映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「NARUTO 疾風伝ー火の意志を継ぐ者ー」

2009-08-06 22:27:40 | 映画館にて
2009年、日本映画。
原作:岸本斉史(週間少年ジャンプ連載中)、監督:むらた雅彦、音楽:高梨康治、
声優:竹内順子(うずまきナルト)、井上和彦(はたけカカシ)

ご存じ人気忍者マンガ。
子どもと一緒に映画館で観てきました。といっても、私と中三の長男、中一の長女の3人でアニメ映画を観るメンバーとしては少々平均年齢が高いですね。でも、館内には結構大人もいました。
NARUTOは我が家のマイブーム。私も毎週木曜日の夜7:30から見ています。ストーリーが練られていて大人でも楽しめる貴重なマンガです。

日本のどこかの山里に各流派ごとの村落を形成して成り立っている忍びの里。
時代背景は江戸時代と思いきや、詳細不明(ラーメン屋や焼き肉屋があったりする)。

このマンガの良いところは「大人が大人らしく、子どもが子どもらしくある社会」が描かれていることです。
忍びの里の子ども達は、みな大きくなると忍者になります。
修行して様々な経験をして成長した大人達が父親であり母親なのです。
ですから、子どもから見た親は自分を守ってくれるたくましい存在であると共に教師でもあり、憧れる存在です。
理想の親子関係ですね。

忍びの里は周囲の流派と共存すると共に争いもあり、微妙なバランスの中で成り立っている社会として描かれます。
何を主張し、何に妥協して生き抜くか・・・その知恵が親から子へ、先輩から後輩へ伝えられる場面がたくさん出てきます。
大人に近づくにつれ、戦いの場面で苦渋の決断を迫られ、自ら判断して道を切り開いていくのです。

「完全なる悪人」を作らないストーリーも秀逸です。
今回の悪役は「蛭子」という忍び。
元々は主人公のナルトと同じ「木の葉の里」の忍者で、その後名をなす優秀な同級生に囲まれいつもコンプレックスを抱えていた・・・みんなに追いつくために危険な忍術と実験を繰り返しキメラ忍者(複数の忍者を合体させて能力を高める方法)を作ろうとして里を追われた過去を持つ男。
一匹狼となった彼はその後実験を完成させ、十分に力を蓄えた今、木の葉の里に復讐するとともに忍びの世界を征服すべく再び皆の前に姿を現した。
しかし、ナルトを中心とした木の葉の里の若い忍者達の団結力に屈してしまう。

そして最後を迎えた時、昔なじみの忍者であるカカシに問う。
「私は孤独だった。強くなりたかった。皆と同じようになるにはこの方法しかなかった。私は間違っていたのか・・・?」
「あなたにも仲間がいたじゃないか。孤立して里を抜けるのではなく仲間に頼って一緒に過ごすべきだったのではないか。」

このように犯罪者を作る社会構造の病理も描かれています。
社会からはじかれた人間が負のエネルギーをため込んで発散させるカラクリ。

現代の日本社会では、命を軽視した犯罪が多発しています。
彼らの共通点は「人の命の大切さ」を知らないで育ってきたことです。
つまり彼ら自身が「大切に育てられてこなかった、大切にされた記憶がない」のです。
大切に育てられた子どもは自分の命を大切にし、人の命も大切にできます(するようになるのが自然です)。
逆に自分の親にその存在を否定された子どもの一生は悲惨です。取り返しがつかない。

作家で言えば太宰治がその典型ですね。
作家として自立し、家庭を持っても、自分の存在を否定した親の呪縛から逃れられず、「自分は存在してはいけないのか」と自らの命を絶ってしまう。

あ、ここまで語る必要はありませんね。失礼。
まあ、こんなことまで考えさせるほど、このマンガは大人受けするということで。

余談ですが、栃木県の那須に「九尾の狐」伝説の岩があります。


「釣りキチ三平」

2009-04-02 21:14:20 | 映画館にて
2009年、日本映画。
監督:滝田洋二郎、原作:矢口高雄、
出演:須賀健太、塚本高史、香椎由宇、渡瀬恒彦ほか

少年時代に親しんだマンガを映画化(実写版)した作品です。
初映画化というのがむしろ意外な気もします。
滝田監督はアメリカのアカデミー賞外国映画賞を日本人で初受賞した話題の人物。
でも、私は懐かしさと日本の美しい山・川の映像を期待して息子と観に出かけました。

緑にあふれた山の景色に癒されました。
やはり日本の川って美しい。
私は釣りよりもカヌー派ですが、今年の夏も山に行きたいなあと改めて思いました。

半分家出状態で東京に暮らす三平の姉が、三平を東京に連れて行くべく帰省するエピソードを中心に描かれています。
「田舎で釣りばかりしているとダメになる」と言い張る姉が、幻の巨大イワナを目的とした源流行の中で徐々に心が解かれていく様が微笑ましい。
「ねえちゃんは東京で暮らして幸せなんけ? 幸せな人は他人を恨んだりしない!」という真実をついた三平の一言が印象に残りました。

★ 5点満点で4点。

「禅 ZEN」

2009-03-13 04:53:51 | 映画館にて
2009年、日本映画。
監督:高橋伴明、原作:大谷哲夫
出演:中村勘太郎、内田有紀、藤原竜也、哀川翔ほか。

鎌倉時代に禅宗(曹洞宗)を開いた道元の生涯を描いた作品です。
内容が渋すぎて観客は少ないだろうなあ、と思っていましたが、平日午後に10人以上いました(主に中年の男女)。
マイナー指向の私が見る映画の中では多い方です。
価値観の多様化により心のよりどころを失いがちな現代、仏教に興味をもつ人たちが少なからずいるのでしょうか。

道元の著書である「正法眼蔵」は私の好きな書家である相田みつをさんの愛読書でもありました。
残された彼の映像に、ボロボロになった岩波文庫の正法眼蔵を手に取る印象深いシーンがありました。
彼は栃木県足利市の小さな禅寺の住職である武井哲應老師に師事し、そのありがたい言葉を皆に知って欲しくて自身の言葉でわかりやすく書き換えたものが彼の書だと講演で話しています。
彼の書は現代人に受け入れられて久しく、東京国際フォーラムにある相田みつを美術館には訪問客が絶えません。
私自身も落ち込んだときには彼の書に随分癒されました。

映画に描かれた道元の教えは至ってシンプルです。
死んでから極楽浄土へいけるという従来の仏教の教えに疑問を持ち、その答えを見つけるために中国まで修行に行きます。
そこで出会った師(天童山の如浄)に座禅の本質を学び、会得して帰朝します。
座禅をすることにより邪念を払い、自分の中の仏と向き合う・・・これが浄土であると。

以前、私は何かを得るために座禅をするものと思い込んでいました。
そうではなく、座禅は「すべてを捨て去るために行う」ものと教えられました。

この映画の最大の見所は、時の権力者である執権北条時頼に道元が謁見する場面です。
時頼は権力を手中に収めたものの、戦で死んだ武士の怨霊に悩まされる日々を送っていました。
道元は「右手に権力を得たときから、あなたは左手に怨念をも手にしました。怨念から解放されるには一切の権力を捨てるしかありません。その覚悟もない今のあなたには無理でしょう。」と進言します。

欲を捨てることができれば、確かに楽に生きることができるかもしれません。
でも、この世の中、文化・文明の発達は人間の欲を元にしてきたはず。
電気も水道もITも便利なものをすべて捨て去り、自給自足の農耕生活に戻ることは不可能です。
なかなか難しい・・・。

世界中の宗教を見渡すと、宗教者には色恋は御法度というルールがあるようです。
この映画にも出てきました。
皆の尊敬を集めるには日々精進を重ねる聖者でなければならないのでしょう。
今の日本はどうでしょうか。
仏教者も妻を娶り子どももいます。
ふつうの生活をしている宗教者に人々を導く能力が備わるだろうか?と疑問を投げかける識者の文章を新聞で読んだことがあります。

「すべての欲を捨て去る」中に生殖活動が含まれていることに少々疑問が残り、消化不良をきたしている私です。

真面目そうな中村勘太郎さんは道元禅師の適役だと思いました。
哀川翔や内田有紀が汚れ役を演じきっていることにも感心しました。
藤原竜也は北条時頼を演じるには少々役不足ですね。
演出では一部「いかにも宗教映画」と興醒めする場面もありました。

★ 5点満点で3.5点。

「二十世紀少年ー第二章ー」

2009-02-06 23:07:54 | 映画館にて
2009年公開作品。
監督:堤 幸彦、企画・脚本:長崎 尚志、原作:浦沢 直樹
出演:唐沢 寿明、黒木 瞳、豊川 悦司、平 愛梨ほか。

待望の第二章を観てきました。
相変わらず原作の雰囲気を忠実に再現していて感心しました。

野原を駆け回り、秘密基地作りに明け暮れた少年時代。
そこで仲間だけで共有する秘密を持ちたくなるのは自然の流れ。
ケンヂ達は「よげんの書」を作り、仲間意識を高めたのでした。

「忍者ハットリ君」や「ナショナルキッド」のお面は今の子ども達にはわかるまい(笑)。
カンナ役の平愛梨、オッチョ役(少年時代)の澤畠流星くんの2人はいい目をしてますねえ。
今後も活躍してくれそうな俳優です。

そして、ストーリーはその「よげんの書」が現実のものになるというSFチックな展開をしていきます。
この突飛さについて行けるかどうかで、楽しめるか、冷めてしまうか分かれますね。
映画は良くできていると思いますが、元々のストーリーに?の私にはちょっと・・・。

私も幼少時に仲間と「秘密基地」作りに明け暮れていたクチです。
物置小屋の裏側スペースにござを敷いた第一号に始まり、確か16号くらいまで造ったおぼろげな記憶があります。
稲刈りの後の積んだワラをくり抜いて農家のおじさんに追っかけられたり、
神社のお堂の縁の下に造って神主さんに叱られたり、
もう武勇伝ですね。

最高傑作は、川にせり出した樹木の上に板を載せて造った今で言う「ツリーハウス」。
完成したときはみんな得意満面でした。
川の風が気持ちよかったなあ。
しかし仲間の1人が川に落ちてびしょ濡れになって帰宅し、親にバレて撤去される羽目に。
くやし涙を流しました。

川の中を覗けばゲンゴロウやタガメやカエルの卵などがあった時代の話です。
野遊びで冬はいつも手がアカギレしていました。
当時の遊び場は今は皆コンクリートの下に埋められています。

私は小学6年生の時に転居してその土地を離れました。
大人になってから、数年に1回くらい懐かしさが募ってそこを訪れることがあります。
住んでいた市営住宅は高層アパートとなり、昔の面影はほとんどありません。
しかし一つだけ変わらない場所がありました。
神社です。
逆上がりの練習をした鉄棒や、草野球をやったフェンスが40年の時を経てそこにそのまま存在しているのです。
クラッカーをしていて雑草に飛び火して燃え始め、みんなでオシッコをかけて消したのもこの場所。
囲いの鉄の棒で繋がれた石柱の上を渡り歩いて遊んだのもこの場所(おかげで鉄棒の上も歩けるようになりました!)。
その場に佇んでいると、時間が逆戻りして茶色く変色したランニング姿で走り回る子ども達の姿が見えるよう・・・。

そんな記憶を呼び覚ましてくれただけでも、この映画を観る価値はありました。
あ、全然映画評になっていませんね。失礼。

★ 5点満点で4点。

「感染列島」

2009-01-25 14:15:55 | 映画館にて
2009年、日本映画。
監督・脚本:瀬々敬久、出演:妻夫木聡、檀れい他

新型インフルエンザが何時登場するか話題になる昨今、タイムリーな内容です。
謎のウイルス感染が日本を襲い、たくさんの感染者・死者を出して社会機能を麻痺させるストーリー。
エンディングにも触れますので、まだ観ていない方は読まないように(笑)。

最重症ウイルス感染の末期は多臓器不全とDIC(出血が止まらなくなる状態)です。
患者さんが次々と亡くなっていく映像は、約10年前の私自身のインフルエンザ脳症の診療経験を思い出さずにはいられませんでした。
けいれんが止まらない、意識が戻らない子どもに対して集中治療を試みるも病状は悪化の一途を辿り、半日後には体の穴という穴から血が止まらなくなりやがて死に至る・・・現代医療の無力さを痛感した苦い経験です。

この映画では新型インフルエンザが疑われたものの、実はアジア起源の新興ウイルスが原因だったというひねりの利いたストーリーとなっています。鳥インフルエンザが発生した養鶏業者は風評被害で自殺に追い込まれ、国を挙げてのパニックの異常さも描かれています。
この映画を観た後、マスクと備蓄食糧を買いに走るヒトが増えそうです。

映画の中で描かれているテーマは・・・「病気が家族や大切な人を奪っていく現実」と私は受け取りました(一般的には「リンゴの木を植える」ことになると思いますが)。
私も医師の端くれなので患者さんのつらさを日々受け止めながら診療しているつもりですが、所詮接するのはほんの一時です。毎日一緒にいる家族のつらさ、ましてや失うことの大きさを知る由もありません。
映画で患者さんが亡くなるシーンがある度に涙が止まりませんでした。

ハッピーエンドでは終わらず、ヒロインの女性医師が不幸な転帰をとることもある意味良かったと思います。
未知のウイルスに対して現代医学は対症療法しかできない現実を、みな直視する勇気が必要です。
どうも日本人は治療の甲斐無く結果が悪かったときに病気ではなく医師を責める傾向がありますから。

以上、単なるパニック映画ではなくいろんなメッセージが込められていると感じました。

脇役陣にも味がある俳優さんが揃っています。
男前の藤竜也さんが微生物学者(獣医師?)として登場します。私にとっては「スローなブギにしてくれ」のイメージが強い俳優さんです。年を取りました。仙人のような枯れた演技、いいですねえ。
「帝都大戦」の嶋田久作さんもアウトサイダー医師として登場。懐かしい顔です。

つっこみ所もなきにしもあらず。

・設定がダスティン・ホフマン主演のエボラ出血熱を想定して描いた「アウトブレイク」に似ています。最後に切り札として出てくる「回復患者から採取した抗血清療法」もその中で描かれています。
※ 少し解説を。
 他人の血液中の抗体を使用する治療法は現在も無いわけではありません。ヒト免疫グロブリン(あるいはガンマ・グロブリン)療法は免疫疾患や重症感染症に従来から使われている方法です。

・WHOメディカルオフィサーであるヒロインの経歴が実在の人物である進藤奈邦子さん(NHKのプロジェクトXで取り上げられました)と似ています。モデルにしたのかな。

まあ、許せる範囲ですけど。

私の採点は5点満点で4.5点。
良い映画でした。

最後にひと言。
日本はワクチンを軽視し過ぎています。
インフルエンザに関しては、効果の低い現行の不活化インフルエンザワクチンを放置して知らんぷりするのではなく、アメリカで認可され90%以上の効果が確認されている経鼻生ワクチンを導入する努力をすべきだと思います。
新型インフルエンザ対策と騒がしいですが、現行のインフルエンザでさえも全く制圧できていない現状を考えると、実際に発生したときパニックになるのが目に見えています。

もうひと言。
今流行しているインフルエンザ(A香港型、Aソ連型など)も、初めて登場したときは「新型インフルエンザ」と呼ばれました。
重症化率、死亡率も高かった。
でも変異を繰り返し、数年でおとなしいウイルスに成り下がりました。
これが歴史上繰り返されているわけです。
何故か?
ウイルスは自分では繁殖できません。
生物の細胞に入り込んでコピーを造ってもらい生き延びるのです。
ですから、その「生物」がいなくなったら自分も消えてしまいます。
そのような強毒ウイルスは淘汰され、生物と「共存」可能な、つまり生かさず殺さというある意味「大人」のウイルスが生き残るわけです。
いみじくも映画の中で学者役の藤竜也さんが言った通りです。
淘汰されてウイルスと「共存」できた遺伝子が生き残り、それが私でありあなたであります。
ヒトの遺伝子の95%はウイルスの残骸である、と本で読んだことがあります。

おしまい。


「WALL・E」

2009-01-17 16:45:23 | 映画館にて
2009年、アメリカ映画。
監督・脚本:アンドリュー・スタントン、
制作総指揮:ジョン・ラセター、
音楽:トーマス・ニューマン

「ファインディング・ニモ」の制作陣が創った新しいアニメーション映画、と聞けば見ずにはいられません。
子どもと行く予定でしたが、「友だちと観に行く」とあっけなく振られ(涙)、一人で映画館へのこのこ出かけました。

ストーリーはオフィシャルサイトをみていただくとして・・・期待が大きすぎたのか、ちょっと肩すかしを食らった気分です。
ロボットであるWALL・Eが発するのは「スターウォーズ」のR2D2のようなピコピコ電子音。
ただ、ロボットが妙に擬人化されていて、瞬きをしたり、レーザー光線は西部劇のガンマンのような銃さばきで笑いを誘う手法にに少々げんなりしました。
SF少年だった私からすると作業ロボットに「こころ」を持たせる根拠が見あたらず、突っ込みたくなるのです。
台詞なしに絵だけでストーリーを語るのは大変だったのかな、などと勘ぐる始末。

では汚染された地球から逃げ出して宇宙船生活を何百年もしている人類はどうしているかというと・・・便利さを探求して辿り着いたのは歩く必要のないホバークラフト上の浮遊生活、目に入れるのは眼前の合成画像のみ。
体はメタボどころか幼児体型(いや乳児体型か?)となり歩くことすらままならない・・・脳はともかく、体は退化してました。

「懐かしの地球」と郷愁をそそるネタがどう見ても1930~1950年代のアメリカで、ロックが出てくる前のポピュラー音楽やスイングジャズだったのことに違和感を覚えました。
でも、現在のアメリカを使わなかったのはなぜだろう?
今のアメリカは懐かしむほど愛着の湧く光景がないのだろうか。
もし、日本映画だったらこの場面は里山と棚田の風景になるのかなあ。

ちょっと批判的な文章になってしまいました。失礼。

★ ストーリーは4点、演出は3点、総合5点満点では3.5点。

「K-20 怪人二十面相」

2008-12-28 21:52:54 | 映画館にて
2008年、日本映画。
監督:佐藤嗣麻子、原作:北村想(原案:江戸川乱歩)、
出演:金城武、松たか子、中村トオル、鹿賀丈史他.

「怪人二十面相」は大正~昭和に活躍した推理作家、江戸川乱歩(1894~1965)が創作したキャラクターです.
原作の北村さんはファンの一人で、乱歩作品へのオマージュとして書いた小説が原作となっています.
私も子どもの頃、江戸川乱歩の小説を読んだ記憶がありますが、リアルタイムで経験したのは私より大分前の世代ですね.
江戸川乱歩がアメリカの文豪「エドガー・アラン・ポー」のもじりだと知っているヒトは現在は少ないでしょう.

二十面相はふだんは何をしてどんな生活をしているのか、という切り口のストーリーはさわやかで面白かった.
「スパイダーマン」張りのアクション・特撮は見応えありました.
最後に大どんでん返しがあります.映画を観ていないヒトにはちょっと教えづらい(笑).

欲を言えば、先代二十面相のバックグラウンドも掘り下げれば、より深い映画になったのではないかと感じました.
彼が泥棒をするに至った狂おしい過去を描いて「悪人は社会が造る」というメッセージになれば、さわやかさだけではなく評価の高い作品になったのではないかと.
どうも日本の映画は水戸黄門を代表とする勧善懲悪のストーリーから離れられない様ですね.

★ 5点満点では3.5点かな.


「二十世紀少年」

2008-09-07 07:31:33 | 映画館にて
浦沢直樹原作、堤幸彦監督、唐沢寿明、豊川悦司、常盤貴子、黒木瞳ほか出演。

話題の映画を観てきました.
平日午後でしたが、若者カップル中心に数十人の観客.まあまあの数です.

既に原作マンガ(子どもの所有物)を密かに読んでいたので、どんな風に映像化されるのか楽しみにしていました.
結論から言うと、「原作が忠実に映像化」されていました.
俳優も原作キャラクターのイメージ通りで、よくぞここまで役作りできたな~という感じ.
特に双子のいじめっ子を見ていると原作の絵が思い出されるくらい.
ケンジとオッチョの少年時代がかっこよかったです.
少年時代の秘密基地の回想シーンなどは原作以上にイメージが膨らみ、この監督の力量と思い入れを感じました.
私も少年期は秘密基地制作に入れ込んだ口なので、昭和40年代の風景が懐かしい.
当時はドンキーのようなはなたれ小僧が多かったけど、別に病気とは考えていなかったなあ.

ストーリーは少年期に描いた地球征服の空想物語が大人になって現実化し、空想と現実が錯綜しながら、主人公達は戸惑いながら展開するSFチックなモノ.
夢の実現をポジティブに描いたのが「ドラえもん」だとすれば、こちらはダークサイドでしょうか.
中学高校生時代にSF小説をむさぼり読んだ私からするとストーリー自体は今ひとつですね.
レイ・ブラッドベリやアーサー・C・クラークのレベルの「閃くような展開」はありません。

三部作らしいので、全部観てからまた評価したいと思います.