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映画鑑賞

昔の名画から最近上映の映画まで、国内外を問わず幅広く楽しんでいます。別世界へ連れて行ってくれる作品が好み(本棚6)。

「明日の記憶」

2011-10-30 23:22:06 | 手持ちの映画ビデオ・DVD
2006年、日本映画。
監督: 堤幸彦
出演: 渡辺謙, 樋口可南子, 坂口憲二, 吹石一恵, 水川あさみ、大滝秀治他

~Amazonの解説文~
 『トリック 劇場版』の堤幸彦監督が、山本周五郎賞を受賞した荻原浩の同名小説を渡辺謙、樋口可南子共演で映画化したドラマ。若年性アルツハイマー病に突如襲われた50歳の働き盛りのサラリーマンと、そんな夫を懸命に支えようとする妻との絆を綴る。


 なんという映画でしょう。

 若年性アルツハイマー病に侵され、自分が自分でなくなっていく過程を描いた作品です。50歳前に発症した主人公がを到底受け入れられる現実ではなく、本人のみならず周囲の人たちも戸惑い、どうしていいのかわからない・・・自分が、社会生活が、家庭が壊れていくのを止めることができない葛藤は言葉では言い表せません。

 この映画のすばらしいところは、主人公を取り巻く全ての状況において二面性を表現しているところだと思います。
 妻からの愛情と憎しみ(仕事人間だった主人公は家庭をないがしろにしてきた)。
 娘との葛藤・別離と容認。
 会社の部下からの信頼と裏切り。
 ・・・物事は善と悪の二つにはっきり区別できない、価値観は相対的な物であることを示し、ストーリーに広がりを与えています。

 しかし、もがき苦しむ中にも生きることの喜びを描き込んでいます。
 孫の誕生、かつての師匠との再会。

 人間はいずれ土に還っていく存在です。
 ラストの背景に自然と陶芸(焼き物)を配置したのは心憎い演出だと思いました。

 私自身が主人公と同じ年齢層だけに他人事とは思えず、いつの間にか自分に置き換えて見ていました。
 「自分だったらどうするだろう・・・?」と。

★ 5点満点で5点。

 先日、文化功労賞を受賞した大滝秀治さんの演技が見事。
 彼の演ずる元気なボケ老人ぶりはテーマの暗さを喝破していました。

「ねらわれた学園」

2011-10-10 22:55:19 | 手持ちの映画ビデオ・DVD
1981年、日本映画。
原作:眉村卓
監督:大林宣彦
主題歌:「守ってあげたい」(松任谷由実)
出演:薬師丸ひろ子、高柳良一、長谷川真砂美、手塚眞、三浦浩一、大石吾朗、山本耕一、峰岸徹他

~Amazonの解説文~
大林宣彦監督が、当時ヒット作を連発していたプロデューサー・角川春樹と組み、角川映画の看板娘・薬師丸ひろ子主演で眉村卓のSF小説を「きらめきたる映像と、心を揺さぶる音楽」で映像化した青春サスペンス。
進学校・第一学園に通う由香(薬師丸ひろ子)のクラスに高見沢みちる(長谷川真砂美)が転校してくる。生徒会会長になったみちるは、風紀を乱した生徒を取り締まる校内パトロールを組織して学園を作り変えていく。彼女の背後には、魔王子・京極(峰岸徹)が操る「英光塾」が控えており、由香と耕児(高柳良一)は陰謀を粉砕すべく立ち上がる。
大林お得意の、オプチカル合成とコミック・タッチの映像でにぎやかな作品になっているが、自称天才の有川に扮した手塚真や珍妙な衣装に身を包んだ峰岸徹の大げさな演技は、いささか失笑もの。だがアイドル映画して、主演の薬師丸ひろ子の魅力を見せるというポイントはしっかり押さえているあたりはさすが。


 この映画が公開された1981年当時、私は高校3年生。
 薬師丸ひろ子は押しも押されぬアイドル&映画女優でした(実は大ファン)。美人と云うより、ちょっと神秘的な魅力を備えた女の子というイメージで売り出していた記憶があります。

 彼女の出演作品は・・・
「野生の証明」(1978年)
「翔んだカップル」(1980年)
「セーラー服と機関銃」(1981年)
「探偵物語」(1983年)
「Wの悲劇」(1984年)
 等々。
 上記映画はすべて見ましたが、この「ねらわれた学園」だけは見た記憶がなく、今回中古DVDを手に入れて拝見しました。

 いや~、「セーラー服と機関銃」のシリアスな雰囲気とは異なり、多分に漫画チックな造りです。ちょっと監督のセンスを疑いたくなるようなシーンもありました。
 学校の木造校舎が「昭和」という雰囲気を演出しており、懐かしさがこみ上げてきました。

 薬師丸ひろ子は私一つ年下です。
 同年代の彼女がたどったその後の人生は・・・1990年代に歌手の玉置浩二と結婚・離婚、2000年代前半は寡作でしたが、2005年の「三丁目の夕日」以降、演技派として評価されたのか、また映画に出演することが多くなりました。「バブルへGo!」「歌魂」なんかもよかったですね。
 年とともに演技に味が出てきたような気がします。
 同年代として、今後どんな活躍をしていくのか楽しみです。

 原作の眉村卓氏はSF作家。
 SF少年だった私はファンの一人でした。
 この作品やNHKドラマで人気があった「謎の転校生」等は少年少女向けの小説でしたが、それ以降に発表した「司政官シリーズ」が私のお気に入りです。宇宙を舞台に中間管理職の悲哀を描いた作品ですが、主人公の透明な思想感覚が好ましく、特に「消滅の光輪」(泉鏡花文学賞受賞)「引き潮の時」はジワジワ感動が沸いてきて、よかったなあ。

★ 5点満点で2.5点。