備忘録

舞台の感想を書いています。(ネタばれ有り)Twitterはdacho115。

『ハーパー・リーガン』

2010-10-03 23:02:30 | 国内ストプレ
ある主婦の非日常な2日間の話。
父親の最後を看取るべく、休暇の申請をするハーパー。が、その休暇は認められない。しかし、父親の危篤を聞き家族に黙って、病院に駆けつけるものの臨終には間に合わない。呆然とするなか、慣れないバーや出逢い系サイトを利用するが、喪失感は埋められず、関係が悪化していた母の元へ。しかし、慕っていた父親像が現実と異ることを母から聞かされ、そのショックから葬式も出ずに戻る。そして、過ごしてきた2日間を夫に正直に話し、また日常へ。一方、夫は全てを受け入れ、幕。

小林。何時も通りのハキハキした話し方。それに加えて赤いブーツを履き、途中から皮ジャンを着ると、普通の主婦には見えない。もちろん、働く母親という役にも見えなくないが、テーマであるルーティンワークから逃げたい主婦には無理があるような。ただ、話し方・舞台での佇まい(雰囲気)は好み。喜劇か三谷作品で一度くらいは観たい

美波。娘と病院職員とで、かなり役柄が異なる。イメージとしてはゴスな格好の娘役があっている。舞台向けの話し方ではないのかもしれないが、それでもこのくらいのキャパの劇場なら、なんとかなる。結局、学校での性格(実は学内では真面目)が分からず、単なる反抗期少女なのかは謎。ハーパーと母親との関係の対比の為だけに居るような役に。役者によってそこは異なるものか?

山崎。二役だが、あまり明確な違いを出さない。なので、二幕冒頭が一幕の役と違うということに気づかなかった。話し方等はテレビと変わらず、聞き取り易い話し方で、旦那役も不倫相手役もそつなくこなす。両方とも良い人の役なので、徹底的な嫌な役を観たい。そして、歌い踊る。

大河内。あのイヤミな店長がイメージ通り。それ故、二幕の母親の不倫相手役の爽やかぶりが意外。こちらはナイロン辺りに出る時の役の方が好きかも。

間宮。映像系の人だとわかる台詞廻し。役柄的に世間を冷めた目線で見ている役なので、あの話し方でも問題なし。

福田。初。この芝居では一人異色な役だが、長塚演出にはピッタリ。一役だけなのだが、ちょっと勿体ない起用法。

木野。こちらも一役のみだが、かなり贅沢な使い方。この人の演技の幅は広いので、今回はこういう使われ方かと。娘から理解されない母親役だが、ウザ過ぎず、かといって、突き放すわけでもない、微妙な鬱陶しさ加減が丁度よい。

女性主役の自分探し的な話を久々に観た。最終的に主人公の内面変化がメインになるので抽象的になり、舞台で観るには辛いかと思ったが、小林聡美の演技でそれはカバー。ただでさえ、翻訳モノ特有のその国でないと通じない社会環境や制度があるのに、それに加え、主婦の日常からの脱出では共感は無理。ただ、作家が男性というのが意外でもあり、それゆえに主役が現実では有り得ないキャラになっているか?
また、舞台セットは簡易。打ちっ放しの壁を回すことで時間の経過や圧迫感を表現。どこまでが長塚演出によるものなのかは不明だが、何もないセットや作品テーマは最近の長塚作品に似ているような。最後のセット上昇に見られる舞台変化は『あぁ、長塚演出』と実感。
グロさや暴力的な処がなく、何故に長塚演出?と思ったが、゛家族゛がテーマとした時には、ピッタリな人選かも。それでも、灰汁もクセもない長塚演出だと、観劇後に何も残らず、逆にサッパリするものかと。
何時もの観劇後に残る長塚演出を期待するには、次回の『タンゴ』を観るべきか?

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