びかけると、
歌声が聞こえてくる。

”高い高いところから”
完全に声のみ、空から聞こえてくる怪人の声。

姿は(一応)見えず、声だけ聞こえるので、
これは録音なのだろうか、という定型な疑問のまま、
一切、姿を現さず、怪人ソロ、折り返し地点に到達。
(ソロは二曲しか無いので)

ラウルが一人残っていると、
小石が飛んでくる。そして、また、手だけ登場。
かと思いきや、怪人と掴み合いになるも、
墓守の登場で何とか、助かるラウル。

一方、怪人は何故か、客席を通り、退場。
その振動は、上手階段を降りているのに、
下手に座っていて、分かるほどの揺れ。

墓守との会話後、
怪人が現れた墓場に落ちていくベタな墓守。



後日。
カルロッタが声が出ないと訴える。
しかし、もう、公演を潰したくない支配人は、
カルロッタの口パクにクリスティーヌを指名。

”声を潰したというけれど”
アンサンブル全員。

ここでファウストが、
カルロッタへの皮肉を歌う。

と、この時点でALW版と違うのは、
カルロッタをリスペクトする人が居ない。

カルロッタの代わりに、
クリスティーヌがオケピで歌うことに。



劇中劇。
”宝石の歌”
声だけはクリスティーヌ。
オケピ内でスタンバイするが、
一応、ドゥビエンヌが誘導する。
ただ、三階席からじゃないと見えない。
(え、その芝居、必要?)

このとき、五番ボックスの
支配人は舞台のカーラを、
ラウルはオケピのクリスティーヌをガン見。

カーラが舞台に居る事に不満な怪人はシャンデリアを落とす。
と、この時点でALW版と違うのは、
カーラ、まさかの途中退場。

ラウル、五番ボックスから、
軽やかに飛び降り、オケピに落ちて、
クリスティーヌをお姫様抱っこ。



屋上で泣くクリスティーヌ。
しかし、そこに現れるのは、鳩男。
ラウルでは無いのがポイント。

そして、像の影に隠れ(る気の無い)、怪人登場。

”制御できない運命”
一幕の山場にして、一番のツッコミ処、
後ろに怪人が居るのに、気づかない二人。

その後、像の上から飛び降りる
という、この舞台一番のアクロバティックな動きと、
この舞台一番の物音を立て、飛び降りる怪人。

そこに現れてしまう不運な鳩男。
二度、袖に追いやられ、落とされる。
(二度目は人形と分かる、軽さ)



アントラクトで指揮者はキーボード。
そのため、指揮をしない指揮者。

二幕
懲りずに『ファウスト』観劇する支配人親子。
(外見のみ)若返ったファウスト。
このセリフは皮肉なのか、どうなのか。


”ああ!あれはいとしい方の声だわ!”
このファウスト、クリスティーヌを邪険に扱う。
悉く、クリスティーヌよりも目立つような状況。

が、途中で電気が消え、電気付くと、

”彼女がいない!”
ここで、アンサンブル総動員で
カンテラ片手に客席降り。

そのカンテラを照らし、
客席でのぞき込む面々。
ここで、客と絡む役者としない役者に分かれ、
更に、オフマイクで、ボソボソと呟く役者も。

そして、マダムギリー役に謎の紅茶、占い。
なぜ、よりによって、紅茶を使用。
というか、ペルシャ人じゃなく、マダムなのか。



クリスティーヌの楽屋。
結局、紅茶占いでは具体的な事を分からず、
クリスティーヌの楽屋に、ヒントを探す。
そこで、ペルシャ人が実は怪人を探していること、
その手がかりを掴んでいることを話す。

なのに、アッサリ、
レミイが抜け道を見つけるが、
戻れず怪人によって、背中を刺される。

この事から、地下に降りるときは、
手を前に出し、投げ縄に注意するように。
掛け声は『はっ』と言うように、
という独特のポーズが登場。

このポーズはALW版でも有ったが、
大変にコメディに仕上がってしまうケンヒル版。



一方、怪人の漕ぐボートで、
(足で動かすアナログタイプ)
地下の湖に連れ去れ、
ボートの桟橋に縛られるクリスティーヌ。

”陽の光が輝く場所に”
怪人に訴えるように歌うが、
そのままボートで去っていく怪人。



クリスの楽屋の鏡は舞台の五番ボックスに繋がっていた。
更に潜っていくと、今度はボイラー室に。
一方、そのボイラー室には、ボイラー係の死体が。

”醜い顔に生まれた男”
そこで、ペルシャ人により、
怪人の過去や何故探しているのか話す。

実は、怪人の兄弟で、
父母を怪人によって殺されたため、
その復讐のために、探していたのだった。

マダムもその探索隊に加わるが、
何故か、ここで支配人との仲が発展。
その際、友達は居ない、というキーワードが。
(最後の歌タイトルの伏線?)



ラウルがマンホールを見つけ、
その穴からクリスティーヌの歌声を聴く。
しかし、そのマンホールは開かないため、
調べると譜面のような跡が読める。


と、ここでラウルの首に投げ縄が。
散々出てきた『はっ』という
独特のポーズをしないために襲われる。
こういうところはALW版同様、学習しないラウル。

ペルシャ人に助けれられ、
一命はとりとめるも、
マンホールの謎が解けない。


”暗くさびしい影に隠れて”
そこで、ラウルは歌う。
すると、マンホールとは関係ない、
扉が開くという、軽いジョーク登場。



その道を進むとジャングルが広がっていた。
それに驚いていると、謎の小箱を発見。
その中には、人数分の投げ縄が入っていた。

と、それを開けた瞬間が落ちてくる壁。
そして、閉じこめた怪人は火をつける。

”何とひどい死に様”
ペルシャ人とメフィストを中心に、
これから死への不安を歌う面々。



一方、地下の礼拝堂に連れてこられる
クリスティーヌは怪人からプロポーズを受ける。

”我を見捨てず、ここに留まれ”
クリスティーヌに拒絶されるも、
司祭を謎の方法で、連れてくる。
と、何故かセットで女性も。

結婚式を無理矢理あげさせようと、
したところで、死んだはずのペルシャ人達が現れる。
実はレミイの助けで、生き延びていた。

囲まれた怪人は、咄嗟に、
クリスティーヌを人質に取る、

しかし、逃げられないと悟った瞬間、
持っていたナイフで、自分を刺す。

”我を見捨てず、ここに留まれ(リプライズ)”
死にそうになりながらも、
歌う怪人に、寄り添うクリスティーヌ。
そして、息絶える怪人。


”彼は友なしでは去らない”
そんな怪人に、死ぬ直前には、
友(クリスティーヌ)が居たと、
マダムには居なかった友達の存在を歌い、幕。


カテコ。
全員が登場後、怪人は後ろを向いて、
仮面を外すと、出演者が驚き、
客席を向くと、普通の素顔という演出。

で、最後に、皆で、
”ようこそリシャード様、光栄です”
を歌い、終幕。



Jazzy Axton@ジャム
特に、ソロは無く、
常に踊っているダンサー。

しかし、ラウルを狙っており、
ラウルもクリスティーヌが居るのに、
ジャムを気にしているという設定に。

そんな本編と全く関係ない、
サイドストーリーも有りそうだけど、
流石にそれ以上は展開せず、
何故か、ファウストと行動を共にする。


Edward newborn@支配人
新しい支配人。
このケンヒル版では、
結構、重要なキャラで、
怪人探索にも、進んで参加。

何故か、マダムと恋仲になるが、
そこで明らかになる、男やもめ設定。

なお、閉じこめられ、最後、暗転したとき、
暗闇のなか、マダムの手を引き、
袖に誘導するジェントルさ。


歌は基本、ミュージカル発声。


Nigel godfrey@レミイ
支配人の秘書。

途中、マダムから金を預かり、
いつの間にか、ポケットの二万フランを、
取られるという、謎の小芝居が。

このシーンが、どういう意味なのか分からない。
ピンハネしようとしたら、バレたのか、
そもそも、最初からそういう役という設定か?

その後、刺されるも、心臓が逆にあったために、
閉じこめられた支配人達を救う重要な役目を担う。


Lloyd scott@
ドゥビエンヌ、馬丁、司祭、ボイラー係り、墓堀、老人(鳩男)

6役だが、ボイラーと墓堀、鳩男は怪人によって殺される。

ソロパートもあるキャラも居るが、
その歌い方に、こまつ座の既視感。


Cameron barclay@ラウル
言わずとしれた、怪人の恋敵。
が、ジャムに手を出したりと、
クリスティーヌ一筋では無い設定。

それ故に、なんか『LND』の
アル中ラウルに、繋がるラウル。

ともかく、オペラ発声で美声。


Russell dixon@メフィストフェレス、ペルシャ人
全身タイツの悪魔はお姐キャラ。
なのに、ペルシャ人では怪人を追う寡黙な男。

こちらも、オペラ発声枠。
が、別にオペラ歌手な訳では無い。


Michael mclean@ファウスト
鼻のデカいファウスト。
その後、ジャムと一緒に行動。

ソロは無く、今回の公演の演出家。
だとすると、妥当な配置かも。


Helen moulder@マダムギリー
皆が呼ぶときはジリーだけど。

怪人を幽霊と思い、従ってきたが、
人間と気づいた時、探索側に加わる。


Helen power@クリスティーン
正確にはクリスティーン。
一人、地で行くヒロイン路線。

高音も難なく出すし、オペラな楽曲も対応。


Caroline tatlow@カルロッタ
他のverに比べると、結構、地味な役。

どちらかというと、司祭の
酔っ払いの相手役の印象が強い。


John owen jones@怪人
基本、全部、本人が演じる。
もちろん、手のシーンも含めて。
それでも、声だけの出番や、出てきても、
直ぐに退場とか、そんなのばかり。

で、一番、演技をするのがラスト。

ここで共に暮らそうと、訴えるが、
仮面を取られ、拒絶される。
ここで、ALW版の一幕のような、
匍匐前進になるかと思いきや、
サッと取り返し、一方的に結婚式に。

マジメに結婚式をしようとする怪人、
もう、諦めの境地のクリスティーヌ、
普通に進めるために発生している障害を、
ムリヤリ通そうとする怪人に振り回される司祭。

この関係を表現するためには、
三角関係相関図が必要なのだけど、
改めて、実際に見せつけられると、
色々と問題があるのに、押し通す怪人。

一人、マジメに演技しているだけで、
コメディ風味に見えてくる不思議。
そこに一種のツッコミという役割を感じてしまう。


ALW版の怪人を観たときの、感情過多タイプ
という印象は、ケンヒル版でも変わらないし、
三階から観ても、一階から観ても、ブレない。

もう、怪人の持つ設定が、
本人の中で固定してるのかと
思っていたが、本人曰く、
毎回、変えてきている、と。

多分、近くで観ないと、
それは分からないのかな、
と思いつつ、先入観が有ると、
逆に成立しない演技プランなのかも。

ま、それを感じるまでに、
この作品に通い詰める可能性はゼロだし、
この作品の良さ把握する事は、
ちょっと難しさを感じる。

それは、誰が怪人を演じても難しいが、
ボケタイプの演技をする役者が演じる怪人は観たいかも。
なかなか成立しない配役では有るのだが。





ケンヒル版、初見。

映像では観た事が
あったけど、生で観るのは初。

全て既存のオペラ楽曲を、
ミュージカル発声で歌うのかと思いきや、
人によっては、そのまま、オペラ調で歌ったり。

なので、ドイツの地方劇場に行くと、
出演者の人数不足のため、
普段はオペラに出ている人が、
ミュージカル作品に出演するという事が有る。

しかし、来日ミュージカルの規模で、
こういう二種類の発声が混在するパターンは珍しい。


オペレッタを観たことがないので、
どういうモノなのか、ハッキリ区別出来ないが、
観ていて、こまつ座を観ている感覚に。

あれも、既存の曲に、
日本語の歌詞を付けていたので、
ちょっと、似ている。

ミュージカル発声でも、
オペラ発声でもなく、
歌劇発声と感じたのはそのセイか。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『黄昏』村井@ノーマン | トップ | Kazutaka Ishii ミュージカル... »

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

他言語ミュージカル」カテゴリの最新記事