自転車ひとり旅★

自転車大好きなTVディレクター日記。

沖縄140km。

2018年11月13日 10時16分43秒 | チャリダー★



木曜日に沖縄入り


気温26度の中を 試走に出かけた






出場するのは140kmのカテゴリー
アマチュアのカテゴリーの中では上から2番目とはいえ
獲得標高は2200m
元五輪選手をはじめ 国内トップクラスの猛者が出場する激戦区だ


宮澤崇史さんに言ったら
「うわー、一番キツイレースですね」と
全てのレースの一番最後からスタートするため
タイムアウトが最も厳しい ということのようだ





五郎監督によれば
レース3日前に がっつり上げて走っておき
2日前からは軽く流して 疲労を取るのが良いという


10月に頑張って走ったあと
11月は強度の高い練習は控えていた
1週間も休めば 回復して体が軽くなるのかと思いきや
なんとなく力が入らずただただダルい
本当に走れるのか? という感じ

どうやらその体に鞭を入れるらしい


結構なペースでフンガワの上りを攻め
東海岸のアップダウンも攻める


スリープモードだった体に血液が回っていく
しかし 思いのほかパワーは出ない(汗)
男子部のモーレツなスピードについていけず 千切れた



ここから1人旅か…
仕方なく仕事モードへ
ロケハン(下見)しながら走る

ロケハンで大事なことに一つに 電波状況を確認することがある
何かあったとき どこに行けば電波が入るかを知っておけば
その後の動きが早くなる
残念ながらこのコース ソフトバンクの電波はほとんど入らない
(というかソフトバンクは全国どこへ行っても電波がない)
これは苦労しそうだ



と 文平くんが上り坂で なぜか歩いている





なんと ディレーラーが
折れてしまったという



このレース直前のタイミングで!
こんな事が起こるなんて!

と思っていたら 伊織くんが一言
「今日でよかったな!」

それまでのブルーな空気が吹っ飛んだ
前向きな奴というのは
チームの宝ですな



坂バカだより第1回に出演してくれた
中尾俊さん(あのあと沖縄に移住)に電話したら
電動アルテグラのリアディレーラーのある店を探してくれた


教わった名護にあるハブサイクルさんに駆け込むと
さらにバッドニュースが

ディレーラーが折れた時に
フレームのエンドも曲がり
さらにホイールが振れてしまっていた


フレームのエンドを持ってる人を なんとか探して譲ってもらい
バイクは1日入院
レースには間に合うが 文平くんがコース試走できなくなってしまった







サイズを測ると 私のポジションとそんなに変わらなかったので
サドルを下げて 私のバイクを提供することにした


私もコース全部試走したかったけど
文平くんが走ることの方が大事

その晩 どの坂が何キロで 勾配何パーセントなのかを
必死に頭に叩き込んで
脳内試走(笑)
世界中のロケでやって来たことなので
かなり効果あるはず…





宿はみんなで相部屋
とにかく食事が美味しく 安心して食べられる宿にした





男子部部屋
到着した途端に 荷物でぐちゃぐちゃ





シュガーの脚 すごい筋肉だ

消防士は24時間勤務を1日おきにするらしい
睡眠時間は常に不規則 その中で体を仕上げて来ている


伊織くんも 文平くんも
相当体を仕上げて来ている

みんな このレースに賭けているのだ





食事の時間は 五郎監督劇場
ひたすら自転車の話をしている





ポジションの話になると 実演
宿の娘さんたちが クスクス笑っていた





その後 いろんなチームの取材をし


レース前日 名護のメイン会場へ





受付をし ゼッケンなどを受け取る
畑中さんとか 元喜さんとか
なるしまの小畑さんとか
いろんな人と会って談笑





140kmカテゴリーは スタートが名護ではなく国頭村のため
バイクを前日に預けて送っておく
当日は手荷物と体ひとつでいけば良い






1年半 頑張って来たことが 明日出る


スタッフと撮影の最終的な打ち合わせをし
23時に就寝
沖縄の 聞いたことのない虫の声が
星空に響いていた






4時半起床
5時出発
6時に国頭村のスタート会場に到着


軽く心拍をあげる程度の試走
体重は57.5kg 悪くない
脚が軽い 筋肉がとにかく柔らかい
軽く漕ぐと220W出ていた
間違いなく 過去最高の自分がここにいる
今日は行けるかもしれない



スタート直前 いろいろあって焦ったが
なんとか男子部のオンボードカメラのスイッチを入れて回る

9時00分頃 210kmカテゴリーが目の前を通過
9時15分  140kmカテゴリー スタート





目の前で伊織くんが「しゃっす!」と気合を入れる
私も真似して「しゃっす!」と言ってみたが
恥ずかしくて 声がかすれて「…っす!」だけになってしまった(笑)




さあ いよいよスタートした沖縄140km
400人の選手がペダルにクリートをはめる音が
鳴り響く
パレード走行はなく リアルスタート
先頭を固めているシード選手たちがコントロールしているためか
無駄なスピードアップはない
良い感じで落ち着いて ゆっくりとスピードが上がっていく


私は撮影ライダーとして
オンボードカメラを付けて走っている
男子部の後ろに着こうと思っていたが
男子部はうまく3人で固まり
そこにMOTOのカメラが来たので
私は少し離れた場所で静観することに

バックポケットには大量の補給食
持って行こうか迷ったけど 何かあった時のために携帯も忍ばせた
これが後で役に立つことになるとは つゆ知らず



気をつけるべき落車ポイントは
スタート直後のトンネル2つ
そしてフンガワの上りに入る鋭角の右コーナーだ
トンネルは暗いため恐怖心が生まれ
ついブレーキをしがちだ
1人でも無駄にブレーキをすると 後ろも慌ててブレーキ
さらに後ろは もっと慌ててブレーキ
そして落車につながる
これを落ち着いて無事に越えれば 7kmの上り坂の間に集団は安定するだろう


トンネルが見えて来た
「トンネル落ち着いて行こうね!
 みんなで無事に切り抜けましょう!」
と声を出す
周りの大勢の選手たちが「オオー!」
と返してくれる
「落ち着いて行こう!」と
みんなで声を出し合って 無事にトンネルを通過


鋭角の右コーナーは
「ライン守って! 落ち着いて行こう」
とみんなで声を出し合う
ここも無事通過


そして坂道に入り ガツンとスピードが上がる

有名な普久川(フンガワ)ダムの上り
距離7.8km 平均勾配4.5%
140kmと210kmカテゴリーは
ここを2度上る


先頭集団は思いのほかゆっくりと上がっていく
パワーは270Wほど
しかし後半になるにつれ 少しずつペースが上がる
280Wを超えて苦しくなってくる
ここで無理しても後半タレるだけなので
残り1km地点で集団から千切れた


フンガワ1本目 18分40秒 280W

下りきったあとの緩いアップダウンで
集団からこぼれた選手たちを集めて
「回していきましょう!」とローテーション
先頭集団が見えて来たときは 歓声が上がった
ロードレースは1位を決めるレースですが
後ろの方にもドラマはあるのです


その後集団の中で 撮影しておきたい選手の後ろに張り付いて
いろいろ撮影
男子部の動きも確認して MOTOカメラマンにいろいろと指示を出す


2度目のフンガワでやはり残り1km手前で千切れる
なんとか集団が見える位置にいたが
下り坂で ゼッケンが剥がれかけてしまい
あたふたしていたら 置いていかれた


そしてまた こぼれた人たちを集めてローテーション
さっきとほぼ同じメンバーだった(笑)
ゼッケン1090番の平坦がめっちゃ速いお兄さん
黒 x 黄色系のジャージのメガネ男子
チームAriの超ベテランっぽいおっちゃん
仙台から30人ぐらいで来ているというチーム(ハヤサカサイクルさん?)のイケメン
この4人は積極的に先頭を引いてくれて
そして強かった
一緒にローテしてて楽しかったです



「付けるなら後ろに付いて!
 脚が回復したら少しでも前引いて!」
前からこぼれてくる選手たちに声をかけ 集団を作るも
坂道でバラバラになる
また集団を作るが
ローテーションのペースを無視して先頭を引くおじさんのおかげで
バラバラになる
そんなことを繰り返していたら 楽しくて
残すはあと30km
先頭からは10分差
撮影隊にも指示を出せたし
思ったより良い位置で走れていた




ちょっとした急坂を上った後の 下り坂でのこと


S字のブラインドカーブが続く下り坂で
スピードを落として 時速60kmぐらいで下っていたら
なんと側溝から 手が生えている


直感的に「あ…あれはやばい」と思い
後ろから誰も来ていないことを確認しつつ 急停車
走って戻ると 側溝にはまった人が
助けを求めて手を出していた


ギョッとした
ジャージも顔も血だらけで
側溝の中には 大量の鮮血が流れていた
「大丈夫ですか? 意識ありますか?」
と聞くと うなずいて
「はい 助けてください」
と答える

「コケてどれぐらい?」
「さっきコケたばかりです」

私は携帯を取り出し 画面を見た
なんと運の良いことか!
電波が3本立っている!


119番に通報
救急車を回してもらいながら ケガの状態を報告する
町から遠い山道のため 時間がかかるだろうという


すると 電話中に
もうひとり コーナーを曲がりきれず
壁に激突する選手!

「すいません、もう1人増えました…」

救急車を2台回してもらう間 もう1人のケガの状況も報告した




側溝から手を伸ばしていた選手に
「救急車を呼びましたからね 頑張りましょう」
と呼びかけると
「すいません 体が溝にハマって動けないので
 引っ張って出してもらえますか?」
という

私の2倍はあろうかという屈強な巨体を引っ張り出し
地面に横たえた



私は 時々けが人に声をかけて状況を見ながら
通過する選手たちに「スピード落とせ」のジェスチャーをし続けた
目の前を 大勢の選手が通過していく
知ってる選手の顔も ちらほら見かけた
1年前には あの選手ぐらい速くなりたい と思っていた選手が
私の5分 10分後ろにいたのだ



救急車はまだ来ない
すでに20分が経過し タイムアウトの時間が迫っていた
私の沖縄はここで終わるのだ
そう思ったら 涙が出た
不謹慎だが 涙が出た
でも この人たちを発見できたことは
ものすごい幸運だったと思う
だって 出場者の中で携帯電話を持っているのは
きっと私だけだから



側溝から生える手を見つけて ちょうど30分
大会の救護班の車両が来てくれた
私は彼らにケガ人たちを託して その場を後にした

大ケガをしている屈強な男性に
「必ず元気になって 絶対一緒に走りましょうね!」
と伝えたら コクリ、と頷いてくれた


普段はお祈りなんてしないけど
神様がいるなら どうか
あの方が助かりますように
そしてまた走れるようになりますように





ゴールまで あと27km
関門は2ヶ所
ここを制限時間内に越えられなければ
タイムアウトとなる
周りには同じぐらいの脚を持つ選手はいない
全力個人タイムトライアルの開始だ


先日のロケと同じように
脚がぜんぶ攣った
ダンシングすれば四頭筋が
座ればハムストリングスと内転筋が
下り坂で脚を揉みほぐし
上り坂はひたすら耐える


羽地ダムを根性で超えて 
平坦区間に出たら うまいこと集団を作れたので
ゴールまでローテーション
全員が脚攣っていた(笑)



そして ゴール
4時間41分 168位


悔しくて 涙が出た




心の友 白石真悟さんから
210kmカテゴリーで3位になったと連絡が来た
そして「今度うちのドラム缶風呂に入りに来いよ!」と
いいね 山口でサイクリングしたいよ



男子部のみんなのことは
番組でお伝えするので ここでは書きません
きっと良い放送にしますので お楽しみに







そんなわけで
ロードレース男子部員としてのシーズンが終わりました
来シーズンも番組で ロードレースを扱えるかどうか分かりませんが
私は乗鞍に続いて ここにも戻って来なければいけない理由ができてしまいました



なので 明日からまたトレーニングを続けます
貧脚に オフシーズンは無いのです(笑)



とりあえず 東京帰って焼ギョーザ食べます!


最新の画像もっと見る

10 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (まりんか)
2018-11-13 17:52:30
ツール・ド・おきなわ、お疲れ様でした。

悔しい思いもあるでしょうが
貴重な体験でしたね!!

レースは危険と背中合わせ

『これもレースだから、嫌なら辞めればいい』
ってゴローさんが言ったみたいです。



さて、餃子は食べれましたか?

日暮里の駅前に
美味しい手打ち餃子のお店がありますよ☆彡
返信する
お疲れ様でした! (mac)
2018-11-14 00:57:01
去年の南アルプスで、INOさんがおきなわに出場されたと聞いたので、
ツール・ド・おきなわってどんなだろう?と思っていました。

自分が一番大切に思ってきたレースで、目の前にけが人が出たらどうするか?
着順を捨てられるか、完走を捨てられるか、瞬時の判断だったと思います。

自分だったら、判断の一瞬の遅れがブレーキの遅れになり、
後続のライダーが発見するだろうと通り過ぎてしまうかもしれません。

そんな中、停まって、救援要請して、励まして、完走までしてしまうDさんは、
一番「強い」ライダーだったと思います。

これからも更なる活躍と臨場感ある映像を期待してます!
返信する
視点 (magoshiro)
2018-11-14 12:11:04
素敵なチャレンジお疲れ様でした。
文章を読み毎度気づかされております。

さすが文章構成がしっかりしておられる。
なにより心持ちがしっかりしておられる。

日々が”ディレクター視点”なのだと。
様々なご経験が、常人とは一線を画す視野角での判断につながるのだなと感じております。

お忙しい日々、機会がありましたら「ペダリングモニタのふるさと」青森・十和田へまた是非。

地元サイクリストで手作り大会もやってますので
小さな草の根の夢でも語らえればと思います。

引き続き、各種チャレンジ応援しています!
返信する
助けて頂きありがとうございました! (RX AKB)
2018-11-15 00:37:54
この度はTdOで助けて頂きありがとうございました!まだ入院しておりますがお陰様で命に別状はなく回復に向けリハビリ等行ってます。RXのサイトにもコメントさせて頂きました。本当にありがとうございました。
返信する
Unknown (チャリダー応援隊員)
2018-11-15 08:41:56
レポート心に響きました。
上手くいっている自分のレースをストップして、他のライダーの落車を助けるかどうか、これは大変難しい判断かと思いました。

そこを迷わずに、自転車を降りられたことリスペクトします。(この後救助に来られた隊員さんも事故に巻き込まれたようで、心が痛いです。
https://www.facebook.com/228678720897301/posts/600193427079160/
男子部の放送を楽しみにしています。
返信する
真実 (ichi)
2018-11-15 12:30:44
読んでいて鳥肌立ちました!
仮想空間やらがはびこる昨今、
必死に自ら体を動かして結果を求めるとき、
最高に美しい真実があるって思いました。
返信する
ありがとうございます。 (D☆)
2018-11-15 12:36:43
まりんかさま。

そうなんですよね、悪いことも良いことも
ひっくるめてレースなんですよね。
私はあと1年は頑張ってみようかと。
日暮里の餃子…行けるのは年末かな〜(笑)


macさま。
私はきっとまた、
何かあれば停まってしまうと思います。
単に勝負に向かないんでしょうね(笑)


magoshiroさま。
このちっぽけな男を、そこまで高く買っていただいて
ありがとうございます。
多分史上最高値です(笑)
手作り大会の情報、ぜひ番組HPからお知らせ下さい!
開催日(あくまで予定で大丈夫です)とイベント情報を
できるだけ早くお送りいただければ嬉しいです!


RX AKBさま。
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
よかったです!!!!!!
あれからずっと、心に引っかかっておりましたので
コメントいただけてめっちゃ嬉しいです。
リハビリ、超絶に大変だと思いますが
必ずどこかで一緒にライドしましょうね!
あの時現場で約束しましたからね☆


チャリダー応援隊員さま。
情報ありがとうございます。
高速のブラインドコーナーでしたので
救護の方も大変だったと思います。
番組でも、安定した下り方について
もっと扱っていきたいです。
返信する
ichiさま。 (D☆)
2018-11-15 12:39:31
沖縄に出ている人たちは、
みんな全力でした。
いろんな感情むき出しで、それも含めて
全力の人は美しいですね。
返信する
Unknown (HC KTM)
2018-11-16 11:33:50
TdOお疲れ様でした!

一緒にローテさせていただいたハヤサカの北村と申します。おかげさまで集団からのドロップ後も楽しく走ることができました。ありがとうございました!

あの時は必死に走っていたので周りの状況あまり見えていませんでしたが、ストップされていたのですね。ブログ拝見してビックリしました。macさんも仰っていますが、物凄判断力にだと思いました。

私も来年またTdOに出たいと考えておりますので、お会いしましたらまた一緒に走りましょう!
返信する
HC KTMさま。 (D☆)
2018-11-16 21:03:56
おお〜北村さん!
同じタイミングで脚つってた仲間ですからね(笑)
またぜひローテしてください!
ただし来年は先頭集団で☆
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。